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第五話 恋

今回は、 いつもと視点が違い鷺宮息吹視点でのお話です。

「やってしまった……」


私としたことが焦りすぎてしまったようだ。 彼があまりに可愛くて、 愛しくて、 我慢できなくなってついあのような事をしてしまった。

今の彼が他人からの愛情を頑なに拒絶する様になってしまったと知っていたのに。 私は失敗してしまった。

しかもその失敗は、 かなり大きな失敗だ。 今や彼の中で私は、 完全に敵として認識されてしまっただろう。

ここからの状況改善は正直言ってかなり難しい。 だからと言って彼を救うのを諦める気は、 全くないのだけれど……ね。


「それにしても流石にきついわね……まさか朝のあの宣言をただの数時間で忘れてしまうなんて……」


私としては保健室で自身満々にああいいのけてはいたが、 実際のところ内心では心臓はバクバクだったし、 それのせいで今日の午前中の授業は全く集中できなかった。

私がそんな恥ずかしさで悶絶しているとは、 彼は知らないし、 今では覚えていないのだけれどそれは私からすればかなり腹が立つ。

 なんで私だけがこんな恥ずかしい目に合わなくてはいけないのか。

彼も同じくらい恥ずかしがって欲しい。 でも今の彼にそれを望むのは、 酷だろう。 何せ……


「今の彼完全に狂っているのだもの」


今の彼が明らかにおかしいというのは、 誰の眼にも明らかなことだ。

だからこそ彼は、 多くの人間から迫害されている。 クラスの中での立ち位置も私が知る限り相当低い。

ただそれを彼自身は、 自分にとって都合のいい物へとすり替えている。

自分は、 狂っていない。 自分は至って正常だと。 自分が嫌われているのは、 自分より容姿が遥かに優れていてクラスの人気者の二人の近くにいるからと。

そう自分で言い聞かしている。

そんな彼を見るのはとても辛くて悲しくて、 そんな痛ましい彼を思うだけで私の心臓はつぶれてしまいそうだ。

本当はもっと早くに彼に救いの手を差し伸べてあげたかった。

でも私は臆病だから彼に好かれる自信がなくて、 彼を見るのが辛くて今まで助けてあげることができなかった。

それが自分にとって都合のいい言い訳だということは、 分かっているし、 そのせいで入学当初はまだ人間味のあった彼は、 今や完全に壊れてしまった。

その事を私は、 今でも激しく後悔している。 自分がもっと早くに彼に手を差し伸べれば彼は、 今ほど狂うことはなかったんじゃないのか? もっと幸せな人生を歩ませてあげることができたんじゃないか?

考えれば考えるほど自分に嫌気がさしてくる。 無論それが驕りで、 自分がちっぽけな人間だということは、 分かっている。

 それでも彼だけは……彼一人だけは何としてでも救ってあげたい……いや、 救わなければならない。 それだけの覚悟が今の私にはある。

彼の為になら私はなんでもあげられる。 彼が笑ってくれるなら私は何もいらない。

学校の生徒会長なんて肩書も実家が金持ちという肩書も自分の美貌も何もかもを捨てられる。

それで彼が笑って、 幸せになってくれるなら私は何もいらない。

それだけの物を私は、 彼から貰った。 だからその恩は返さないといけない。


「人に狂っていると言っておいて自分も狂っているのよね……全く恋というものは、 本当に恐ろしい……そして()()()


恋は戦争という言葉があるがそれは全くその通りだと思う。

いかに戦略を練って意中の相手を落とすか。 その過程で現れるであろうライバルをいかにして蹴落すか。 そういう戦略が伴われるものが()だ。

だからこそ次の手を考えなければならないのだが……


「今の戦場君をどうにかしない限り私の恋って永遠に報われないのよね……」


何せ今の彼の心は、 完全に壊されてしまっている。

そんな相手にどのようなアプローチを仕掛けようが完全に無駄だ。

だからこそ私の今やるべきことは、 彼の心を回復させ、 以前の笑顔が素敵だった彼に戻してあげることだ。

それがひいては、 彼の為にもなる。

そこで問題となるのは、 彼心を壊した元凶たちである彼の幼馴染とその親友だ。

彼の幼馴染西園寺花蓮。 私はこの女が死ぬほど嫌いだ。

彼から好意を向けられているだけでも私からすれば死ぬほど羨ましいのに、 その好意をあれ程無下にしたあいつを私は絶対に許さない。

それに彼の親友も親友だ。 彼の親友である久我隼人は、 自分の口では彼の親友だと言って言いながら肝心のその親友の為に何もしてこなかった。 それは今も尚そうである。 そんな奴がよく彼の親友を名乗れるものだ。

ただ私が何より許せないのは、 戦場君が自身の気持ちを押し殺してまであいつらの為に動いているというのにそれに気づかない。 いや、 気づいていて気づかない()()をしているのが何より気にいらない。

あれではただただ彼が哀れではないか。 二人の幸せを思って彼は、 自身の青春を全てているのにも関わらず、 あいつらは気づかないふりをして、 彼の心を傷つける。 そんな奴ら死んでしまえばいい。

多分今の私は、 とても酷い顔をしているだろう。 こんな顔絶対に戦場君には見せられない。

顔だけじゃない。 私がこんな事を考えていると知ったら彼は、 きっと私に幻滅するだろう。

いや、 幻滅はもうしているか。 それなら憎悪でも向けられるのかな?


「それは……嫌だなぁ……」


他の人から嫌われるのはいい。 でも彼にだけは嫌われたくない。

もし彼に嫌われてしまったら私は……多分……自殺すると思う……

それほどにまで彼は私にとって特別な存在なのだ。

他の学生の抱く恋心とは、 ものが違う。 私の恋愛は、 ただの一度これっきり。 仮に彼に振られたら私は、 一生誰とも結婚をしない所存で望んでいる。 世間一般で言えば私は、 相当重い女なのだろう。

 重い女は、 男から嫌われるとよく聞くが仕方ないじゃないか。 そうなってしまった。 そうゆうふうに彼に変えられてしまったのだから……


「ひとまず昼休みは、 これ以上手の打ちようはないし、 次の手を打つとすれば……」


授業後。 それ以外ない。 彼は、 確かあの虫けら二人と違って部活に所属していなかったはず。

だから必然的に彼は、 一人で帰ることとなる。 そこにチャンスが生まれる。

また朝の様に気絶でもさせる? それはダメ。 乙女的に絶対ダメ。

それに朝の件に関しては、 私だって本当は彼に暴力なんて振るいたくはなかった。

 でもそうでもしなければ彼は、 あのまま何か取り返しのつかない事をするような()()がした。

 だからこそ私はあの場であのような手を取ったのだ。


「でもその様事は、 一旦置いておいて授業後どうするかなのだけれど……」


ふむ。 一つだけ名案を思い付いた。

彼にはこれ以上関わるなど言われたけれどそんな事私にとっては、 関係がない。


「私は私のやりたいようにやるだけ。 ただそれだけよ」


待ってて戦場君。 私が絶対にあなたの事を救って見せるわ‼ ふふふふふふふふ……

恋愛小説に関しては、 完全に初心者なのでどうか温かい眼で見ていただけると幸いです。

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