Episode8哀しい身代わり10
押し入れの前。
棒は立て掛けられてはいないけれど中からは悲しみが溢れ出ている。
武瑠が意を決して開けるとそこには小さな男の子が膝を抱えて座っていた。
「見つけたよ、君のお姉ちゃん。だから、舞花を返してくれ」
武瑠は男の子に向かって静かに声をかける。
しかし、反応は返ってこない。
「舞花は俺の大事な友達なんだ。花屋に来たのも君だろ?」
反応がなくても、武瑠は声をかけ続ける。
「誰かに助けて欲しかったんだよな? 誰かに見つけて欲しかったんだよな?」
男の子は相変わらず、俯いたままで膝を抱えている。
そこで、シロが動いた。
「ねぇ。君にお姉ちゃんがいるように、僕にもお姉ちゃんがいるんだよ」
男の子がシロの言葉にピクリと反応した。それを見たシロは続けて語りかける。
「舞花は僕のお姉ちゃんだ。だから、僕にお姉ちゃんを返して?」
男の子はそこでやっと膝から顔をあげて立ち上がった。
泣いているかと思われたその顔には意外にも笑顔が張り付いている。
「君、僕に似てる。そうやって笑顔を張り付けることでしか自分を守る手段がなかったんだよね。僕もそうだよ。大きくなった今でも嘘の笑顔が止められない。へらへらして、ふにゃふにゃして笑ってやり過ごす。そんな僕の嘘ごと舞花は僕を受け入れてくれる。僕にとって舞花は大切な大切なお姉ちゃんなんだ」
(いいな。僕にはもうお姉ちゃんいない。だから、ちょーだい。お姉ちゃん、ちょーだい)
「あげないよ。だって舞花は僕のだから。君にもお姉ちゃんがいるんでしょ? だったら迎えに行ってあげないと。待ってるだけじゃダメなんだ。一緒に行こ」
シロが手を差し出すと男の子は恐る恐るその手を取った。
そして、三人は園庭へと向かう。
皮肉にも未だに綺麗に咲き誇っている花たち。その一部を掘り返し武瑠とシロはあの男の子の姉を見つけた。
(お姉ちゃん? やっと見つけた。こんなところで寝てたら風邪引いちゃうよ。二人でもっと温かい場所で寝よ。きっとこの人達が何とかしてくれるから)
男の子はそう言って押し入れへと戻っていった。
「人任せでいけねーや。そんなとこまでシロにそっくりとはな」
「いいじゃん。子どもに頼られるのに悪い気はしないでしょ」
「まーな。んじゃ、おっさん達呼ぶか」
武瑠はスマホを取り出しコール音に耳を傾けた。




