Episode5 束の間の戦隊ヒーロー 4
救急車を見送った後、一同ホッと息を吐く。
「武瑠、ベランダから飛び込む一瞬でよく、この家のAEDの場所まで把握できたね」
「あ? ああ、何か癖で」
「癖?」
シロは一瞬の内に状況を把握した武瑠に感心していた。
「元々の性格っつーか、その場にいる人とか物とかを観察する癖があって。性質が開花してからは一層高まっちゃったというか……。色んなモノを認識したり、判断したりするスピードが上がったというか……」
上手く言えねーな、と武瑠は頬を掻く。
「あっ、それよりシロ。警察にも電話しといて」
「えっ? どーして?」
警察という言葉を聞いて、シロは首を傾げた。
「計画的かそうじゃないかは分かんねーけど、“美代ちゃん”――多分トラブルに巻き込まれて、ああいう状況になったんじゃないかな?」
「トラブルって……」
武瑠は高級老人施設のパンフレットを手に取り、シロ達に見せた。
「これだよ。玄関の鍵は閉まってたし、顔見知りだった? 何度も根気強く来てたのかもなぁ。美代ちゃんも始めこそ拒んではいたけど、何度も話をしている内に仲良くなった……」
武瑠はテーブルに置かれた二つの湯飲みに視線を移す。
「老人の一人暮らし。話し相手はみどりちゃんだけ。寂しさを感じていたところに、何度も足を運んでくれるセールスマン。徐々に心を開き始めていた……とか」
「ってことは、そのパンフレットのセールスに来ていた人が、美代ちゃんを?」
「カケイサン、カケイサン」
みどりちゃんの声に一斉にみんなでそちらを見る。“美代ちゃん、タスケテ”と先程あわあわとしていたみどりちゃんは、サトルに撫でられ今は大分落ち着いている。そのみどりちゃんが放った言葉――、“カケイサン”。
(カケイって人がそのセールスマン?)
その場の全員の頭に浮かんだ考えだった。
「武瑠……、何とかなる?」
サトルは武瑠を見上げて聞く。真一文字に結ばれた口を見て武瑠はふっと笑みを溢した。
「俺を誰だと思ってんだよ」
ぽんっと、武瑠はサトルの頭に手を乗せる。
「……武瑠のくせに」
ぷいっと顔は背けたものの、頭に乗せられた手をサトルが振り払うことはなかった。
「警察が来るまでにもう一回、状況を整理するぞ」
武瑠の言葉にみんなは頷いた。
武瑠達がここへ到着した時、玄関の扉はおろか、鍵も閉まっていた。呼び掛けながらノックをしたけれど、応答はなし。その時、中からは特に物音等はしなかった。舞花が庭へ回れることに気がつき、みんなでそちらに回る。ベランダの窓は開け放されており、中で“美代ちゃん”が胸を押さえながら倒れていた。武瑠達は救急車が到着するまで“美代ちゃん”の側にいた。その間、家の中にいたのは武瑠達と“美代ちゃん”だけ。特に怪しい人物も見てはいない。
(あ……、私、物音を聞いたかもしれない)
舞花は思い出したように、ポツリと呟く。
「本当か、舞花」
武瑠に詳しくと目で促され、舞花はゆっくりと思い出しながら説明をする。
(あの時は、みどりちゃんが立てた音なのかなと思ってたんだけど。この部屋とは別のところで物音がした気が……。カタンっていうかカツンっていうか……。本当に小さな音だったから私の気のせいかもしれないんだけど)
舞花が聞いた音。
自分は“美代ちゃん”に掛かりっきりで聞いてはいなかったが、舞花が言うならまず間違いないだろう。
「あの時舞花はここにいて、みどりちゃんがいる場所とは別のところで音がしたように感じた。ってことは――」
武瑠は舞花が立っていた場所に行き、きょろきょろと部屋中を見回す。そして、部屋から出て廊下を進み、玄関まで来た。
シロも舞花もサトルも、武瑠の後をそろそろと付いていく。
「……おかしいな」
武瑠の呟きにシロがどーしたの? と問い掛ける。
「いや、鍵が開いてるんだ」
「えっ!? それはおかしいよ。僕も武瑠もここに来た時に確認したけど鍵閉まってたよね?」
シロは驚きの声を上げた。舞花とサトルも目を見開き驚いている。
(私達がここに来た時には、まだ中にいた?)
「僕達が“美代ちゃん”のこと助けてる間に玄関から逃げたってこと?」
「そーいうことになるな……」
武瑠は「ん?」 と、玄関の隅に落ちていたモノを拾い上げ、マジマジと見つめる。
「何ソレ?」
シロは武瑠の持っているものを見つめて首を傾げた。
(ソレ……)
「舞花、コレが何か分かるの?」
(うん、――――)
舞花が言った答えに武瑠とシロは成る程と頷いた。




