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Episode8 哀しい身代り1

 



 “舞花が目を覚まさなくなっちゃった”




 カランカランと古びたベルを鳴らしたかと思うと、シロは唐突にそう言った。


「はっ?」


 本当に唐突だった為、武瑠は直ぐにそれを理解することができなかった。目の前にいる人物――もとい、シロのテンションと放たれた言葉があまりにも合っていなくて、不自然だったからかもしれない。いつも通りのゆるーいテンションで世間話でもするかのように何はともなく言ってきた事に違和感を覚えたのだ。


「……なに? どういう事だよ?」


「だーかーらー、舞花が目を覚まさなくなっちゃったの!」


「おう、それは聞いた。んで、具体的には?」


「舞花ね、もう一週間くらい目を覚まさないの」


「医者とかには……」


「行ってないよ。だって、舞花医者嫌いだし。大体、何科に行けばいいのかも分かんないでしょ。それに、よく知りもしない人に触られるのとか、舞花嫌がるんだよね。僕も舞花が触られるの()だし」


「そーですか」


 やっぱりこいつはシスコンだと武瑠が再認識していると、シロが拗ねた声で反論する。


「僕は舞花が大切なの。それをシスコンって言うならそれでもいーよ。言いたい奴は勝手に言ってればいーよ」


 あらら、俺の考えたことが筒抜けてたみたい。あ、袖から手出てるわ。悟られてたわ。


「ごめんって。んな、怒んなよ。それに何かよく分かんねぇけど、医者に見せたところで舞花が目を覚まさない理由も分かる気がしないし。それなら、舞花の嫌がることを態々するのも何かアレだしな」


 どーどー、と急にギアがかかったシロに落ち着けと武瑠は促す。


「うぅー。そーだよね! 武瑠ってやっぱりいい奴だね」


 へにゃりと笑うシロはいつもより元気がない。


「フッ、今更だな」


「……自分で言うのはイタイ奴だよ」


「うるせぇーよ」


 いつもの様にふにゃふにゃと笑いながらも、武瑠への対応は相変わらずなシロ。いつも通りに見えるように振る舞ってはいるが、少しだけ何かが足りない。



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