Episode4 君影草を君に [解決編] 2
藍沢心優の死因は、中毒死。美術室で倒れている彼女の傍らには、飲みかけのペットボトルのオレンジジュースが転がっていた。そして、そこには描きかけのスズランの絵とそのモデルとされていたスズランの花。聖母が彼女の死を悼みしっとりと涙を流すようにスズランの花は悲しく綺麗に咲いていた。
後に警察の調べにより、ペットボトルの蓋に小さな穴が空けられているのが発見された。恐らくそこから毒物が混入されたのだろうとのこと。そして、その毒はスズランのものだと判明した。スズランの花にはその可憐な姿とは裏腹に、危険な有毒物質が含まれている。特に根や花に多く含まれるソレは切り花を生けている水にも溶け出すのだ。だから、その水を誤って飲んでしまえば、嘔吐や頭痛、めまい、血圧低下、心臓麻痺などを引き起こし、最悪の場合死に至ってしまうこともある。青酸カリの約15倍の強さがあるその猛毒によって、藍沢心優はその最悪の結果を迎えてしまった。
(彼女の事が気になって、ここに?)
「ああ、何だか嫌な予感がして……」
綾野すみれは危うい。彼女の性格や精神状態を考えると確かにどんな行動を取ってもおかしくないかもしれない。
「ってことは、綾野すみれは今中にいるってこと~?」
シロの疑問に武瑠はハッとする。
「それは……、マズいな……。マユ君が危ないかもしれない。俺が行ってくるから、三人はいつでも動けるようにここで待機してて」
武瑠は三人に指示を出す。そして、チャラを見て――
「あんた……今度は勝手な行動はしないでくれよ」
暴走しないようにと釘を刺した。
(シロ……、舞花……チャラのことちゃんと見とけよ)
シロはへにゃりと笑ってパタパタと袖を振り、舞花は表情を変えずに小さく手を振った。
二人にチャラを任せて、武瑠はマユ達の元へ向かう。先程マユからメッセージが来ていた。玄関のオートロックのナンバーと部屋番号だ。それを元に中へと入り、60階建てマンションの最上階へと向かう。
武瑠はすぐにエレベーターに乗り込んだが、なかなか目的の階には着くことはない。何しろ、最上階だ。それが酷くもどかしい。武瑠の中で、早く早くと焦る気持ちと落ち着け、どんな状況になっていたとしても冷静さを欠くなと諌める自分が相撲を取っていた。
エレベーターの表示がまもなく目的の階に達しようとしていた。スッ――と扉が開く。エントランスはしんと静まり返っていた。この階の玄関扉は一つ。武瑠は首に掛けているヘッドホンに手をやり、気持ちを落ち着かせた。
鍵は開けてあるとマユからはメッセージが来ていた。
ここはもう、強行突破で一気に乗り込むか。
武瑠は目の前の重そうな扉を勢いよく開けたのだった。




