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Skill Build Online ~変態スナイパーによるMMORPG挑戦記~  作者: 立華凪
Hello World!

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#312 いざ50階層へ


虚空の閃弓(ゼロ・フラックス)】耐久度1000/1000 レアリティ:(レジェンダリー) 分類:弓


かつて失われた技術によって製造された、魔法の弓。その構造は既存の鍛造技術から逸脱しており、『武器である』と認識する事で弓の形を為す。その美しいフォルムから繰り出される矢は、放たれた瞬間に眩い光を放ちながら敵を穿つ。また、魔力を込める事で幾重にも矢が分裂し、標的に逃げる場所すら与えない。


残光は多くを語らない。ただ確かに、軌跡だけがそこにあったという証を残す。

瞬きをするな──世界が暗闇に閉ざされた時、結果は既に定まっている。


栄光の一閃(グロリアスショット)】【ルミナス・レイン】【通常攻撃に光エネルギー付与】


STR+120 AGI+40 必要STR50 VIT40


――――――――――


――――――――――


白凍の聖剣(フリギアス)】耐久度1000/1000 レアリティ:(レジェンダリー) 分類:剣


かつて失われた技術によって製造された、魔法の剣。ノエラ氷原に聳え立つ樹齢千年を越える氷晶樹と、純白の銀を鍛え合わせた刀身を持つ聖剣。冷気を宿した鋼は鍛造の最中ですら火を拒み、槌を振るう度に氷の音を響かせたという。

軽く振るうだけでも大気中の水分を凍らせ、地に突き立てれば一帯を白く染め上げる程の強力な冷気を纏っている。


その剣に熱はない。銀閃が走る度、無垢なる裁きを下す。

静謐纏う白き氷刃は穢れを払い、その身に宿る業を断つ。


氷葬ノ裁フリーズ・ジャッジメント】【通常攻撃に強凍結エネルギー付与】


STR+120 AGI+20 INT+20 必要STR60 VIT30


――――――――――


――――――――――


【透視のお守り】耐久度200/200 レアリティ:(エピック) 分類:アクセサリー


かつて失われた技術によって製造された、魔法のアクセサリー。これを身に着けるだけで目に映らない罠や敵が視界に映るようになる。


――――――――――


 その他にも色々なアイテムを手に入れたが、特に効果が目立っていたのはこの三つだ。

 厨二にも手に入れたアイテムを一緒に見せていたが、【白凍の聖剣(フリギアス)】を見た瞬間、目を輝かせて。


「この剣、ボクが貰っても良い?」


「だよな、言うと思ったわ。ほい、やるよ」


「やりぃ、流石村人クン!」


 なんかフレーバーテキストと言い、何となく厨二が好きそうな気配がしていたからな。

 どうせ俺はもう一つ手に入れたレアリティ(レジェンダリー)の弓装備を使うつもりだったし、厨二に渡しても問題無いだろう。

 ほくほく顔で受け取った厨二は、何度か試し振りしてみせ、地面が凍結しているのを見て感嘆の息を漏らす。うおっ、近くにかざされただけで寒っ!! 夏場には丁度良いけど!!


「所で村人クン、腹減らずのお守りが壊れたって言っていたけど、食料は拾えたのかい?」


「残念ながら。だから一人はこっちのお守りを着ける事になるかな」


 そう言って【透視のお守り】を持ち上げる。【腹減らずのお守り】とまで行かずとも、かなり強力な効果を秘めているアクセサリーだ。まだ透明状態の敵は出てきていないが、説明文を見る限り今後の階層で出てくる事を示唆しているのだろう。まだ出て来ずとも、罠が視えるというアドバンテージはかなり大きい。


「それなら、ボクが【腹減らずのお守り】を着けてようかなぁ。動き回るボクの方が空腹値の減少が大きいしねぇ。君に罠の位置を共有してもらいながら進んでいこうかぁ」


「了解、じゃあ代わりに食料くれ」


「良いよぉ」


 そう言って厨二から食料を受け取り、すぐに食べて空腹値を回復させる。


「一応戦闘を避けて進めばボス戦まで持つか?」


「だねぇ、君が上の層で大暴れしてくれたお陰でレベルは十分だし、ガンガン進んじゃおっか」


 装備品を操作して【赤雀(せきじゃく)】を解雇し、代わりに【虚空の閃弓(ゼロ・フラックス)】を装備する。黒い靄のような不定形だった物が、装備した途端弓のフォルムへと変わっていく。


「なんだいそれ、滅茶苦茶良いじゃないか」


「確かに厨二チックで良いかもしれないけど、流石にさっきの剣あげたんだから我慢しろ」


「ちぇー、まあ今度自力で拾うから良いさぁ」


 と言いつつ流石の厨二も俺から最適装備を取り上げるつもりは無いのか、唇を尖らせつつも歩き出す。

 【罠視えのお守り】を装備し、厨二の歩く先を見て「あ」と声を漏らす。


「厨二、三歩先落とし穴」


「あっぶないねぇ!?」


 俺の声掛けでギリギリ踏みとどまった厨二が後ろへ飛び退く。

 厨二がこちらへ振り返り、じとっとした目を向ける。


「絶対君、わざと遅らせて忠告したよね?」


「厨二じゃあるまいし、反射神経テストをこの階層でやるつもりはねぇよ」


 やれやれと両手を広げてため息を漏らす。

 でも、もう一秒装備するのが遅れてたら今度は厨二が落とし穴に放り込まれる所だった。もう一度分断されるのだけは避けたいし、ここから先は慎重に進んでいこう。


 その後、44階層で一気にレベルも上げていた事もあり、俺達は50階層までの道のりを苦戦する事無く進む事が出来たのだった。





「さて、遂に50階か……」


 50階層へと続く階段の前で、俺と厨二は互いのアイテムをトレードし合い、最後のボス戦へと臨もうとしていた。


「流石に50階層のボスは情報何もないよな?」


「多分僕らが最速だねえ、まあ、【腹減らずのお守り】が二つも手に入る豪運があったりなんだりでかなり上振れてるからねぇ、中々他プレイヤーには真似出来ないだろうね」


 念の為確認しといたが、やはり何も情報無しか。だよな、と頷きつつ装備の消耗状況を見る。

 手に入れたばかりの武器はほぼ消耗しておらず、このボス戦の間はかなり雑に扱っても大丈夫だろう。

 問題の空腹値は、50階層で戦闘している間は大丈夫そうだ。時間的にも50階層で撤退になるだろうし、その先の事は考えなくても良いだろう。最悪、厨二から【腹減らずのお守り】を借りて先に進めばいい。


「じゃあ、準備が出来たら行くぞ」


「了解ー。ま、結構いい時間になってきてるしサクサクッとやっちゃおっか」


 これから激戦が予想される50階層だと言うのに、厨二は終始リラックスした様子で笑っている。

 一緒に戦う仲間として頼りになるなと思いつつ、階段を下っていく。

 緊張のせいか、階段を下りる時間がやけに長く感じながらも、俺達はその部屋へと足を踏み入れた。


「……ここが、50階層……」


「なんというか、()()()()ネ」


 上下左右が白一色の部屋。辛うじて縦横の線が入っているぐらいで、それ以外は何もない無骨な部屋。

 まるで【双壁】戦第6フェーズの、アルバート戦を想起させる部屋だった。

 ゾッとする程の静けさを感じながら、一向にボスが現れない事に眉を顰める。


「もしかして、またPVPか?」


「そうだったら大分楽なんだけどねぇ。流石に節目の階層はPVPは無いんじゃないかなあ」


 それもそうか。50階層に降りる瞬間だけ他プレイヤー達と合わせて降りればボス戦を省略して楽出来るズルが出来るだろうしな。まあ、ここまでやってくるだけの技量を持ったプレイヤーだ。それなりの腕前があるだろうし、片方しか生き残れないからそう言う抜け道があっても面白いかもしれないが、初見は流石にモンスターと戦いたい。

 その時、部屋の中心に何かの台が地面から浮き上がってきた。


「なんだこれ?」


 台に近寄り、まじまじと観察していると、目の前にウインドウが表示される。


────


≪上位区画立ち入り許可申請を行いますか?≫


≪Yes≫≪No≫

 

────


 思わず厨二と顔を見合わせるが、Yes以外の選択肢は考えられない。

 Yesに触れると、台の方に手の模様が浮かび上がる。


「ここに手を当てろってか?」


「そうみたいだねえ」


 なんか急にファンタジーからSFチックになってきたな、と思いつつ手を押し当てる。

 すると、上方から無機質な音声が聞こえてきた。


『上位区画立ち入り許可申請を受理しました』


「うおっ!?」


 急に機械音声染みた声が聞こえてきた事に驚き、肩を震わせる。厨二が俺の様子を見て笑ったので、肘で小突いてやる。


『これより、上級住民IDカード発行手続きテストを開始します』


 上級住民IDカードだぁ……? 俺達が手に入れた住民IDカードの上位版って事か?


「なんでわざわざそんなもんを?」


「もしかしたら、51階層以降の階層に入るにはそのカードが無いと行けないのかねえ」


「なるほど、でもそれってつまり……」


 もしかして、50階層踏破ボーナスの一つだけアイテム持ち込み許可って、そのカードで枠が埋まるんじゃね?

 いやまあ、クリスタライズを持ち込んでロストした時のデメリットがデカすぎるからその上級住民IDカードで良かったと思うべきなのか……。うーん、ちょっと悲しい。

 俺達がそんな事をぼんやりと考えているのを余所に、機械音声は言葉を続ける。


『申請者のパーソナルを参照…………参照完了。挑戦者のパーソナルから、()()()()()()()()()を割り当てます』


 は? 俺達が苦手な相手?

 もしかして──50階層のボスって、固定の相手じゃないのか?


 無機質な音声は続けて、相対する怪物の名前を告げた。


『試験官の名は──【迷宮の牛闘士ミノス・グラディエーター】』


 その名が告げられた直後。


 上空から、鎧を纏う筋骨隆々な牛の怪物が姿を現し、地面へと勢いよく着地した。

 その捻じれた双角は天へと鋭く向けられており、殺意が宿る真っ赤な眼光がこちらを射止めた。


『ヴモォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』


「「ッッ!!」」


 【迷宮の牛闘士ミノス・グラディエーター】と名付けられたモンスターが咆哮を上げると、周囲の大気は振動し、視界に映る物全てがブレる。

 その牛が放つ圧倒的な存在感が、俺と厨二に冷や汗をかかせる。

 間違いない──こいつは、今まで戦ってきたモンスターの中でもかなり上位に食い込む敵モンスターだ。


『試験を開始します。それでは、ご武運を』


 機械音声はそれきり静かになり、【迷宮の牛闘士ミノス・グラディエーター】が待ってましたとばかりに体勢を低くする。

 次の瞬間、ミチミチミチと脚の筋肉が膨れ上がり、【迷宮の牛闘士ミノス・グラディエーター】はクラウチングスタートの体勢でこちらに頭部を向けた。


「厨二、来るぞ……!」


「ぐッ!?」


 構えろ、と言おうとした直後、【迷宮の牛闘士ミノス・グラディエーター】の身体が突進体勢で俺の真横を駆け抜けた。

 流石の厨二もこの初速は想像していなかったらしく、なすすべも無くその身体が思い切り後方へと撥ね飛ばされた。


「厨二ッ!?」


 一拍遅れて、吹き飛ばされた厨二が壁に激突する音が周囲に響き渡る。

 出鱈目な速度の突進。牛に轢かれた厨二は一瞬にしてHPバーが真っ赤に染まりはしたものの、辛うじて生にしがみついていた。


『ヴモォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』


 【迷宮の牛闘士ミノス・グラディエーター】の歓喜の咆哮が、全身を叩き付けるようにして放たれる。

 その様子を見て、口角を引き攣らせながら呟く。


「これが、50階層のボス……!! 簡単に倒させてはくれなさそうだな……!!」


 NPCの最高到達点。前人未到の階層ボスは、その脅威を俺達に対して一瞬の内に知らしめた。


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