Episode3 悟られオジサンの憂鬱 1
ここは古びた喫茶店。カウンターには大和武瑠、そしてテーブル席には白崎姉弟、といつもの面々が顔を揃えている。
「なんかさー、俺この間変なオッサンに会ったんだよなぁ」
大盛りのペペロンチーノを前にしながら武瑠は誰に言うでもなく、話し始めた。
◆
ある日の夜、武瑠はネオン街を歩いていた。
そこで一人の中年男が数人の若者達と共に明かりの少ない脇道へと入っていくのを目にする。
……穏やかじゃねーなぁ。
気は進まなかったが、見てしまったからには無視出来ない。
武瑠はこっそりとバレないようにその連中の後ろを付いて行くことにした。
思った通り、中年男は若者達に蹴られ殴られ金を巻き上げられている。
あーあ。やっぱり……。親父狩りじゃねーか……。
武瑠は物陰に身を隠しながら、こっそりと溜め息を吐いた。
相手は三人。それくらいなら、俺でも相手出来るか? ――とも考えたが、出来れば痛いのは避けたい。
武瑠は、良くある手法の中でも一番手っ取り早い方法を選んだ。
「お巡りさーん! こっちです、こっち! 彼処で物騒なことやってるから早く来てくださーい!」
すぅーっと吸い込んだ息を吐き出して思いっきり叫ぶと、若者達は慌てて逃げていった。武瑠は若者達が去って行ったのを確認してから、ボロボロな姿で地面に沈んでいる中年男に近づいて行く。
「オッサーン、大丈夫? かなり派手にやられちゃったみたいだけど」
「あっ、いやあ、たっ、助かりましたっ。ありが、とうっ……」
(ど、どうしよう……。この若者も、もしかしたら俺から金を巻き上げる気じゃないだろうかっ。助けた報酬として金寄越せとか言われたらどうしよう……。痛いことされる前に自分から渡した方がいいかな……)
中年男はかなり、きょどっている。
まぁ、親父狩りに遭った後だ。さっきの奴等と同じ年くらいの俺を見て怖がるのも無理はない。……にしても、心漏れすぎ。このオッサン悟られなのか?
武瑠が呆れながら中年男を見ていると、
「あっ、あの……コレ……お、お礼です」
そう言ってお札を差し出される。
「いや、要らないよ。俺そんなつもりで助けたわけじゃないし」
「で、でも……」
恐る恐る中年男は武瑠を見上げる。
気ィ、弱すぎじゃね?
何だか分からないが、気の毒なほどにその中年男はオドオドしている。
「ほら、立てるか?」
武瑠が手を差し伸べると中年男はそれを掴んでよっこらせ、と立ち上がった。
……あれ、以外と。
男の手は思っていた以上にゴツかった。
「あっ、ありがとうございました。あの……私はこれで失礼しますっ……」
「気を付けて帰れよー」
いそいそと去っていく中年男の背中を見送りながら武瑠はひらひらと手を振った。




