Episode4 君影草を君に [事件編] 6
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とある高級マンションを見上げる三人。チャラの妹である心優の事件を調べる為にここを訪れた武瑠、舞花、シロである。
「ここだな……」
「ほぇー、高いねー。何階まであるんだろー」
(首痛くなりそう……)
綾野すみれについて、マユに聞いたら既に調べはついていた。高校を卒業後、直ぐにこの街を彼女は出ている。その後、暫く何処にいたのか詳細は不明。しかし、最近になってまたこの街に戻ってきていた。親が大企業の社長で、恐らくここは親が用意したマンション。定職にも就いていない彼女が、そう簡単に住めるような所ではないからだ。
(ここまで来たのはいいけど、これからどうするの?)
舞花の言う通り、この後どう動くか考えずに取り敢えずここに来ていた三人。
「武瑠、あれ……」
シロが指をさす方向にいたのは、まさに三人が会いに来た人物――綾野すみれだった。
マユから貰っていた高校生の頃のすみれの写真と比べると、少し雰囲気が変わっている気がする。写真の中のすみれは眼鏡をかけ俯きがちで、大人しそうな印象を受けるが、三人の視線の先にいる彼女は眼鏡もかけておらず、顎をつんと上げ、常に微笑みを携えていた。
眼鏡やメイクだけで、こんなにも印象が変わるものなんだろうか……。
メイクなんてしたこともない武瑠やシロには分かるはずもなかった。
黒塗りの高級車から降りてきた彼女は「パパ、ありがとう」と言って小さく手を振りながら、その車が去っていくのを見送っている。
(何だかあの子……、危うい……)
彼女をじっと見つめながら、舞花がぽつりと呟いた。
「どういう意味だ?」
(ん……、上手く言えない)
武瑠がその真意を確かめるも、舞花がはっきりと言うことはなかった。
「取り敢えず、僕が接触してみるよ」
「ああ、頼んだ」
へにゃりと笑ったシロはだぼだぼの袖をフリフリしながら、すみれへと近づいていく。そして、然も不注意で打つかっちゃいましたとでもいうように、思いっきりすみれと接触した。
「うわわ、ごめんなさい! 大丈夫ー?」
一般的に言うイケメンに分類されるシロに顔を覗き込まれて、すみれはぽーっとしたようにシロの顔を見つめる。
「あれ? どこか怪我しちゃったかな?」
然り気無く袖から手を出すシロ。そして、彼女の両肩に手を置き、更に顔を近づけた。
「あっ、いえ……。だ、大丈夫です」
すみれは頬を染めながら慌ててシロから離れる。
(この男性、とっても距離が近い。かっこいい人だわ……ダメダメ、私には菫人がいるもの)
「よかったぁー」
すみれの心を聞きながらも、いつものへにゃりとした表情を浮かべるシロ。武瑠と舞花からすれば、何てことないいつも通りのシロだが慣れていない、特に女性からすれば、きっと母性本能を擽られるような、胸の奥をきゅッと掴まれるような、そんな表情なのだろう。
しかし、二人には分かっていた。明らかにシロは女性好きする笑顔だと分かってて、アレをやっている。
(おー、慣れてんな)
(シロ……、やり過ぎ)
二人の心が聞こえてシロはぺろりと舌を出す。それがまた、すみれの視線を奪っているという事を分かっていながら、それもまた気付かない振りをするシロの腹の中は確実に真っ白ではない。




