Episode5 束の間の戦隊ヒーロー 3
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「この辺か?」
「うん、そう……」
住宅街のど真ん中で家という家が軒を連ねている。これは特定するのに苦労しそうだ。
「俺の心がみどりちゃんに届くかは分かんないけど、取り合えずやってみるから。サトル、みどりちゃんの心聞き逃さないようにちゃんと聞いとけよ」
「うん、分かった」
武瑠はサトルがヘッドホンを首に掛けるのを見てから、同じようにヘッドホンを首に移動させ、フードを取る。
(みどりちゃん、インコのみどりちゃん。俺の心が聞こえたら、応えてくれ)
目を閉じ、聞き逃さないようにと集中するが、みどりちゃんの心が聞こえてくることはない。
みどりちゃん、みどりちゃんと繰り返し語りかけながら歩を進めるが、一向に反応は返ってこなかった。
白崎姉弟には、この辺りの家の表札を見て回ってもらっている。
サトルの話を聞く限り、“美代ちゃん”は恐らくお年寄りだ。ケンゾーは美代ちゃんの旦那さんで四角いモノの中で喋らなくなったのは、それが仏壇に飾られている遺影の中のケンゾーさんだから。
この辺りの家は全て一軒家だし、美代ちゃんが住んでいるのも一軒家ならば、名字だけでなく下の名前まで表札に書かれている可能性がある。ケンゾーと美代という名前が書かれている家。そこにみどりちゃんはきっといる。
(苦しい……っはぁはぁ……、誰か……たす、けて)
突然、飛び込んできた弱々しい心。武瑠とサトルは同時にピクリと反応した。
(美代ちゃん、タイヘン。美代ちゃん、タスケテ)
「た、武瑠! みどりちゃんだ!」
(美代ちゃん、タイヘン。美代ちゃん、タスケテ)
もちろん、その心は武瑠にも聞こえている。苦しそうな心と繰り返し助けを求める二つの心だった。
どこだ? どこの家だ?
この近くなのは間違いない。
武瑠は忙しなく視線を動かしながら、心の居所を探った。
すると――、
「武瑠ー! 見つけたよー、こっちぃー!」
シロが少し先の所でぱたぱたと袖を振っている。武瑠とサトルは直ぐ様そこへ走っていった。
表札を見ると確かに“原田健三”、“美代”と書かれている。
ドアノブをガチャガチャとしてみるが、鍵は閉まっている。続いてドンドン、ドンドン――。とドアを叩きながら「すみませーん! 誰かいませんかー!?」と呼び掛けてみた。が、誰も出てくる様子はない。
(武瑠、こっち。庭に回れる)
舞花に従い、武瑠達はすぐに庭の方に回った。開け放されたベランダ。中を覗いてみるとそこに倒れている年配の女性が見えた。
「おい、大丈夫か?」
武瑠は駆け寄り、苦しそうに胸を押さえている女性に声をかける。女性は意識朦朧としながら、「……みどりちゃん」と力ない声で名前を呼んでいた。
その後ろではずっと籠の中のインコが「美代ちゃん、美代ちゃん」と言い続けている。恐らくこの子が、サトルの言っていた“みどりちゃん”だろう。
「おい、舞花! そっちの部屋にAEDが見えた。持って来てくれ! シロは救急車呼べ! サトルはみどりちゃんと一緒に居てやれ」
武瑠はそれぞれに指示を出した後、不安そうにぎゅっと手を握りしめているサトルに、大丈夫だからと笑いかける。
きゅっと口元を引き締めてこくんと力強く頷いたサトルを見て武瑠もこくりと頷いた。
(武瑠、持ってきたよ)
「電話繋がったよ」
シロは電話をスピーカーにして武瑠に聞こえるようにする。武瑠は救急隊に女性の容態を伝え、指示に従って気道を確保し、心臓マッサージを行う。
それを続けている内にサイレンの音が近くなり、この家の前で止まった。思っていたよりもずっと早く救急車は到着した。
「あの……ご家族の方ですか?」
救急隊員が武瑠に声をかける。
「いや、通りすがりの者です。窓が開いていて、外から苦しそうにしてるおばあちゃんが見えたので勝手に家に上がり込んじゃいました。あ、コレ多分おばあちゃんのケータイ……」
「そうでしたか。迅速な対応、ありがとうございました! ご家族にはこちらから連絡をしておきますので。それでは!」
救急車に乗せられて“美代ちゃん”はそのまま病院へと搬送されていった。




