戦場と会議室
地獄と距離を少し置いたところに会話があった。
「現在王国兵は残り500ほどです」
耳に痛い報告が届く。
「どうしますか、あれを解放しますか」
「いや、まだ早い」
「そうだ、あんな奴らごときに切り札を使ってどうする」
「何をいっているんだ。ここで使わねばさらに被害が甚大になるぞ」
「使いどころを逃すと取り返しがつかなくなるぞ」
「王国の存続が第一」
「でもここで使ってしまったら只でさえ数の少ない軍隊に加え、切り札もないなんて王国は丸裸だぞ」
「そうだ、あれを持っておけば他の輩への抑止力にもなるぞ」
永遠と終点も焦点もないような会話を私は聞かされている。あそこで班のメンバーと共に行動していたらこの時間に果たして何人救えただろうか。
そもそもこの会議に私の発言権など無いも同然である。今回は現王国軍隊長の父、ファラウスの代わりにナイトベル家代表として会議に出ている。ここで若い私が発言しても恐らく誰も取り合ってくれないだろう。戯れ言と切り捨てられるのが定石だ。
フィーネは今「戦争は王宮で起きているんじゃない。戦場で起きているんだ。」と言いたい気分だった。
「フィーネ殿、どう思われますか」
「そうですね……被害を最小に抑えることを最優先に考えるべきだと思います」
「では、あれを解放した方が良いと」
「はい……」
因みに「あれ」とは王国の最終兵器、濃縮魔力防弾である。名前の通り今まで溜めてきた魔力を一気に放出するもので一度使ってしまうと暫くは使えない。よってこの話題は結構重要であったりする。
一方、今のフィーネの立場は王国軍隊長の代理、隊長はその名の通り軍のトップでこの決断でも重要な人間だ。しかしその隊長は今王都を離れている。そのためこの重要なところにフィーネがいるのである。
つまりはこの決定の責任をとる人が必要だったのである。
フィーネはこの形骸的な役職に縛られていた。
一方こちら戦場稲原秀。
依然戦場は地獄絵図であった。
「6班が壊滅状態、支援要請」
「負傷者多発、救援要請」
人手は必要になっていくが人は減るばかり。
「シュウ、怪我人の救助に向かうぞ」
班員の一人、コンセスからの声。
「了解」
秀はそう叫んで戦場へと駆けていった。
会議室、フィーネの意見により取り敢えず"使う"という方向で決定した。いまさっきそれに向けて何人かは動き出した。
フィーネも急いで戦場へと駆ける。ひたすらに走りに走り、見た絵は赤の地獄であった。
戦場最前線、稲原秀。
ここに容赦とかそういった言葉はない。
誰も彼も地面に倒れ伏している人は酷く傷を負っていた。
「大丈夫ですか」
まだ助かりそうな、かろうじて息のある一人に声をかける。
ヴィーダとコンセルも同じように声を駆け、担いで運ぼうとしている。
この上のない危険地帯から少しでも安全な場所へと運び出す。まだ十分には戦えない彼らにとって出来る最大のことであった。
「たす け て 」
背中から呻き声のような声が聞こえる。
「大丈夫です」
秀はただただそう答えるしか無かった。
只でさえ訓練後疲れている状態でさらに体に鞭を打ってその彼を運ぶ。後ろからは弓と敵の声が聞こえる。秀はただ振り返る事もなく進んだ。後ろからは数数多の声が聞こえる。
しかしそれが敵の声か見方の声かを聞き分けるほどの余裕など無かった。
ただただ自分が生き残ることだけを考えて己の道を進んだ。
後拝読有り難うございました。
次話の更新は3月11日22時です。




