第三話 邂逅
誤字、 脱字報告ありがとうございます。 一応自分でも確認は、 しているのですがいかんせん僕も人なのでどうしても失敗はあります。 ですので今後も誤字、 脱字を発見しましたらご指摘していただけると幸いです。
「怜雄‼」
時はあれから進み今は、 昼休みだ。
昼になると僕、 隼人、 花蓮の三人はいつも決まって一緒に食事をとる。
これは僕たちが知り合ってからずっと続いている。
ただ今日の二人は、 いつもと少し違ってどこか焦ったような表情をしていた。
「ああ、 二人共。 どうしたんだい? そんな焦ったような顔をして?」
「お前なぁ……親友が朝保健室に運ばれたと聞いたら心配するし、 焦りもするだろう」
「そうだよ。 私とっても心配してたんだよ? 本当ならもっと早く聞きたかったのに放課の時間になるときまっていないんだもん」
どうやら二人は僕の事をとても心配してくれていたらしい。 そう言えば二人は、 昔からこういうやつだった。 僕が怪我をすると誰よりも早く駆けつけてくれて心配してくれる。
それが僕にとっては、 昔からとても心苦しくて、 出来る限り怪我とかもしないように気を配っていたのだけれどどうやら僕は失敗してしまったようだ。
「二人とも心配かけてごめんね」
「それにお前今日日直だとか言ってたくせに違うじゃないか」
「そう‼ それだよ‼ なんであんな嘘ついたの‼ 私怜雄に嘘をつかれて悲しいよ……」
「…………………………」
ああ、 なるほど。 今朝の僕は、 どうやらまた失敗したらしい。
でもそうか。 またか。 また僕は、 失敗したのか。
それにこの胸中に抱いている黒くドロドロとした気持ちはなんだ?
憎悪? 嫉妬? 怒り? 哀しみ? そのどれかなのだろうか?
でも僕は、 道化。 そんな感情はいらないし、 そもそも僕にそんな感情はないはずだ。
僕に必要なのは笑顔。 ただそれだけ。 それ以外の物は何もいらない。
喜びも楽しみもそんな感情は全て捨てろ。 ただ笑顔だけ浮かべていればいい。
余分な事を考える必要はない。 ただ花蓮を……二人を幸せにする……ただそれだけを考えていればいい。
今朝の鷺宮さんとの出会いも忘れてしまえ。 その方がいい。
よくも悪くも彼女は、 僕の心をざわつかせる。
そんな相手の事は、 忘れてしまえばいい。 うん。 そうだ。 それがいい。
「怜雄?」
「ああ。 ごめん。 少し考え事してた」
「なぁ怜雄。 最近のお前少しボーとしてないか?」
「そうかい?」
「ああ、 なんか、 心ここにあらずというか……」
「なんか最近の怜雄ってちょっと様子が変だよ。 もしかして何か悩みとかあるの?」
全く僕は一体どれだけ失敗すれば気が済むんだ。
こんな善良な二人にこれだけ心配をかけて。 自分のことながら全く持って恥ずかしい。
自分で自分を殺したくなるくらいに。
でもそんな事を言ったら二人はきっと悲しむんだろうな。
だから僕は笑うよ。 いたって普通の人間の様に。
全く持って壊れていないとわかってもらうためにもいつもの笑顔で僕は笑うよ。
「あはは。 僕としては至って普通でいるつもりなんだけどな~」
「う~ん。 怜雄がそういうならいいけど困ったらいつでも相談してくれよ? 俺達親友なんだから」
「久我君に相談しにくいなら私に相談してもいいんだからね? なんたって私達は、 幼馴染なんだから」
「うん。 そうさせてもらうよ。 二人ともありがとう。 それとごめんね」
「もういいって。 それよりも早く昼飯を食お……」
「それはダメよ。 だって戦場君は私と一緒に食べるのですから?」
「「え?」」
教室の前に一人の綺麗な女性がそう言いながら立っていた。
女性は僕たちの教室に遠慮なく入ると僕の手を躊躇いなく取る。
僕の知り合いでこんな綺麗な女性はいただろうか? 分からない。
それにこの学校に花蓮以外にこんな綺麗な女性いただろうか?
「ちょっと待ってください生徒会長」
「そうですよ。 怜雄は俺達と昼を……」
「黙りなさい」
彼女の声音は、 底冷えするように冷たかった。
声だけではない。 彼女の二人を見る目。 まるで仇敵を見るがごとき憎悪に染まったような目をしていた。
どうしてこの女性は、 二人の事をここまでと敵視するのだろう?
二人に何かされたのだろうか? でも隼人も花蓮もとてもいい奴だから人の嫌がることをすると思えないし、 もしかして隼人に振られた女の子の一人なのかな?
隼人は今まで何度も女の子に告白を受けてきたことがあるけど彼は誰も選ばなかった。
そのせいで隼人は、 振った女の子達から恨まれるといったことを何度も経験してるし、 僕もそんな場面を何度も見ている。
となるとやっぱり彼女もそうなのだろう。 きっとそうだ。 そうじゃなければありえない。
「貴方達と戦場君は一緒にいるべきではない。 さぁ行きましょう戦場君」
おっとどうやら彼女の目的は、 僕にあるようだ。
でも何故? それ以前にそもそも何故彼女は、 僕の名前を知っている?
「ふざけないでください」
そう怒ったのは、 隼人ではなく、 花蓮だった。
「いきなり現れてその言い草。 いくら何でも酷すぎるんじゃないですか? いくらあなたが生徒会長でも一個人の自由を侵害する権利はないですし、 何より怜雄は元々私達と一緒に昼食をとる約束をしていたんです。 そうだよね怜雄?」
僕の記憶では、 花蓮とその様な約束をした記憶はない。
確かに何時も一緒に昼食は取るが、 それは約束というよりも昔からそうだったからというだけ。
それにこの状況……よく考えればむしろ好都合なのではないか?
僕がいなくなれば二人は、 必然的に二人きりで食事をとることができる。
そうすればより二人の仲は、 進展するだろう。
ならここは少し心苦しいが花蓮の主張に反論するべきだ。 それがいい。 うん。 そうしよう。
「あれ? そんな約束していたっけ?」
「怜雄!?」
「確かに僕たちはいつも一緒に昼食を取ってはいるけれどそれは約束したわけじゃないよね? そうだよね隼人?」
「それは……そうだが……だが俺もお前と一緒に……」
「本人からの言質も取れた事ですし、 行きましょう戦場君」
「分かりました。 それじゃあ二人ともまた後でね」
なんか二人を裏切ったようで少し心ぐるしいけどこれも二人の仲を進展させるためだ。
それにこれで二人との仲が拗れたらむしろ好都合じゃないか。
何せ二人の周りに害虫がいなくなるのだ。
そうすれば後は、 二人だけの空間が生まれる。
無論二人とも僕以外にも友達がいるからその子たちと一緒に遊びだすという可能性もあるが、 その時は僕が後ろから上手いことバックアップすればいいこと。 なんだ。 何も問題ないじゃないか。
それにしても突然現れたこの人には、 感謝しかない。 きちんとお礼をしないと。
でもその前にこの人の名前を聞かないと。 この人が生徒会長ということは、 分かるけどそれ以外の事は何も知らないから。
「先ほどはありがとうございました。 それでお名前をお聞きしたいのですが……」
「え……?」
急に立ち止まってどうしたのだろう?
「あの……大丈夫ですか?」
「まさか……そこまで……」
「あの……」
「なんでもないわ。 気にしないで頂戴。 それと私の名前は、 鷺宮息吹。 この学校の生徒会長をしているわ。 よろしくね戦場怜雄君」
なんでこの人はここまで悲しそうな顔をしているのだろう?
それになんで彼女が悲しむ必要があるのだろう。 何を悲しんでいるのだろう。
ああ、 でもそんな事考えても仕方がないか。 僕にとってはどうでもいいことだ。
「それにしても生徒会長さんはとてもお綺麗なんですね」
「ふふふ。 ありがとう。 貴方にそう言われてとても嬉しいわ」
「あはは。 御冗談を」
「冗談じゃないのだけれどまあいいわ。 それよりも早く昼食にしましょう。 時間は有限なのだから」
「そうですね。 でも一体どこで……」
「生徒会室よ。 あそこならだれも来ないし、 それにやりたいこともあるしね」
「はぁ……それよりもいい加減僕の手を離してくれませんか?」
「ダメよ。 絶対ダメ」
「はぁ……」
彼女が何故そこまで頑なに僕と手をつなぐことにこだわるのか理解できないけどどうでもいいか。