Episode7 地味男の勇姿を見守り隊![デート編] 2
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買ってきた服を武瑠達にお披露目した田中は三人のお墨付きも貰い、準備は万端。あとはデートを成功させるだけだ。
しかしながら、田中はやはり緊張していた。緊張するなという方が無理なもので、自分の隣をあの歩莉が歩いているということが未だに信じられないでいた。
何の映画を観るのか決めるのも、チケットやドリンクを買うのも、何をするにも緊張してしまっている田中の動きはぎこちない。
今日の田中の格好なら普通にしていれば、歩莉と二人で並んでいても違和感無いのに。
そう思いながら、武瑠、舞花、シロの三人は田中と歩莉の様子を遠くから見守っていた。
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田中と歩莉が出会う前――。
朝、チャラの店で「行ってらっしゃい、頑張って」と見送った三人は、本当ならばあの古びた喫茶店で待っている予定だった。しかし、田中を見送って直ぐに怪しい人影が田中の後をつけていることに気づき、そうもいかなくなってしまったのだ。武瑠達は何かあった時に手助けできるようにと付いてきたのだが、極力デートの邪魔はしたくない。だから、本人達にはバレないように細心の注意を払っていた。
舞花とシロが何故来たのか。それはきっと田中さんのことが心配だったからとかそういう理由じゃないと思う。いや、少しは心配もあるかもしれないけど。絶対、面白がっているだけだと思う。
普段からこの二人の様子を間近で見ているけど、行動の判断基準は面白いか面白くないか、ただそれだけだから。
このデートが無事に終わったとしても、きっとこの二人にネタにされて遊ばれちゃうんだろうな~。可哀想に、田中さん。まぁ、俺も助けるつもりはないけど。だって、こっちに飛んで来たら面倒くさいから。ゴメンネ、田中さん。
武瑠は内心で田中を薄情に切り捨てながらも、ガンバレとせめてものエールを送った。
田中の後をつける黒い服に黒のキャップを被った男。つまりは、全身黒ずくめ。尾行に慣れているのか、動きは何ともスマートだ。でも、やっぱり怪しいことに代わりはない。
「ねぇ、田中ちゃんって本当に警察の人なのかなぁ~。自分が尾行されてることにも気付かないなんてさぁ」
(きっと、デートのことで頭がいっぱいで周りが見えていないのよ)
「あー、そっか。う~ん、あんなんで大丈夫かなぁ、田中ちゃん」
確かに田中のことは色んな意味で心配だ……。
それよりも何よりも、シロはいつの間に田中さんのこと田中ちゃん呼びになってんだよ。って、最初からか。一応、あの人俺達より歳上だからな。武瑠は呆れながらも、きっと田中なら許してしまうんだろうと考え、心の中だけに留めておくことにする。