切り札展開
秀の運んだその男は虫の息も良いところだった。この文明でも平時なら治るかも知れないが今はそんな常識が通用するような状況ではない。つまりは運んだは良い者の結局待っている者は死に他なら無かったと言うことだ。その男はそれを悟ってなのか一時はあった元気が今では全くの無気力と化している。
「おれ が……
おれが死んだら……伝え て くれ
おれは幸せだった と……」
「何弱気になっているんですか」
そうは言っている者の秀にも死以外の結末は見えていない。
「で も …… まだ 死にたく ない」
その男は地面に涙を落とすと共にその瞼を永遠に閉じた。
また目の前で人を死なせてしまった。
もうこれでこの世界へと来てから3度目である。
日本でまともに死と向き合ったことのない少年がこの世界で3度も何か生き物の力によってその生を散らしていく様に間近で向き合った。
秀は暫くその場を動けなかった。
しかしそこで唐突に聞き知った声が耳に入った。
「シュウ、状況…は」
自らの目で見る者のため、その光景がまじまじと伝わってくる。
「ご覧の通りです」
秀もそれを察してあえて説明を省く。
「他の二人は」
「すみません、確認している余裕がありませんでした」
「そう……」
少し思い悩んだかのような様子をした後、少女は声を上げた。
「全軍、戦線より撤退」
その声を聞いた後皆の動きが一瞬止まった。
その後動いた者と動かない者否、動けない者に別れた。これは失敗を意識する者と終わりを意識する者の違いであった。
そこへ敵が詰めかける。
「コンプリートヒールズ」
フィーネが最上級回復魔法を一面にかけた。
「走って、陣営まで逃げて」
そこには指揮官というよりも一人の少女が懸命に叫んでいた。
まだ戦える者が時間を稼ぎどんどん人が戻って来る。
「砲台準備」
その声が指揮官のものに戻った。
後ろから王国の切り札と呼ばれる兵器が出てくる。
「総員撤退」
全員が避難したことを確認するとそのトリガーを引く。
「発射」
その掛け声と共に目の前が何も無い空虚な交換へと化した。
後拝読有り難うございました。次話の更新は3月18日22時です。




