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Episode1 自覚 2





 カランカラン――。来客を知らせるベルが鳴る。


 来店したのは、先程ヘッドホンを失くして憂鬱気分を漂わせている大和武瑠(ヤマトタケル)だった。


「マスター、オムライス」


 注文をしながら、いつもの席へ座ろうと武瑠がカウンター席に近づいていくと、見覚えのあるモノがそこにある。


「え? これ、俺の……」


 武瑠は先程無くしたばかりのソレを手に取った。


「ああ、そのヘッドホン大和さんのでしたか。それ、彼方のお嬢さんが持っていらして。ここへ置いておけば、その内持ち主が現れるからと」


 武瑠の声に反応して、マスターがテーブル席に座っている女の子に視線を向けながら教えてくれる。


 武瑠がそちらに目を向けると、見たことないぐらいの透明感(オーラ)を放っている女の子がいた。彼女の周りだけきっとマイナスイオンが発生しているに違いない。年は恐らく同じくらいだ。


「どうも……」


 武瑠が頭を下げると彼女もペコリと頭を下げた。


「ああ、そのお嬢さん。声が出せないそうなので筆談かスマホを使って言葉のやり取りを。耳は聞こえているそうなので、こちらはその必要はなく普通に話せばいいとのことですよ」


 マスターは彼女についてさらっと説明をしながら、高く高く積み上げられたパンケーキをテーブル席にコトリと置く。


 いやいやいや、色んなモノ盛り過ぎだろ。クリーム、アイス、フルーツにチョコレート……その他もろもろ。その横にはデカ盛のパフェ。更にその横には五種類のケーキが乗せられたプレートetc…。


 武瑠が唖然としている間にそれらを運び終えたマスターは「ごゆっくりどうぞ」と言っていつもの定位置に戻った。


 えっ、コレ一人で食べんの……?


 ――と武瑠が思っていると奥からもう一人出てきて彼女と同じテーブルに着く。


 何だ、もう一人いたのか。二人で食べるにしても多すぎるけど。


「吃驚したでしょ? あ、でもコレ僕は食べないからね。ぜーんぶ舞花が食べるから」


 後から来た男が人懐っこい笑みを浮かべながら、武瑠に話し掛けてきた。


 嘘だろ……。というか、こんな甘いものばっかり……胸やけしそう……。


「ふふふ、僕が性質(のうりょく)を使わなくても駄々漏れだね。舞花にも丸聞こえでしょ?」


「…………」


「だよね、だよね! でも、仕方ないんじゃない? このお兄さん自分で気付いてないっぽいし」


 彼女は一言も喋らずにただ黙々と自分の前にあるスイーツを食べているだけだ。なのに、何故か二人の会話は成立している――、ように見える。勿論、食べる手を止めてはいないから、筆談をしている訳でも、スマホを使っている訳でもない。男の話の内容からして俺のことを言っているのは分かるけど。


 ……俺が気付いてないことって何だよ。


「ねぇ、オジサン。このお兄さんいつもこうなの? 駄々漏れ?」


「まぁ、そうですね。大和さんは大体いつもこんな感じです。それより、私のことは“オジサン”ではなく“マスター”とお呼びください」


 有無を言わせぬ笑顔のマスター。


 この人、何の拘りかは分かんないけど、マスターって呼ばない客は出禁にするんだよな。それより、駄々漏れって何だよ? それに、何でマスターも話分かってる感じで答えちゃってるんだよ。


 武瑠の心の中での独り言は止まらない。


「ふーん、そうなんだ。出禁になっちゃうのは嫌だからこれからはちゃんと、“マスター”って呼ぶことにするよ」


「ありがとうございます」


 あれ……? 今、俺出禁のこと口に出して言ってなかったよな。……もしかして、俺の心の声が漏れてる? なーんて、まさかそんな事あるわけ……


「ピーンポーン! だーいせーかーい!」


「はっ!?」


「お兄さんの心の声、笑っちゃうくらい駄々漏れなんだもん。僕が性質(のうりょく)を使うまでもなくね」


「“のうりょく”って、いったい何のことだよ?」


 目の前の男の訳の分からない発言に戸惑う武瑠。それに加えてマスターが何故そんなに冷静なのかも不思議で仕方がない。


「お兄さん、“悟り”と“悟られ”って聞いたことない?」


「は? ないけど、何だよソレ」


 そんなの聞いたこともない。


「そっかー。じゃあ、説明するより体感してもらった方が手っ取り早いかな。舞花、よろしくね」


 舞花と呼ばれた女の子はスイーツを食べる手を止めて、ちらりと目の前の男と武瑠を見た。


(さっきは私の声に反応してくれてありがとう。私達がいた場所からあの子を助けるには少し距離があって間に合いそうになかったから助かった)


 武瑠は目を見開き、彼女を凝視する。


 頭の中で響くこの声は彼女のものなんだろうか。


 彼女は口を動かしてはいなかった。なのに声が聞こえた。


(シロ……、この人固まって動かないんだけど)


 舞花は目の前にいるシロに向かって何とかしろと目で訴えかける。


「ありゃ? ホントだ、固まっちゃってる」


 おーい、大丈夫? とシロに目の前で手を振られ武瑠は我に返った。


「あっ、えっ……と、どういうことなのか俺に分かるように説明してくれ」


 武瑠はシロと呼ばれる男に説明を求めた。



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