Episode7 地味男の勇姿を見守り隊![デート編] 3
田中と歩莉が待ち合わせをしている映画館が見えてきた。もう少しというところで、舞花が何かに気がついた。
(ねぇ、あの人ってもしかして……)
黒ずくめの男を指さしながら舞花が言う。
(門吾じゃない?)
「えっ、門吾なの!?」
驚いても大声を出すわけにもいかないので、声を抑えて驚くシロ。
(ほら、よく見てよ)
舞花に言われてじっと観察してみると
「「ホントだ……」」
武瑠とシロがシンクロした。
「何やってんだよ、あのオッサン………」
「娘のことか心配だったんじゃない?」
(それよりも、田中さんじゃない? 田中さんのこと付けてるんだから)
「この一週間、挙動不審過ぎて怪しまれたか」
「だろーね。……ん? ってことはさぁ、門吾これから田中ちゃんが誰と会うのか知らないんじゃないの?」
確かに……。挙動不審な部下を尾行してたら自分の娘と会ってました。――なんてあのオッサン受け入れられんのかな?
絶対に無理だと思う。一度しか喋ったことないけど、絶対無理だと思う。娘と部下のデート現場に遭遇してそのまま黙って帰るとは到底思えない。
いや、案外そっと見守るタイプか? とも一瞬考えたが、それは直ぐ様打ち砕かれることとなる。
石川は武瑠達の予想通りの行動をした。
映画館に着いたところで田中と歩莉が落ち合うのが見えた。途端に、石川はズカズカと二人に近付いて行こうとする。
おいおいおい!
武瑠達は慌てて石川を止めに走った。
武瑠とシロで両サイドから石川の腕をホールドし、誘導は舞花に任せる。何となくその方が石川が素直についてきてくれるような気がしたからだ。
(門吾、こっち来て)
――思った通り。
舞花、そして武瑠達を視界に入れた石川は何でお前達がここにいるんだと言いた気にしながらも、騒ぐことはなく、取り敢えず大人しく付いて来てくれた。田中達から見えないところまで石川を連れてきたところで、漸く武瑠は口を開く。
「オッサン、デートの邪魔するなんて野暮ってもんだろ」
「うるせぇよ。それよりお前らは何でこんなところにいるんだ!」
声は抑え目、圧は強めな感じで迫ってくる石川に自然と体が仰け反る武瑠。
「そりゃあ、田中ちゃんの勇姿を密かに見守りに来てるからに決まってるでしょー」
「シロは面白がってるだけだろ。後で田中さんイジる為のネタ集めにしか興味無いくせによく言うよ」
「えへへ、否定はしなーい」
へにゃりと笑うシロはそれだけで何でも許されると思っているから質が悪い。
俺には通じないからな、そのへにゃへにゃ笑いは!
武瑠はシロに強めな視線を向けてみたが、やはりこてんと首を傾げてへにゃりと笑うシロ。
駄目だ、こりゃと武瑠は肩をすくめた。
「お前らはここでどうするつもりだ? あの二人が映画を観終わるまで待っているつもりか?」
「えっ、まさかオッサン。一緒に入るつもりだったの?」
(……二人の邪魔しちゃ、ダメだよ門吾)
舞花に言われ、しかしだなぁと困った顔をする石川。
前からちょっと思ってたけど、石川のオッサンはどうやら舞花には弱いようだ。
ふーん、と思いながら武瑠がにやにやとしていると、隣でシロも同じ顔をして笑っているのを目の端で捉えた。
「わーかったよ、外で待つ! それなら、いいだろう?」
お前らもどーせこのまま帰る気なんて無いだろとかなんとか、ぶつぶつと言っているが聞き流す。大人しくしてくれるなら何でも良い。元々そのつもりだったけど、と思いながら武瑠達は石川と一緒に映画が終わる時間までここで待つことにした。




