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ファイナル リベルズ  作者: KD
始まりは底辺から
2/19

静寂の教室

秀が異世界召喚されてから数日後、秀は寮舎の粗末な布団の上にいた。こうなった経緯を手短に説明すると、


あの後、少女に自分の身に起こったことをそのまま説明する、


説明後、とてつもなく疑問に満ちた目で見られる、


とりあえず生きる糧もなかったので町のギルドまで案内してもらう、


そこで王国軍訓練校を紹介してもらう、


その後訓練校の寮舎で生活、


と言うのが主な経緯である。ちなみにお金は前借り制で訓練で倒した魔物で返済するのが基本らしい。

秀も例に漏れず恩恵を預かることにした。講義は明日からなので今日は必要なものだけ揃えて、あとは自室で惰眠をむさぼっている。


「いよいよ明日からか……。」


意外にも秀は今入学式前日の心持ちと等しく

「友達が出来るかな。」

「学校はどうだろう。」

とかを思っていたりする。もうすでに日は傾きかけている。今、秀ができること寝ることの他には何もない。何も考えることがないからこそ日本のことが思い出される。


「今……日本はどうなっているんだろう。」


「日本かぁ。懐かしいなぁ」


それは故郷を出て暫くのの若者の望郷にひとしかった。

そしてさらに思考は巡る。

自分以外にも異世界に飛ばされた人がいるのではないか。あの後俺のいなくなった日本はどうなったのか。もしかしたら心配すらされてないのでは。そもそも今この世界が夢なのかも。

言い出せば疑問の無限ループにはまりそうなので考えることを切り上げて眠ることとした。




「今から講義を始める。」


図太く低い男の声で初めての講義が始まった。講義を久しぶりに感じるのは気のせいであろうか。普段講義に全く興味のない秀も今日ばかりは少しばかり興奮していた。秀の記念すべき初の異世界講義である。秀は早速 配られた教科書を開く。そこにはこの世界、デュナンゲル王国の文字、ルーフ文字で書かれた文章がある。秀とて異世界召喚されてからの数日、完全に惰眠をむさぼっていたわけではなくこの国で生きるための基礎となる言語だけは習得しておいたのだった。不思議なことにこの世界で日本語が通じていたことはスルーしておこう。実はデュナンゲル王国の識字率はそこまで高くなく、文字を読めなくても不自然ではないということを後から知ったが、文字の有用性を考えると覚えておいて損はないと自分に言い聞かせたのだった。


文字を覚えた甲斐もあって講義は順調に進んでいった。ちなみに今日のスケジュールは大雑把に言うとこんな感じだ。


午前――講義×4コマ

昼休憩

午後――実技訓練


以上。といった感じである。ついでに言うとむこう一ヶ月は同じように続くらしい。話によると来月からは本格的に指導者のもとで訓練をするらしい。


午前中の講義も終わり昼休憩に入った。秀は立ち上がって伸びをする。周りを見ると足早に教室を出ていくものが数多い。休憩は一時間ほどあるため一度寮に戻っても難なく帰ってこられる。秀は日本での感覚が甚だしく弁当としておにぎり(料理したのは調理実習以来かも。)(そもそもおにぎりは調理したた内に入るのか?)を持ってきている。特に帰って何かする予定があるわけでは無いので秀はおにぎりの包みを開いた。



秀はまだ浅はかだったのだ。郷に入っては郷に従え。弁当という文化が理解できない人々にとって秀は奇妙な異文化の人間という事実だけが刻み込まれてしまったのである。

周囲の視線が秀に集まる。しかし他人のことを気に留めることなど少しの戯れ言に過ぎず、少しの心象だけを残して皆自分の文化へと戻る。


皆が去り静寂に包まれる広い教室。秀の耳に届くのは静かな自然だけであった。

次話の配信は1月1日22時を予定しております。


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