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Episode9 サボテンの花が咲く頃に 3

 


 それから二年後。美緒のもとに縁談話しが持ち上がった。


 もちろん、美緒に拒否権はない。相手から拒否されない限り、この縁談は確定されたものだった。


(どうしましょう。もうあの人と会えなくなってしまうのかしら)


 美緒はサボテンを見つめながら、青年を思う。名前も知らないままこの何年もの間思い続けた人だ。簡単に忘れられる訳はなかった。


 その頃、青年もまたお嬢様を思って物思いにふけっていた。


(お嬢様に縁談が……。もう、前のようには会えないな)


 そして、青年にはお嬢様に内緒にしていることがあった。


 それは、お嬢様が小さい頃から彼女の声を聞いていたということだ。

 姿も見えない彼女に青年は幼い頃から恋をしていた。


 いつも寂しげなその声を聞いている内にいつしか心の中に芽生えていた気持ちだった。


 どんなお姿なのだろう。


 きっと心の綺麗な人なんだろうな。


 叶わないだろうけれど、いつかお話ししてみたい。


 そう思っていたのだ。


(私がお嬢様の声を聞いていたと知ったら、お嬢様は私に失望するだろうか)


 青年はいつかは話そう、いつかは話そうと思いながらも中々言い出せずにいた。心の声が聞こえるなんて気持ち悪がられてしまうかもしれない。そう思うと言えなかったのだ。


 しかし、これではフェアではないとそうも思っていた。お嬢様が自分のことを好意的に見てくれていることも分かっていた。自分もお嬢様に好意を寄せている。両思いなのは確実なのに、それを言い出せずにいたのは、この性質(のうりょく)と身分の差にあった。


 お嬢様の気持ちをこの性質(のうりょく)によって知ったことによる後ろめたさ。そして例え、ふたりで気持ちを確かめあったとしても身分というどうしようもない壁がふたりを引き裂くのは必須だった。


 いずれ、姿を消す身でお嬢様の大切な時間を奪ってはいけない。しかし、一年に一度のこの逢瀬だけは青年にとって諦めの付かないことだった。


 だからお嬢様に秘密を打ち明けるときは二人が別れる最後の日だと思っていた。そして、青年は打ち明けた。自分の性質(のうりょく)のこと。お嬢様をお慕いしていた気持ち。もう会うのはこれで最後だということ。すべて……、全て話した。


 お嬢様は青年の話を聞いて泣き崩れた。


 それが青年が見た最後のお嬢様の姿だった。







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