Episode9 サボテンの花が咲く頃に 5
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「お話はこれでお仕舞いです」
「えっ? 終わりなの?」
「その後お嬢様と青年がどうなったとかないのかよ?」
シロも武瑠も物足りないと言いたげに不満を漏らす。
(現実はそんなもの、なんじゃない)
舞花も物足りないとは思いながらも、ぽつりと呟いた。
「えぇ、舞花さんの言う通り。現実なんてそんなものなのですよ。物語のように上手くハッピーエンドを迎えるというわけにはいかないのです」
何だかモヤモヤが残ったままだったが、妙に納得してそれ以上の不満は言えなかった。
「っていうか、マスターは何でそんな話知ってるんだよ?」
「確かに! マスターの知り合いの話? それともマスター自身の話?」
「シロさんは私の年齢を幾つだとお思いですか? 私の話だとしたら時代が合いませんよ。誰のお話なのかは、秘密ということで」
フフフッと笑い、マスターはそれ以上は何も言わなかった。
「誰の話かぐらい教えてくれたっていいじゃねぇかよ」
「そうだよー、教えてよー、マスター」
駄々をこねる二人を舞花が止めた。
(二人とも。子どもじゃないんだから駄々こねないの)
「「だってさー」」
「「気になるじゃん!」」
(マスター、いつものちょうだい)
舞花はそれ以上二人の相手をすることを止め、マスターにいつものスイーツセットを頼んだ。
「っていうか、武瑠とハモっちゃった。うぇー」
「はぁ? うぇーって何だよ、うぇーって!」
「だって、舞花となら大歓迎だけど武瑠となんて」
「うるせぇ、このシスコンめ!」
「舞花のこと大好きですけど、何か?」
「うわ、開き直りやがった」
ガヤガヤ、ガヤガヤ――――。
「舞花さんお待たせしました。今日はザッハトルテも作ってみたので、良かったら感想聞かせてください」
(ありがとう、マスター)
今日もいつも通り賑やかな常連客がのこの古びた店に活気をもたらしているのでした。ちゃんちゃん。
【Episode9 サボテンの花が咲く頃に・・・おわり】
・・・But this story is not over yet.