Episode4 君影草を君に [解決編] 5
「お前達は……誰だ?」
拝田はその場に座り込んだままだったが、武瑠達を睨むことで最後の抵抗を見せていた。
「そんな睨むなってー。あんたが勝手にぜーんぶ喋ってくれちゃったから、吐かせる手間が省けたわ」
「な、何を言って……」
「あんたは気付いてなかったと思うけど、俺ここに最初っからずーっといたんだよ。んでもって、五年前の女子高生毒殺事件の証拠が取れちゃった」
手に持っているレコーダーをフリフリしながら武瑠はにやりと口角を上げる。
「俺もまさかこんなに上手くいくとは思ってなかったわー。スズランの花とオレンジジュースの組み合わせでこんなにも動揺するなんてあんた、マジ単純過ぎ。そんなんでよく、五年間も捕まんなかったよねー。ああ、彼女のお陰か。藍沢心優の死で僕は傷ついたんだー。外の世界から自分を切り離して暫くは身を潜めていたい。だから、すみれ僕を助けてくれ。僕には君しかいないんだ。とか何とか言って、言いくるめちゃったんだろ? ゲスだねー。あ、因みにそのオレンジジュースに毒なんて入ってないから。彼女がそんな事する訳ないっしょ、あんたじゃあるまいし」
拝田は目を見開き、今度はすみれを睨み付ける。
「すみれ、お前僕を裏切ったのか!?」
「ふざけろよ。自分のことは棚に上げて逆ギレですか。ずっと、彼女のこと裏切ってたのはあんたの方だろーが。彼女はずっと苦しんでたんだ」
――自分が渡したオレンジジュースを飲んで同級生が死んだかもしれない。蓋には注射針か何かで空けられた小さな穴があると警察は言っていた。それを渡すように頼んできたのは、自分が慕っている教師。まさか、先生が? いや、そんなはず無い。でも、事件の日の少し前に糖尿病の治療の為にインスリンを打つための注射針が必要だから、ネットで注文してくれないかと頼まれた。自分はネットに疎いから、代わりにお願いできないかと。まさか、その時の注射針で先生がスズランの毒を蓋から……? 違うわ、先生はそんな人じゃない。私が信じてあげないで誰が先生を信じるのよ――。
「彼女は五年間ずっと、こんな葛藤を繰り返していたんだろうね。花屋の前を通る度に目に入ってくるスズランの花に胸を痛めながら、それでもあんたを信じようとしてたんだよ。だから、俺達は彼女に言ったんだ。スズランの花でも買って帰って、美味しいオレンジジュースを飲みながらゆっくり話し合ってみたらどうか、って。スズランは毒という危険な一面もあるけど、その反面純粋で癒しの花でもある。相手の幸せを祈り、思いやる心が込められた花なんだ。あんたを思い続けてきた彼女にぴったりの花じゃないか」
「心優はあのままで良かったんだ……。凛と咲く一輪の花で良かったのに。いつからか廣川真佑とかいう小蠅が彼女の周りをうろちょろとするようになって……。だから……、心優を僕だけのモノにしたんだ。彼女が描いていたスズランの花と好んで飲んでいたオレンジジュースと共に心優は永遠に僕のモノになった」
一人、舞台の上で演じる役者さながらに膝をついたまま語っている拝田。武瑠の後ろからそれを見つめるチャラの目は至極冷たかった。




