Episode8 哀しい身代り7
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神田から聞いた情報をもとにある施設にやって来た武瑠とシロ。施設と言っても、そこは既に封鎖されていて人の気配は微塵もない。
「ここだよね? あの人が言ってた建物って」
「ああ。あのオッサン、胡散臭さはマックスだけど、情報は確かなはずだ。何せ、マスターが推薦するほどだからな」
「うん、でもさ……」
シロが戸惑うのも無理はない。人っ子ひとりいないこの場所は本当に舞花が目を覚ます手懸かりがあるというのだろうか。
ここは以前、親がいない子ども達が集まる施設だったらしい。
封鎖されているとはいえ、鍵などは掛かっておらず、中には入れるみたいだった。
二人はゆっくりと辺りを見回しながら、中へと入る。
途端に、武瑠は強烈な何かを感じる。それはシロも同じだったようで、咄嗟に二人で顔を見合わせる。
「武瑠……」
「ああ……」
武瑠はヘッドホンとフードをはずし、シロは袖から手を出して更にその何かを感じられるようにする。
(おねぇちゃん……、どこにいるの?)
男の子の声が聞こえた。
武瑠がシロに視線を向けるとシロにも聞こえたらしく、こくりと頷く。
「誰かいるのか?」
武瑠は出来るだけ怖がらせないようにと、声のトーンに気を付けながら呼び掛けてみる。
(おねぇちゃん……、おねぇちゃん……)
声は聞こえるのに、姿は見えない。
男の子は何処にいるのか、武瑠とシロは声の主を探しながらゆっくりと部屋を確認して回った。
しかし、何処を探しても声の主は見つからない。
「ねぇ、武瑠。男の子、本当にここにいるのかなー?」
「どういうことだよ?」
「だって、何処を探しても見つからないでしょ。だったら、もしかしてこの僕たちに聞こえている声は思念みたいな物なんじゃないかなって思うんだけど」
「思念?」
「うん、残り香みたいなさー」
「うーん、その可能性が高いか……」
武瑠は辺りを見回し、シロの言葉に頷く。
まるで、まだそこに子ども達がいるかのように、散乱したおもちゃ。
そして壁に貼られている絵。
並べられた机も椅子も――。
誰かが暮らしていても不思議ではないほど、この場所は廃れてはいない。
◇
結局、武瑠達は声の主を見つけ出すことはできなかった。
その代わりに、気になるスケッチブックを見つけた。
中には様々なシチュエーションの絵が描かれていて登場人物は女の子と男の子の二人だ。
「これ、この絵って何かお前ら姉弟に似てる気がする」
「僕たちに? そりゃあ、確かに僕たちも施設で育ったからそこの共通点はあるだろうけど」
「この共通点を集めていけは、何か分かるかもしれないな。舞花の夢にも入れるかもしれない」
「まずはこのスケッチブックに描かれてあることを調べないとな」
「うん。でも調べるって言ったってどうやったら良いんだろ?」
シロは情けない顔で武瑠にすがるような目線を送る。
「だーいじょうぶだって! 焦るな、ゆっくり。な」
武瑠は絵をめくりながら一枚ずつそれをじっくり眺めていく。
やれるかもしれない。
そう思って武瑠はシロに向き直った。
「シロ、今からやることは、もしかしたらお前にとってはものすごく辛いことになるかもしれない。それでもやる覚悟はあるか?」
「当たり前でしょ。舞花がかかってるんだから僕は何だって受け止めるよ」
よし。それならと武瑠はスケッチブックの一枚目を開いた。




