Episode4 君影草を君に [事件編] 5
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「それで、マユ君は俺にも犯人を捜すのを手伝ってほしいって」
マユから聞いた話の内容を確認しつつ、武瑠はチャラに「あんたはどうなのか」と問い掛けた。
「はぁ、全く……。余計なお世話だと言いたいところだけど、正直俺達だけじゃ手詰まりなのも事実なんだよね。マユが君ならって思って俺のところに寄越したんだ。マユにそう思わせるだけの何かが君にはあるってことだよね?」
「それは、たぶん……。俺が“悟り”で“悟られ”だから」
「悟りで悟られ……。君には両方の性質が備わってるってこと?」
武瑠はこくりと頷いた。「ふーん、そっか」と言いながらチャラは見極めるように武瑠をじっと見つめる。そして、ふっと肩の力を抜いた。
「まぁ、期待はしないでおくよ」
キラリと耳元のピアスを光らせながら、チャラは笑った。
(性質を使って犯人を捜したりはしなかったの?)
今まで武瑠の横で黙って聞いていた舞花が突然話し始めた。
「おっ、やーっと君の心が聞けた」
チャラは嬉しそうに笑いかけるが、舞花はふいっと顔を背けてしまう。
「勿論、色んな人の心は聞いたよ。それでもなかなか手がかりが見つからなくて。一人……、怪しいと思う奴はいたんだけど、そいつの心は聞けてないんだ」
「怪しいと思う奴って?」
「みゅーの、あ、妹の学校の美術教師だった拝田菫人って奴だ。みゅーは美術部員じゃなかったけど、絵を描くのが好きで教室とか美術室も時々使わせてもらったりして、よく描いていたらしい。兄の俺が言うのもなんだけど、みゅーはとっても絵が上手かったんだ。拝田もみゅーのことは気になっていた筈だってマユが言ってたよ」
腕を組んで片手を顎にやりながら、そう話すチャラ。今まで調べたことを記憶の中から引っ張り出しながら、武瑠達に説明をする。
「あと、もう一人。気になる子がいて」
(女の子?)
「よく分かったね」
舞花の指摘に驚くチャラ。
(あなたが“気になる子”って表現を使ったから。男の人だったら“気になる奴”って言うかなと思って)
確かに、と武瑠も納得をする。
“気になる子”という表現から、自分よりも年下の女の子を指していることが推測できる。チャラなら、同い年若しくは年上の女性に対しては“気になる女性”という表現を使うだろうし、それが男ならば年に関係なく“気になる奴”という表現を使うだろうから。
「その気になる子っていうのは、誰なんだ?」
武瑠は話を進める為にチャラに聞く。
「みゅーと同級生だった女の子なんだけど。名前は綾野すみれちゃん。美術部に所属していた子らしいんだ」
「どうして、その綾野すみれって子が気になるんだ?」
「ああ、この子みゅーのことがあってから暫くは不登校になっていたらしいんだよね。まぁ、普段自分が使っている美術室で人が亡くなっていたんだ。ショックを受けるのも無理はないと思うんだけど。不登校になる前にね、俯きながらどうして、どうして? って言って足早に廊下を歩く彼女の姿をマユが目撃している。それから暫くして学校に来た彼女は、その時の姿が嘘だったかのように落ち着いていて、逆に気味が悪かったってマユも言っていたよ」
武瑠は、マユとチャラから聞いた情報を頭の中で整理していく。
「取り敢えず、まずはその綾野すみれに会う必要がありそうだな」
舞花を迎えに来たシロにも事情を説明し、武瑠達は三人でこの事件について調べることにした。




