Episode5 束の間の戦隊ヒーロー 8
◇
カランカラン――。
古びた店内に来客を告げる音が響く。
「みどりちゃん、オカエリナーサイッ。みどりちゃん、スキッ」
それと同時に籠の中のみどりちゃんが嬉しそうに言葉を放った。その言葉に答える為に一直線にみどりちゃんに向かって歩いていった彼女は、手を籠に添わせ優しく笑う。
「ただいま、みどりちゃん。私もみどりちゃん、だーいスキッ」
彼女は写真で見たのと同じ、くしゃっとした笑顔で笑った。
「美代ちゃん、オーハヨ」
「うん、おばあちゃん……美代ちゃんも目を覚ましたよ。今は筧さんがおばあちゃんと一緒に居てくれてるから」
「カケイサン、カケイサン」
「筧さんって……」
「ヘルパーさんなんじゃないの? 写真に一緒に写ってたジャージの」
シロの呟きとそれに答えた武瑠にみどりはくるりと振り返る。
「あっ、はい。筧さんはおばあちゃんのお世話を担当してくれているヘルパーさんです。私も同じ職場で働いていてお世話になってる方で……」
「あの時、美代ちゃんが言ってたみどりちゃんは孫のみどりちゃんのことだったんだねー。倒れて苦しそうにしながら、何度もみどりちゃん、みどりちゃん、って呼んでたんだよねー」
シロはへにゃりと笑う。
「インコのみどりちゃんはおばあちゃんの話し相手で。忙しくてなかなかおばあちゃんの家に行けないので、最初は私の代わりだったというか……。おばあちゃんもみどりちゃんも友達とか家族とはまた違うけど、お互いに癒しを与え合える存在というか……そんな関係だったみたいです」
みどりは、インコのみどりちゃんを愛しそうに撫でる。
「あの……、皆さん先日はおばあちゃんのこと助けていただいて、どうもありがとうございました。私、あの時すごく混乱してしまって……」
「混乱するのは当たり前だよー。見ず知らずの人達が急に家に乗り込んできて。しかも、自分のおばあちゃんが一刻を争う大変な時に」
(こくり)
シロは安心させるように優しく笑い、舞花はそれを後押しするようにしっかりと頷いて見せる。
「このメモも……、みどりちゃんのこと暫く預かっていただいて本当に助かりました」
みどりは深く頭を下げた。
“インコのみどりちゃんはこちらで暫く預かりますので、ご心配なく。原田美代さんの容態が落ち着いたら迎えに来てあげてください。
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△△△町□番地■■ー▲▲▲
看板猫がいる古びた喫茶店です
みどりちゃんのオトモダチのサトルより”
「気にしないでよ。コイツ等もみどりちゃんが増えてなーんか興味津々っていうか、遊び相手が増えて嬉そうだったし」
武瑠は膝の上にいるももの背中を撫でながら、カウンターのイスの辺りでぴょんぴょんとジャレ合っているあかときい、そしてテーブル席にいる舞花の隣で丸くなっているあおに目を向けて言った。