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Episode7 地味男の勇姿を見守り隊![社会見学編]4

 



 とある花屋の前にて――。


「あのー、ここでいったい何を……」


「まぁ、見てなって。あそこの花屋、絶対に来た客口説き始めるから」


 武瑠達の視線の先には、今日も道行く女性達に爽やかな笑顔を振り撒くチャラがいる。四人が暫く見守っていると、一人の女性客が花屋に入っていった。


「いらっしゃいませー。適当に花束を見繕えばいいんですね? はい、承りました。ところで、可愛らしいレディ、今夜のご予定は空いていませんか? 俺、一緒にごはん食べる可愛い子を探してたんだよね」


「あ、あの今日はちょっと……」


「だったら、後日にでもどうかな? 折角出会えたのにこれきりの縁なんて勿体無いと思わない? よかったら、連絡先教えてよ。美味しいごはん屋さん連れていくからさ」


「は、はい……」


 女性はあれよあれよと言う間にチャラに連絡先を教えてしまった。一般的に女性ウケする容姿のチャラは高い確率で女性を口説くことに成功する。口説かれた女性は恥ずかしそうに「いえ、そんな」と言いながらも、嬉しそうに頬を染める。舞花のように素っ気ない態度を取られる方が稀なのである。


「また、連絡するね。あいこちゃーん」


 表情は見えないがきっと、ウインクでもかましているところだろう。武瑠達はそのまま店の外まで女性客を見送るために出てきたチャラを見ていた。


 すると突然ピクリと反応したかと思うと、こちらに顔をバッと向けてくる。そして、パッと表情を明るくして手を振ってきた。


「舞花ちゃーん。最近来てくんなかったから俺寂しかったよー」


 真っ先に舞花に話しかけるところは流石はチャラと言ったところか。きっと、武瑠やシロ、ましてや田中の事なんて眼中にもない。


 声をかけられた舞花はというと、手を振り返すこともなく、即座にくるりと背を向ける。


(次、行こ)


「えっ、いいんですか? あの花屋さん、舞花さんに向かって思いっきり手振ってますけど」


 田中は思わず声をかけていた。どうすればいいのか分からず、チャラと舞花を交互に見てしまう。


(いーの。あの人は田中さんの参考にはならないでしょ。あの人と同じようにできるなら、別だけど)


「ま、まぁ確かにあの花屋さんみたいに軽く連絡先を聞くというのは、自分には……」


(でしょ。だったら次、早く行こ)


 田中の返答を聞くや否や、舞花はスタスタと歩いていってしまった。


「ま、待ってください!」


 田中はその後を追いかけて、慌てて舞花に付いて行く。そんな二人の背中を見ながら、武瑠はシロに視線を向ける。


「舞花、チャラのこと相当面倒なんだな」


「うん。だって、ここの前通る度に口説かれて、手握られてってしてるからねー」


「あー、そりゃ確かに面倒だ」


「うん。あの人、めげないからねー。でも、悪い人じゃないっていうのも分かってるから、きっと舞花も完全には拒絶しないんだと思う。今までは自分達のことを拒絶する人間の方が多かったからさ。悪意なく向こうからぐいぐい近寄って来てくれるのも悪い気はしてないんだよねぇ、きっと。ま、面倒くさいことに変わりはないんだけどさー」


 シロはいつものようにへにゃりと笑った。


「ふーん」


 武瑠は特に何も言わずに相づちを打つだけ。そんな武瑠を見てシロは意味深に問い掛ける。


「でもさー、武瑠はいいのー?」


「何が?」


「舞花が口説かれてること」


「いいも何もあれがあの二人のコミュニケーションの取り方なんじゃねーの? 舞花とチャラの自由にやればいいんじゃん?」


「んー、うん。いや、別に武瑠がいいならいいんだけどねー」


 武瑠は舞花と田中の背中を見つめているシロを見るも、その心理を読み解くことはできなかった。


「俺よりもお前はいいのかよ? 弟として、さ」


「僕ー? 僕は、別に舞花が幸せならそれでいーよ」


 シロは再びへにゃりと笑うと「待ってよー、舞花ー」と袖をぱたぱたとさせながら、二人の後を追いかけていった。武瑠はふぅ、と息を吐いてからゆっくりと三人の後ろを付いていくのだった。



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