Episode7 地味男の勇姿を見守り隊![社会見学編]3
武瑠の考えは秒で粉砕された。
たじたじといった田中の反応を見て楽しそうにする姉弟に舞花も田中さんで遊ぶんかいっ! とツッコみたくなるのを我慢して武瑠は田中に「それで?」と声をかけて軌道修正に全力を注ぐ。
「実は、その……気になっている女性というのがですね。上司の娘さんでして……」
「上司って――」
「もしかして――」
(――門吾?)
三人はそれぞれの席から一斉に田中の方へと体を乗り出した。
「は、そーです……」
田中はその勢いに押されて仰け反りながらも何とか答える。
「石川のオッサンかぁー」
「門吾ねぇ~」
(モンゴ……)
同じ人物を頭に浮かべながら、三人ともそれはご苦労様だと田中に憐れみの視線を向けながらしみじみと厳ついあの男の名を口にする。
「っていうか、何で舞花はオッサンの名前呼びながらそんなウキウキしてんだよ?」
また話が逸れてしまうことは分かっていたが、武瑠は聞かずには居られなかった。
「舞花は、モンゴっていう響きが好きなんだよ~、ね?」
(こくり)
シロの訳の分からない説明に頷く舞花。武瑠には到底理解できなかったので、これ以上考えるのは止めることにした。
「共通の話題がオッサンだったとしても、それを話題にするのは違うわなー」
「はい……」
田中のテンションは下がっていくばかりで、このままでは再起不能になってしまうんじゃないかと思う程にしょんぼりとしている。が、何とか話を進めようと武瑠は田中に声をかける。
「連絡先は知ってるのか?」
「あ、いえ、それも知らなくて……」
「じゃあ、どうやって会うのー?」
「あ、あのっ、いつも石川さんが連れていってくれる定食屋さんがあって、彼女はそこでバイトをしているのです。普段は大学生さんなので……」
(大学生さん……)
舞花は田中の“大学生さん”呼びがツボに嵌まったのか、口元に手をやり肩を揺らす。
「んじゃ、その定食屋行ってパパっと連絡先聞いちゃおうよ」
「それが出来たら苦労しません」
もう勢いで行っちゃえと言うシロに何故か姿勢を正してキリッとした顔を向ける田中。
「胸張って言うことじゃないよね」
「あ、すみません……」
案の定、即座にシロにばっさりツッコまれ、またシュンとなる田中。
「まぁまぁ、シロにとっては簡単かもしれないけど、田中さんにとってはパパっと連絡先を聞くっつーのはハードルが高いんだよ。だから、まずは……」
「どーするの?」
(どーするの?)
白崎姉弟は声を揃える。
「社会見学でもするか!」
「社会見学って、いったい何処へ……?」
田中は非常に不安そうだ。
「いいから、いいから。早く行くぞ」
武瑠は答えることなく、田中の腕を掴むとそのまま外へと引っ張った。舞花とシロもそれに続く。
「皆さん、お気をつけて」
店の主はそんな彼らの背中を見つめながら、微笑ましく見送るのだった。




