反逆の兆し
真昼時。日も通さない暗い個室。そこにある机を挟んで二人の男が会話をしていた。
「どうだ、集まりそうか。」
「兵士3000、資金80万フェール、魔物100匹。」
因みにここ、デュナンゲルの平均年収は3万フェールほどである。
「国警団の動きは。」
「今のところ気づかれている様子はない。」
尋ねた男は軽く息を吐く。
「そうか、これでやっと夢が叶う。」
男は笑みを溢す。
「作戦通り遂行する。」
そう言うと男たちは胸に拳を当てて宣する。
「俺たちの明日のために。」
真昼時。柔らかく注ぎ込む南の太陽。木刀を振る青少年らの掛け声。秀はその一角に位置ずいていた。今日は実践訓練も休みであるため指揮官のフィーネは居らず、振られる木刀は4本だけだった。ここ広場には他にも似たような集団がいくつか見当たる。誰も彼も立派な軍人になるために鍛練を怠れないのである。
「エイ、ヤー」
秀はすでに限界であったが周りに悟られないように木刀を振るう。ただ額からこぼれる汗は止まることを知らなかった。
真昼時。豪華な屋敷の中庭にお茶を飲む少女が一人。普段の出で立ちとはとって変わって上品な淑女のような様子である。辺りの静寂さはカップを置くときのカチャンという音を引き立てる。
「御呼びでしょうか、フィーネお嬢様。」
休暇を満喫していた少女、フィーネのそばで一人の従者が話しかける。
「ええ、少し話し相手になってくれればと。」
「かしこまりました。ところでなんの話をしましょうか。」
話の主題はフィーネの仕事、軍隊の指揮についてのことであった。とくに仲間を助けられなかった自分の無力さ、無能さは何度話しても気が晴れないほどにフィーネの心を蝕んでいる。何度も何度も後悔の渦に巻き込まれる。そんなときにこうやって話すことはフィーネの苦悩の対抗手段であった。フィーネが信頼しているこの従者はしばしばフィーネの話し相手を務める。機密の多い軍で働くフィーネにとってこの従者は数少ない愚痴の溢し相手である。
しかしその光景は二人の友人がお茶会に興じているように見えるのである。実際に二人は幼馴染みであり、このような光景も休みがあるごとに見られるのである。今回も結構会話が弾んでいた。
夕暮れ時。夕焼けに包まれた広場には3000余りの人が集った。その人影の中の少し高い所で一人の男が音頭をとる。
「ここに集いし数多の猛者よ。今まで苦難に服し未来を渇望してきた者たちよ。今これからは我らの時代である。自ら道を開き明日を掴め。私たちは歴史に名を刻む勇者となる。進め、我らの道を進め。
我らの未来のために。」
後拝読有り難うございました。
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