表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/91

Episode1自覚 5




“悟り”とか“悟られ”とか、本来ならば急に何なんだと言いたいところだが、武瑠は不思議と納得していた。医者に気のせいだとか、精神的に疲れているんだとか言われるよりもずっと、シロの話の方がしっくりとくる。


「信じてくれたみたいで良かったよ」


 武瑠が納得したのを感じ取ったのか、シロはへにゃりと笑う。


「まぁ、俺のこれまでの不可解な謎に答えをくれた訳だから。ということは、さっき聞こえた“危ない!”って声は舞花の?」


(そう言ったでしょ)


「言ったっけ?」


 舞花に涼しい目を向けられ、シロに確認する武瑠。


「うん。ほら、“さっきは私の声に反応してくれてありがとう。私達がいた場所からあの子を助けるには少し距離があって間に合いそうになかったから助かった”って、さっき舞花の声で聞かせてあげたでしょ」


「あ、ホントだ。聞いてたわ」


 ごめんごめん、と武瑠は舞花に笑いかける。


(別に……)


 舞花はふいっと顔を背けると、マスターに“同じものをおかわり”と追加の注文をした。


「武瑠はそのヘッドホンをつけると他人の声がマシな気がするんだよね?」


「え? うん……」


「それは気のせいじゃないよ。実際にそうやって物を使って自分の性質(のうりょく)をコントロールしている人は多いんだ。僕の場合はコレ」


 そう言ってだぼだぼの袖を振るシロ。


「手をね……、自分の手を隠すことで人の心を読まないようにしてる。逆に言えば、手を出すと他人の声が聞こえまくりになっちゃう訳だけど」


「手……」


 武瑠はシロの服の向こうにある手をじっと見つめる。


「ま、イーメジの問題だよ。僕は手から人の心を感じ取っちゃう気がしたんだ。だから、それを隠せば聞こえないっていう一種の暗示みたいなものだよね」


 シロは袖から手を出さないまま自分の飲み物が入っているグラスを持ち上げ、こくりと一口飲むと、再び話を続ける。


「舞花の場合はね、ロケットペンダントだよ」


 そう言われて、武瑠が舞花を見ると確かに彼女の首にはシルバーのロケットペンダントが掛けられていた。


「舞花はそのペンダントで自分の声が漏れちゃわないようにコントロールしてるんだ。その中に閉じ込めるイメージなのかな。小さい頃はそれでもコントロール出来なくて他人に(コエ)が聞こえちゃう事もあったけど、今では訓練して自分で聞かせたい時に聞かせたい相手に声を聞かせることが出来るようになったんだ」


 なるほどな、と思いながらおかわりした大量のスイーツを再び食べている舞花を見つめる武瑠。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ