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Episode3 悟られオジサンの憂鬱 3




「オッサンさ、対策は他の方法でいくらでも何とかなるんだし、わざと親父狩りの被害者になるとか……、そういう物騒なのはやめた方がいいんじゃない?」


「お、お金の心配なら……、大丈夫、です」


「そういうことじゃなくて!」


 どこかズレている発想の神田に武瑠は全力でツッコむ。


「娘さんも奥さんも毎日のようにオッサンが怪我して帰ってきたら心配するでしょーが!」


「そ、そうです、よね……」


 神田はネクタイを少し緩めると「実は……」とぽつりと呟く。


「なに? まだ何か事情があんの?」


「わ、私の娘……高校生なんですけどね。その……、最近あまり……柄の良くない連中と関わって、いるようで……。この辺の連中だということまでは、分かったんですけど……。でも、その若者達が……どこの誰なのか、まではよく分からなくて……」


「本当の目的はそっちか」


「はい……。あ、いや、でも……精神を鍛えたかったのも、本当で……。どうせ、もうすぐ死ぬんですし……、娘の為なら、私の体はどうなってもいいかと……」


「それで、柄の悪そうな連中にわざと自分から絡まれるように仕組んで情報収集していたと? 娘さんをそいつ等から引き離す為に」


「引き離す、と言いますか……その若者達が娘を傷付けるような人達でなければ、それでいいんです。見た目がどうとか、私は言うつもりはありませんので。ただ、本当に悪い人達だったら……と思うと心配で……。こんな、頼り無い父親ですが……、娘には傷付いて、ほしくはないので……」


 発想はぶっ飛んでるけど、要は娘を心配しての行動ってことね。


「事情は分かったよ。だけど、わざと金をチラつかせて親父狩りを誘発するのはもうヤメロ。そんなんじゃ、オッサンの身が持たねぇよ」


「はい……」


 しょんぼりと頭を垂れる神田に武瑠は溜め息を吐く。


「その代わり、俺が協力してやるよ」


「えっ、いいんですか……?」


 肩を落としていた神田は顔を上げ、期待を込めた目で武瑠を見る。


「三日連続で会ったのも何かの縁だと思うしな。なぁ、オッサンの娘の写真とかないの?」


「あ、あります! 妻が送ってくれた写真がーー」


 神田はスマホの中にある娘の写真を武瑠に見せた。


「ふーん、この子ね」


「もしかして、知って……、るんですか?」


「いや、俺は見たことないけど。柄の悪い連中が発生しやすい場所なら幾つか心当たりがある」


「教えて下さい!」


 突然肩を掴まれ驚く武瑠。結構、力が強い。おどおどしてても、父親は父親か。娘が心配で前のめりになっている。


「ちょ、ちょっと落ち着けってオッサン。娘が心配なのは分かるけど、まずは俺が調べてみるから。見つけたら必ずオッサンに教える。だから、な?」


 また突拍子もない行動に出かねない神田をどーどー、と言いながら落ち着かせる武瑠。


「す、すみません……」


 武瑠は神田と連絡先を交換し、娘の写真を送ってもらってその日はその場で解散した。




 後日、武瑠は夜に若者が溜まりやすい場所に赴き、神田の娘を探していた。心当たりのある場所を手当たり次第に回っていく。


「ねぇ、この子知ってる?」と写真を見せながら聞き込みを繰り返していた。そして、あるグループから有力な情報を得た。


「あ、オレこの子見たことあるよ! ほら、何かこの間さ()()()の連中に絡まれてた子じゃない?」


「あー、本当だ。オレも見たよ。この子()()()の奴等と一緒にいた!」


「ハデスって……あのハデス? 主に地下を根城にしてるっていう不良グループの?」


 武瑠が確認すると情報をくれた二人はうんうんと頷いた。


 俺も名前くらいは聞いたことあるけど……。どういうグループなのかまでは詳しく知らない。


「あいつ等色んなところで喧嘩おっ始めちゃうし、けっこう気性が荒いっていうか、危ないって聞くけど……」


「うん、あんまり良い噂は聞かないよな」


「そっか……。分かった、ありがとう」


 オッサン……、あんたの娘ホントに危ない奴等に絡まれちゃってるかもしれないよ……。


 思ったよりも面倒くさくなりそうなこの件に、武瑠は頭を抱えたくなった。



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