Episode5 束の間の戦隊ヒーロー 6
「あんた、俺の性質について知ってるってことは悟りとか悟られのことも知ってるんだよな?」
「ああ、そういうのがいるってことだけはな。俺にもこいつにもそんな性質はねぇから、実際のところはよく分かってないんだが」
(使い方を知らないだけで性質はあなたの中にもある)
心に驚いたようで、石川と田中は舞花を見る。
「その話はややこしくなるから、取り合えず今は置いとくぞ」
武瑠は話を進める。
「サトルが“美代ちゃん、タスケテ”っていうみどりちゃんの心を聞いたんだ。でも、心を聞いただけで、実際に会ったことはなかった。だから、どこに住んでるのかも分からない状態で。この辺で心が聞こえたから、この近くなのは間違いないけど、美代ちゃんのこともみどりちゃんのことも知らないから一人では探せない。それで俺達が探すのを手伝っていたんだ。家に来てみると、“苦しい”とか“助けて”っていう心が聞こえたから中に入ろうとしたんだけど、玄関の鍵は閉まってて、インターホンを押してもガチャガチャしてもドアは開かなかった。だから、俺達は庭に回ったんだ。そしたら、開け放されたベランダの窓から部屋の中で倒れている美代ちゃんを発見した。で、救急車を呼んだ。ここまではオッケー?」
武瑠は警察二人に確認する。石川は頷き、田中は一つ質問がと律儀にも手を上げる。
「なんスか、田中さん?」
武瑠はどうぞ、と田中を見る。
「あの……、すみません。救急車で運ばれた方が美代さんだということ分かりました。ですが、みどりさんというのは?」
「ああ、この子です。インコのみどりちゃん」
武瑠はそう言ってサトルと戯れていたみどりちゃんを紹介する。
「サトル君が、みどりさんの心を……」
田中はサトルににっこりと笑いかけるがぷいっと顔を背けられた。そして、分かりやすくガクンと落ち込む。
「田中さん、こいつ誰にでもこうなんで気にしない方がいいっスよ」
あまりにも落ち込む田中を見て、武瑠は慰めの言葉をかける。
「あ、スミマセン。話の続きをどうぞ」
田中は落ち込んだままの状態で先を促した。
「美代ちゃんが倒れていた部屋のテーブルには湯飲みが二つ置かれていて、その近くには高級老人施設のパンフレットが置いてあった。コレはもしかして美代ちゃんは何かトラブルに巻き込まれて、何かの弾みで発作が起こってしまったのでは、と俺達は考えた」
「ほぅ……。話を聞く限りでは無理な勧誘、もしくは詐欺のターゲットとして狙われていた可能性が上げられますね。最近、老人の一人暮らしを狙った犯行が多発していますから」
田中の言う通り、武瑠達もその可能性を考えた。この家に通い詰めていたセールスマンとトラブルになったのでは、と。
「そう。だから、念の為と思って警察に連絡した。あんた達が来るまでに、俺達は自分達の行動も含めてここに来てからのことを一から整理してみた。そしたら、分かったんだ。恐らくこれは事件でも何でもないって」
(私達が混乱させちゃったみたい……)
「混乱させちゃったって誰をですか?」
舞花の言葉に田中は首を傾げる。
「“みどりちゃん”だ」
「えっ、インコ?」
石川も田中も揃ってインコのみどりちゃんを見る。
「違う違う、そっちじゃなくて人間の方の“みどりちゃん”」
武瑠はタンスの上の写真を指さした。
そこには、幼稚園から成人になるまでの女の子の写真が並べられていた。一番最近のものと思われる写真には美代ちゃんとジャージを着た女性、そして「みどりちゃん、就職おめでとう!」と書かれた封筒を嬉しそうに持っている女の子が写っている。
「サトルの話を聞いた時から思ってたんだ。何でインコのみどりちゃんなんだろうって。答えは簡単。それは、人間にもみどりちゃんがいるから。人間のみどりちゃんは、恐らく美代ちゃんの孫だ」
「お孫さんがここにいたってことですか?」
田中の問いに武瑠は恐らくと頷いた。
「じゃあ、何でその孫は死にかけている婆さんを放ったらかして出ていったんだよ?」
石川も訳が分からんと眉間に皺を寄せている。
「放ったらかして出ていったんじゃないよ。俺達のせいでびっくりして混乱しちゃったんだよ」
「さっき嬢ちゃんも言ってたな、ソレ」
(嬢ちゃん、じゃない)
石川の嬢ちゃん発言にムッとする舞花。それを見て石川は気まずそうに目を逸らしながらスマンと謝る。




