Episode4 君影草を君に [解決編] 10
◆
――――後日。
「ねぇ、今晩、俺とどう? ジャスミンの花のように愛らしい君と刺激的な夜を過ごしてみたいな」
「えっ、あの……」
「俺、最近ものすごーく傷つく出来事があってさ。誰か慰めてくれる子を探してたんだよ。ねぇ、だからさ――」
花屋に赴いた武瑠、舞花、シロの三人は入り口付近でのやり取りを遠巻きに見ていた。
「俺達は何を見せられてるんだろーな」
(ねぇ、これ何待ちなの?)
「うーん、あのナンパの行く末待ち?」
「失敗する方に百円」と武瑠が片手を上げると
「僕も失敗する方に百えーん」とシロも続いて手を上げる。
(それ、賭けになってないよね……)
舞花はその横で呆れた様子でため息を吐いた。
「お客さん、困ってるねー。アレ、助けた方がいいかなー?」
「いや、もうすぐ終わるから大丈夫じゃね?」
「ん?」
ほら、と武瑠に言われてシロは再び花屋の入り口に目を向けた。
「わ、私は……その、……」
「こら、隼ちゃん。お客さん困ってるでしょー。それにあなたには私がいるじゃなーい」
ぱちんとウインクをしながら登場したのは、女の子の姿をしたマユ。
客の女性はマユの登場にあわあわとしながら、失礼しますと言って購入した花を持って走り去っていった。
「あっ、ちょっ――」
チャラは手を伸ばして引き止めようとするも、女性は見向きもせずに行ってしまった。
「おいおい、マユちゃん。何邪魔してくれちゃってんの~。もうちょっと押せばイケたのにさぁ」
「はぁ、隼ちゃん。みゅーのこともかたが付いたんだからさ、一時の関係とかじゃなくてそろそろ本気で好きになれる恋人でも作ったら?」
「何言ってんだよー。俺はいつでも本気だよ? 本気で女の子を口説いてるの」
ぱちんとマユにウインクを飛ばすチャラに別の方向から呆れた声が飛んでくる。
「何言ってんだは、あんただろ……」
入り口に近付くことなく、遠巻きに見ていた武瑠達がやっと店の中に入ってきたのだ。
「舞花ちゃん! 俺に会いに来てくれたの?」
武瑠とシロを通り越してその後ろにいた舞花にサササッ――と近づき両手を握るチャラ。
(離して?)
「照れなくていーからさ」
(照れてない)
そして、すぐに舞花を口説きにかかることは忘れない。
「ブレないねー」
武瑠はそんなチャラに呆れた視線を向けた。
「あの人、シリアスな雰囲気とか苦手そうだもんねー。でも、この間僕達にしんみりしたとこ見られてるから、その印象を払拭したいんじゃない?」
「それなら、心配要らねーな。そんなジメっとした印象とっくに吹っ飛んじまってるわ。あーでも、この間の話聞いた時は俺、チャラはもしかして女好きを装ってんのかなぁとも思ったんだけど……」
武瑠の言葉は直ぐ様否定される。