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Skill Build Online ~変態スナイパーによるMMORPG挑戦記~  作者: 立華凪
Hello World!

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#304 住民IDカードの検証


「住民IDカード?」


 なんでこんなアイテムがよりにもよってヤドカリからドロップするんだ? もしや3000年前の人類がこの迷宮に挑んだ時にこのヤドカリに捕食されでもしたのだろうか。

 いや、そもそもこの迷宮は3000年前から存在する迷宮なのか? この迷宮が出来た経歴が分からない以上、何もかもが推測の域を出ないが──。


「今の所はフレーバー的な要素なのかねぇ」


「一応アイテムとして調べられるみたいだな。確認してみよう」


 手に入れた住民IDカードに触れると、ウインドウが表示される。


――――――――――


【住民IDカード】レアリティ:(エピック) 分類:アイテム


3000年前、【アガレスの大穴】が■■■■■■■■■■と呼ばれていた頃に用いられていた住民用IDカード。これを用いる事で■■■■■■■を可能としていたが、当時の■■は見る影も無く、今となっては■■■■■■■用の道具としてしか使い道が存在しない。


――――――――――


「駄目だ、黒塗りばかりでなーんも分からん。レアリティ程の価値もあるのかも分からんな」


「でも見た感じ何かしらには使えるっぽいよねぇ、コレ」


 黒塗りの部分を推測するに【アガレスの大穴】には元々別名が存在していて、そこで用いられていた道具のようだが……。


「住民……住民ね」


 こんな魔物達の巣窟に対し、住民なんて単語はあまりにも場違い過ぎる。

 探索してきたからこそ分かるが、とてもじゃないが人の住める環境じゃない。11階層に存在した補給所のような内装であれば人が住んでいたとしてもおかしくは無いが、それ以外の階層は人類に対して牙を剥きすぎている。

 もしやこの迷宮は本来魔物達の楽園で、人間並みの知性を持った魔物達が住んでいたのか……? それで魔物達がこのIDカードを用いて生活していたとか……。


(……ん、そういや住民って単語どっかで聞き覚えあると思ったら……)


 あの全身殺人機械(キリングマシーン)野郎……家事使用人(ハウスキーパー)と初めて遭遇した時に、なんか俺達の事をスキャンして『()()登録外』って言ってたな……。

 逆に住民に対してはどういう反応をするんだ? 何かしら特別な反応をしたり……。


「村人クン、悪い顔してるねぇ」


「えっ」


「言っとくけど、今回の挑戦は攻略だからねぇ? 気になるアイテムを手に入れたからって変な検証はしないでよぉ?」


「ぐっ、わ、分かってるよ」


 畜生、見透かされてる。ちょこーっと家事使用人(ハウスキーパー)を呼び出して検証したいだけだったんだけど……まあ、ソロならともかく、デュオだし、検証はまたの機会にするか……。





「厨二、先に18階層に降りといてくれないか?」


「……どうしてだい?」


「いや、特に理由は無いんだけど」


 前言撤回! やっぱ気になるわ! レッツ検証!!

 こんなもやもやを抱えたまま探索を続けるのは以ての外だ。常に思考の片隅でこのことがチラつき続ける方がむしろ探索に支障を来すからな。無いなら無い、あるならあるで情報を得ていた方が、今後の探索に対して良い方向に傾く可能性もあるしな!(暴論)

 俺の無理のある提案に対し、厨二は呆れたようにため息を吐いた後。


「まぁ、あのカードが次いつ手に入るか分からないしねぇ。後続妨害にもなるし、まあ利点の方が大きいか……。その代わり、ちゃんと情報を持って帰ってきてよぉ?」


「やったぜ!!」


 よーしお許しが出た! これで遠慮なく検証ができるぜ……!!

 ガッツポーズをしていると、厨二が近くの壁に寄りかかってあくびをする。


「その代わり、僕もここに残るよぉ。一応階段前だし、他プレイヤーが来たら一人で対処するのめんどくさいでしょお?」


「む、確かに」


 落とし穴系の罠でも踏まない限り、この【アガレスの大穴】というコンテンツは階段を下らない限り次の階層に行くことが出来ない。つまり、俺達と同様にこの迷宮に挑んでいるプレイヤー達の終着点は基本的にこの階段に到達する訳で、ここで待っていればほぼ確実に接敵する事になる。

 それ読みで厨二が残ってくれるのは非常にありがたい。このまま検証だけしてたら他プレイヤーからしたら俺の存在は格好の獲物だしな。


 そうして、階段の前で待つ事10分程。

 厨二の懸念通りやってきた他パーティを撃退した後、厨二がぽつりと呟く。


「お、空気が変わったね」


 風が吹く、と表現したら良いのだろうか。何やら妙に感覚が研ぎ澄まされ、ひやりとした感覚を覚える瞬間があり、それこそが家事使用人(ハウスキーパー)の出現の予兆。

 そして、次の瞬間。


 ガジャゴン!!!


 もはや馴染み深くなりつつある、あの巨大な物体が投下された音が周囲に響き渡る。

 出現位置は……視認出来る距離、大体300m程先か。滅茶苦茶近い位置に投下されたな!?


「厨二は先に階段降りててくれ」


「了解、死なないようにねぇ」


「大丈夫。階段近くだし、そう簡単に死にやしないさ」


 あれ? 自分で言っててなんだけど、これもしかして死亡フラグでは?

 厨二が颯爽と階段を駆け下りていくのを見届けてから、こちらへと急接近してくる家事使用人(ハウスキーパー)に視線を向ける。

 そして、懐から住民IDカードを取り出し、家事使用人(ハウスキーパー)に対してかざしてみる。


(さあ、どうなる?)


 俺の事をガン無視して一瞬で殺されるような展開は無い……だろう。きっと何かしらの反応はあるだろうとは俺の勘が囁いている。

 こちらを視認した家事使用人(ハウスキーパー)の頭部のセンサーが赤く瞬いていたが、住民IDカードを視界に収めた途端、センサーの色が黄色に変わった。


(……お?)


 速度が次第に緩やかになり、黄色のセンサーがこちらをまじまじと眺め始める。

 やがてセンサーの色が穏やかな緑色に変わり、回転刃で作られた手をこちらに上げた。


『識別完了。E-45棟398号室アベル・トランド様、コンバンハ』


「え? あ、はい、こんばんは」


『コノ区域ハ現在、厳戒態勢区域ニ指定サレテオリマス。至急部屋ニ戻リ、外出ヲオ控エ下サイ』


「は、はい」


 びっくりした、なんかめっちゃ友好的に接してきたぞ。アベル何某氏がどんな人物なのかは分からないが、恐らくこのIDカードの元の持ち主なのだろう。何かしら反応はあるだろうとは思ったけど、まさかここまで露骨に反応が変わるとは思わなかった。

 折角会話ができるみたいなのだ、もうちょっと情報を持って帰ろう。


「嫌だ、と言ったら?」


『ソノ場合ハ緊急時保護法案第7条ニ則リ、敵対生命体ト判断シクリーニングサセテ頂キマス』


 ぶっ殺す(クリーニング)ってか。旧時代にここに住んでいたらしい住民達はなんでこんなヤバい奴を作ってたんだよ。

 あ、やばいセンサーの色が黄色になった。赤になったら間違いなくまた襲い掛かってくるのだろう。


「……分かった、部屋に戻るよ」


『ゴ理解頂ケタヨウデ何ヨリデス! デハ、私は定期巡回ヲ再開シマス。良イ一日ヲ!』


 そのまま、家事使用人(ハウスキーパー)はここから立ち去り、他のプレイヤーを探しに行き始める。

 その後ろ姿をぼんやりと見送った後、住民IDカードに視線を向け、半笑いになる。



「これ、もしかして【腹減らずのお守り】クラスのやべーアイテムでは?」


感想、評価等いつもありがとうございます。

返信しちゃうとかなり長くなってしまうので出来てないですが全てありがたく読ませて頂いております。


――――――――――


【住民IDカード】レアリティ:(エピック) 分類:アイテム


3000年前、【アガレスの大穴】が■■■■■■■■■■と呼ばれていた頃に用いられていた住民用IDカード。これを用いる事で■■■■■■■を可能としていたが、当時の■■は見る影も無く、今となっては家事使用人(ハウスキーパー)避け用の道具としてしか使い道が存在しない。


――――――――――

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― 新着の感想 ―
時間制限キリングマシーンから一回だけ逃げ出せるとかやばいですね……しかしこれはつまりハウスキーパーと同じあたりに住む誰かがいたというわけで……
やばくね? 一定の戦闘回避できるってことでしょ? ダンジョンアタック系だったら絶対ほしいやーつ
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