Episode7 地味男の勇姿を見守り隊![デート編]5
そんなやり取りを見ていたシロが突然、声をあげた。
「あ。何で門吾が舞花に弱いのか、僕分かっちゃった! 舞花に歩莉さんのこと重ねちゃってたんだねぇ~、きっと」
「まぁ、歳もそう変わらないしな」
舞花への対応の時と同じだ、と武瑠もシロもうんうんと頷く。
「あれ、武瑠さん達も居たんですか? いつの間に……」
田中はやっと武瑠達の存在にも気付いたのかぽかんとしている。
「悪いな、田中さん。デートの邪魔するつもりはなかったんだけど、石川のオッサンのこと見つけちゃってさ」
武瑠は軽くここにいる経緯を説明し、舞花とシロもごめんねー、と謝る。
「いえいえ、皆さんが謝ることでは」
田中はブンブンと首を振った。
「あ、あの石川さん!」
田中は石川に向き合い、ぴしっと背筋を伸ばす。
「えっとですね……」
――が、ギロリと睨まれ、田中の勢いが瞬時に無くなる。
「何だ、何かあるならはっきり言え!」
「ひぃっ……」
あまりの迫力に情けない声を出す田中。
田中が何をしようとしているのか、分かっている三人は頑張れーと心の中で田中にエールを送る。
「あ、歩莉さんがいいと言ってくだされば、またデートさせていただいてもっ、よろしいでしょうかっ!?」
「なっ……」
石川が田中のお願いに動揺していることは目に見えて明らかだった。
(おー、田中さんストレートに言ったねぇ)
(やるじゃーん)
(門吾、どうするんだろ)
武瑠達は田中と石川のやり取りを見ながら心の中で会話をする。二人の動向を見守っていると、石川はちらりと一瞬娘に視線をやってから、くるりと背を向けた。
「仕事でもねぇくせに、態々俺に許可なんか取ってんじゃねぇ」
そして、そのままスタスタと歩いていってしまう。
「あ、えっ……石川さん?」
石川の返答の意味が分からず混乱している田中に歩莉が笑って声をかけた。
「あれ、お父さんなりのオッケーってことですよ、田中さん」
「そ、そうなんですか?」
「はい、分かりづらいですけど」
田中は許可をもらえた事に小さくガッツポーズをする。
「そんな事より、田中さん。また、私とデートしてくれるんですか?」
「は、えっ……、あ、はい! 歩莉さんがっ、良ければ……」
笑っている歩莉に顔を真っ赤にしながら伝える田中。
「ふふふ、分かりました。また、連絡お待ちしてますね。あ、じゃあ今日はこれで……」
「あ、はいっ! あの、お送りしなくても大丈夫ですか?」
「大丈夫です、ありがとうございます。それじゃあ、また」
可愛らしく手を振って去っていく歩莉に見とれながら、田中は彼女の姿が見えなくなるまでそのまま手を振り続けていた。
「田中ちゃーん、良かったねぇ」
シロは馴れ馴れしく肩を組みながら田中にへにゃりと笑いかける。
「っていうか、田中ちゃんって本当に刑事さんだったんだねぇ」
更に続けて失礼なことを事も無げに言ってのけるシロ。
(普段のヘタレな姿からは想像できないもんね)
とこれまた、ストレートを打ち込む舞花。
田中の肩の角度が徐々に下がってきているように見えるのはきっと見間違いではない。
「お前らは田中さんで遊ばないの」
石川とひったくりのせいでデートがお開きになってしまった田中を不憫に思って今回はと助け船を出す武瑠。
「えー、僕達田中ちゃんのこと応援してるだけだよ~。ねぇ、舞花」
(そう、応援してるの)
「そんな事言ってお前らは田中さんで遊ぶネタが増えるから面白がってるだけだろーが」
「そんな事ないよ~」
(そんな事ない)
白崎姉弟きょうだいがシンクロした。
――絶対、そんな事あるだろ。もうこれは確実にクロだ、と武瑠は内心で田中に合掌するのだった。




