Episode1自覚 3
「らじゃー。っと、その前にまず自己紹介からしておくねー。舞花……はまたスイーツに夢中になってる……から、僕が紹介するね」
余りに余ってきっているだぼだぼの服の袖を揺らしながら、へにゃりとした笑顔を武瑠に向ける男――シロ。
「まず、ここで大量のスイーツを食べてるのが白崎舞花。さっき、マスターが言ってたように舞花は声が出ないんだ。だから、普段は筆談とかスマホに文字を打ったりして意志疎通をしてる」
いや……、でもさっき……。
「あー、質問は後で受け付けるから。ね?」
両手――と言っても、だぼだぼの袖に隠れて見えないが――を突き出され、武瑠の心の声にストップをかけられる。
ホントに聞こえてるんだな……。
「で、僕は白崎優羽。下の名前は好きじゃないからシロって呼んでね。あと、もう気付いてると思うけど、舞花は僕のお姉ちゃんだよ」
「舞花とシロ……」
武瑠が二人の名前を繰り返すとシロはよろしくねーと言って袖をパタパタと振った。
「ホントにシロでいいの? なんか……犬っぽいし、下の名前の方が良くね?」
「んー、女の子みたいだってよく揶揄われるんだよねぇ。犬の名前っぼくていーの、いーの。舞花も僕のことそう呼んでるし、武瑠もそう呼んでよ」
「まぁ、本人がそれでいいなら俺はいいけど。……あれ、俺名乗ったっけ?」
「あー、ほらさっきマスターが」
「マスターは俺のこと下の名前では呼ばないよ」
武瑠がじぃーっとシロを見つめているとスイーツを一通り食べ終わった舞花が話に入ってきた。
(シロ、ちゃんと話さないと。武瑠は心の声は駄々漏れだけど、周りのことはよく見てる方だと思うよ)
舞花に言われて、シロは品定めするように武瑠をじぃーっと見つめる。そして――、
「そうだね、舞花。試すようなことしてごめんね、武瑠。実はさ、僕達今日よりも前に君のこと知ってたんだよね。僕が風邪を引いちゃって舞花に付き添ってもらって一緒に病院に行った時に偶々武瑠を見かけてね。その時に看護師さんが武瑠の名前を呼んでたから知ってたんだ」
「看護師が名前呼んでたからって、偶々病院で見かけた見ず知らずの奴の名前なんて一々覚えてるもんかな?」
武瑠が疑問を打つけるとその質問は最もだとシロは頷いた。
「勿論、普通なら覚えてないよ、知らない人の名前なんて興味ないし。でも、聞こえちゃったから。武瑠が病院にかかった理由。“他人の声が聞こえ過ぎるんです”って。悟りや悟られを知らない人達はなかなか気付かないんだよねー。自分の性質が開花したことに」
「その……、さっきから言ってる悟りとか悟られとか、性質とかって何なんだよ?」
「うん、今からそれを説明するね」
シロはにっこりと笑って説明を始めた。




