Episode8 哀しい身代り5
「それに、目が覚めないお姫様がいるならこの俺の出番じゃないか」
「それってどーゆー事?」
シロは期待を込めた眼差しをチャラに向けて聞くが、武瑠とマユはあんまり期待しない方がいいと思うぞ、と呆れながらも一応チャラの話を聞くことにする。
「ん? そりゃあ眠り姫の目を覚ます方法といえば、王子様の口づけでしょーが」
ほら、やっぱり――。
武瑠とマユの心の声が一致した。
しかし、シロは案外まともにその言葉を受け止めているようで。
「そっか。キスはさすがに思い付かなかったや」
真剣な顔で頷いている。
「いやいやいやいや! シロ、正気にもどれ! んな訳ないだろ!」
「そーだよ、シロ! 隼ちゃんの言うことまともに聞いちゃダメだって!」
それを全力で否定する二人。
お前ら二人とも失礼じゃない? と言っているチャラは無視して必死にシロを説得する。
「でも、試してみないと分かんないよー?」
「いや、そうかもしれないけどさ」
どう言っても無駄かと武瑠の心は折れかけていたが、マユはまだ諦めていなかった。
「それにしたって、隼ちゃんが舞花ちゃんの王子様な訳ないでしょ」
マユのその一言が決め手になったらしい。
「それもそうだね」と漸くシロが納得してくれて、武瑠とマユはホッと息を吐いた。
「で、話が逸れたから戻すけど。舞花の目を覚まさせる為には、まずそうなった原因を探ろうってなって。シロに心当たりはないみたいだったから、お前らに聞きに来たんだ」
「ここでバイトしてる間に何かあったってこと?」
「心当たりねーか?」
武瑠はチャラとマユの表情を窺うが二人ともうーん、と唸って首を傾げている。
ここも違ったかとシロと二人で顔を合わせていると、あっそういえば――とチャラが何かを思い出したように顔を上げた。
「舞花ちゃんが休むちょっと前に不思議なガキが来たって言ってたな」
ほら――、とチャラがマユにも話を振るとマユも思い出したのか、ああと声を上げる。
「うん、言ってたね。その日は確か……、隼ちゃんも俺も店に居たんだけどその男の子を見たのは舞花ちゃんだけで。何だか不思議な雰囲気の男の子が花を買いに来たんだけど、結局何も買わずに居なくなっちゃったんだって」
「花を買いに来たのに、何も買わずにねぇ」
武瑠はそいつが原因なのかと首を捻りながら、手を顎へと持っていく。
「うん。どんな花がいいのかとか、誰にあげるのかとか少し話をして、ラッピングを選んでもらう為に舞花ちゃんが一度店に入ったちょっとの間にその子居なくなっちゃったんだって。普通はね、店の中で選んでもらうんだけど、その子は中には入りたくないって言ったらしいんだよね」
「外で待っていたはずのそいつは、舞花ちゃんが次に外に出た時にはもう居なかった。最初からそこに誰も居なかったみたいに何か、パッと消えちゃったみたいな感じって言ってたな」




