Episode3 悟られオジサンの憂鬱 6
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「その癌の診断された本当の神田さんも速やかに入院して、ちゃんとした治療を受けてるって話だよ」
武瑠は目の前にある水を一気に飲み干し、「あー、喋ったら腹減った。マスター何か作ってくれ」とマスターにお願いする。
「まぁ、何はともあれドクター神田にとっては良かったってことだよねー? これからはわざと親父狩りにかかるようなことしなくてもいいわけだし」
シロはへにゃりと笑う。その前では舞花が黙々と特盛スイーツを食べ進めていた。
「それがさぁ……。オッサン、あの後自分が倒したあのハデスとかいう連中に弟子入りさせてくれって頭下げられたらしくてさ。なんかこの辺り一体のそういう奴等を束ね始めちゃってるらしくて」
「ドクター神田はどこに行きたいんだろうね……」
「そんなもん、俺が知るか……」
尋常じゃないくらい強いくせに自分からわざとやられにいくような変人だ。凡人の俺に分かる訳がない。というか、分かりたくもない。
(そのオジサン……、本当に自分が癌だって勘違いしてたのかな?)
モグモグと口を動かしている舞花に武瑠とシロは視線を向ける。
「だからそう言って――」
(その別人の診断書も本物かどうか分からない……)
黙々とスイーツを食べながら、舞花は武瑠の言葉をスパンと遮る。
「舞花、それってドクター神田のホントの目的は武瑠に近づくことで、その為にニセモノの診断書とか娘の件とかをわざわざでっち上げたってことー?」
(まぁ、分からないけど……。そういう可能性もあり得るってこと)
シロの問いに答えながら、ちらりと武瑠を見る舞花。
「そうなると、娘も本当にドクター神田の娘かどうか分かんないねぇ。ハデスって連中とも元々知り合いだったりしてー」
へにゃりと笑いながら、そんなことを言うシロに武瑠は頭を抱えそうになる。
そんな事あってたまるか。何で、俺があんな得体の知れない変なオッサンにターゲットにされなきゃなんないんだよ。目をつけられるような事した覚えもないし、俺に接触する為にわざわざあんな面倒臭いことする訳ない――、と思いたい。
俺あんなに頑張ったのに、全部オッサンの手の平の上で転がされてたのかと思うと虚しくなる。でも、そっちの方が色々としっくり来るんだよなぁ……。
「あー、もうムリ! 考えんの止め!」
何だかやるせなくなって、髪の毛をぐちゃぐちゃに掻き乱し武瑠は考えることを放棄した。
どこまでが本当でどこからが嘘なのか、どれだけ考えても分かる訳ないし、考えたところで、ただただ気持ちの悪いもやもやっとしたモノが残るだけだ。
「舞花もシロも変なこと言うのヤメロよなー。ったく……、はい! もう、この話終わり!」
(武瑠が話し始めたくせに……、文句言われる筋合いなんてない)
「ホントだよねー。僕達はただ武瑠の話をちゃーんと聞いてあげてただけなのにねー」
(それよりも私は、武瑠が何で“ネオン街に三日も連続で行ってたか”の方が気になる)
「確かにー! ねぇねぇ、何で武瑠はネオン街に三日も連続で行ってたのー?」
「お前等になんて誰が教えるか」
白崎姉弟の戯言はスルーすることにして、くるっとカウンターに向き直った武瑠は、目の前に出てきた特盛カレーライスに目を輝かせながら、いただきますと手を合わせるのだった。
【Episode3 悟られオジサンの憂鬱・・・おわり】
・・・But this story is not over yet.




