Episode7 地味男の勇姿を見守り隊![デート編] 1
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後日――。
田中は歩莉と映画館に来ていた。歩莉をデートに誘ったのは一週間前で、今日この日までに石川に何かの拍子でバレやしないかとヒヤヒヤしていた日々を思い出しながら、田中はちらりと隣を見る。歩莉が自分の隣にいる。それだけで田中は天にも昇る思いだった。
デート前日にも休みを取るようにと武瑠達から言われていた田中は、二日連続で休みを取った。今の部署に配属されてからは、初の連休なんじゃないだろうか。休みであって休みでないような日が殆どだった為、連休を申し出るだけで少々ドギマギしてしまった。
デート前日、田中は再びあの花屋を訪れていた。
「あのー、武瑠さん。私は何故ここに……」
自分とは明らかに違う人種の花屋――、もといチャラ。金髪ピアスのイケイケ男子のところへ連れてこられて、田中は困惑するばかりだ。
「いいから、入るよー」
田中は武瑠に引っ張られそのままの勢いで花屋に入る。
「チャラー、いるかー」
今日は定休日らしく店の看板は仕舞われており、店主の姿も見当たらない。武瑠は店の奥に向かって叫んだ。
「おー、武瑠ちゃんいらっしゃい。そちらが例の?」
「そう、髪型と服装何とかしてやってよ」
「んにゃ、任せろ。ほいじゃあ、行くよー。えーっと、一郎君だっけ?」
「は、はいっ。よろしくっ、お願いしますっ!」
田中は何がなんだか分からないままに頭を下げる。チャラはというと、ドが付くほどの緊張をしている田中を見て、目を細めて笑う。
「ハハッ。そんな固くなんなくて大丈夫だから。今から、俺の知り合いのお店行ってかっこいい髪型にしてもらおーね」
パチリとウインクを飛ばすチャラ。流石は慣れているのか、様になっている。
田中がチャラに連れられて訪れた美容室は普段自分が通っている激安カット店とは似ても似つかぬ程キラキラした店だった。こんなオシャレな店は初めてで田中は花屋を訪れた時以上にガチガチに緊張している。
「一郎君、そんなに緊張しなくても大丈夫だから。ほら、力抜いて~。コイツに任せとけば、安心だよ」
若干、震えているようにも見える田中を不憫に思ったのか、チャラはほらほら、大丈夫~といいながら、田中の肩を揉み緊張を解そうと声をかけてくれる。
どんな髪型にされるのだろうか、と内心びくびくしていた田中だったが、そこは美容師もプロだった。チャラみたいなチャラーい感じてはなく、ちゃんと自分に似合うよう髪型に整えてくれた。普段、冴えない自分でもこんなにオシャレに見えるから不思議だ。
「ほぉー、何だか自分ではないみたいです……」
田中は鏡の中にいる自分をぼーっと眺めてしまう。
「いいねぇ、一郎君似合ってるよ。やり方はコイツから聞いたし、明日は俺がセットしてあげるからね。ちゃんと、デートの前に俺んとこ来るんだよ」
明日はチャラがこのかっこいい髪型にセットしてくれるらしい。自分では同じようには到底出来そうにもないので、田中にとって非常に有難いことだった。
「んじゃ、行くよー」と次に連れられて来たのは服屋だった。こちらもチャラの知り合いの店らしく、チャラは店員と何やら親しげに話している。
おっけー、任せといてと言った男性店員は何着か見繕って持ってきてくれた。
田中は言われるがままに、試着室でそれらに着替える。これは違う、もうちょっとこういう感じの――、とチャラが指示を出し店員がそれに合わせた服を持ってくる。というのを何回か繰り返した後、やっと納得のいくファッションに仕上がったらしい。チャラは「うん、いいじゃない」と満足そうに頷いた。




