真夏の夢
初めて短編を書いてみます。
良かったら、読んでみてください。
ぐうたら鈴奈の一日なので、話も結構ぐうたらに進みます。
ちなみにこのお話はあたしの夢を元にしてかかれています。もちろん夢とまるっきり同じではなくちゃんと(?)美化しましたので〜(笑
わたしは、そう、わたしは・・・
あんな奴気にならないって
思っていたのに・・・・
あの時、気晴らしに海に行ったのが間違いでした。
わたしは、独りぼっちでした。
何時でも何処でも誰にも馴染めなくって。
そんな自分が嫌になることはなかったんだけれど・・・。
そのとき、沖では魚を網で取っている真っ最中でした。
「おう、珍しいね、鈴ちゃん!」
鈴って言うのはわたしのこと。
本名は鈴奈だけれど、漁業をしているわたしのお父さんの友達はそう呼びます。
そのとき声をかけてきたのは松原って言うおじさんで、わたしと特に仲良くなってくれた人。
「はい!ちょっと気分を変えに来ました!」
「そうかい!リフレッシュか。いいねぇ!鈴ちゃんも少し遊んで行ったら?」
「いえー」
丁重にお断りして、会話を終わりにし、海の家のほうに行きました。
「鈴ちゃん!久しぶりだねぇ!今日はフライドポテトがうまく揚がったんだ。食べていかない?」
「は」
売店のおばさん。
「・・・・む」
いつものように混雑している海の家の中、いつもあいているはずのわたしの特等席が、3人の男女に取られています。
「な・・・」
あたしはどうすることもできずに、そこに立っていました。
そうしたら、、大柄の肌の焼けた男性にぶつかられてしまいました。
「ってぇな!!」
「?あっ!すっ、すみませんっ」
「んー?あれ?姉ちゃん、可愛いじゃん。一緒に遊んでかない?」
・・・ナンパ?
「い、いえ・・・わたしは」
「いいじゃ〜ん。一緒に遊ぼうよ〜」
しつこい。
「いえ・・・」
と。
急に片手をつかまれた。
「は?」
「すみませ〜ん!この子僕の連れなんで〜!!」
見ると横には見たこともない男の子が。
「ッんだよ〜・・彼氏持ちかよ!先に言え!」
勝手にキレて行っちゃいました。
「孤独・・・」
「ねえねえ君!」
「え?あ!」
肩を叩くはあたしをナンパから救ってくれた男の子。
「あの・・?」
「ここはこういうのよく出るから、気をつけたほうが良いよ!」
・・・知ってます。恐らくあなた以上に。
「はい・・・」
「それはそうと・・僕らとお茶してかない?」
ナンパ再び!!!
「いえ・・」
といおうと思ったら、よく考えてみればその子、わたしの特等席取った張本人なんですねー。
となれば、断るわけにも行かず。え?どうしてかって?だって負けるの嫌じゃないですか?
「はい・・・」
OKしちゃいました。
「やった!僕、リュウ!長内龍って言うんだ!」
「幼い竜・・・?」
「・・・。とにかく、おいで?」
「はい・・・」
強制連行されました。
いえ、いいんですけどね?別に・・・
あのグループの方たちは、みんな個性の強い方ばかりでした。
端にいる女の子。
水夜 有還ちゃんって言うんです。はい、水羊羹ちゃんですね・・・
可愛いんだけど、何故かしゃべり声が大阪弁なんです。
「よろしくな、リンナ!!」
早速呼び捨てにされちゃいました。
それから、中心に座ってる女の子ですが、良椅佳麗ちゃんです。ライスカレーちゃんです。
しゃべり方は何故かすべて「にゃん」で構成されてます。たまに違うの入ったりしますが大体それ。
「にゃん、にゃん、みゃふ――☆」
みたいな。解読不能です。願わくば日本語でお願いしたい。
その中で長内龍君は、特に変わったところもなく。
強いて言えばわたしを特に気遣ってくれるところとか。
「ラムネいる?」
「カキ氷は?」
「泳ぐ?」
みたいな感じに。
水着を持ちあわせていないわたしは首をぶんぶん横に振りました。
個性派キャラの揃ったこのグループの中で、わたしは一体どうされてしまうのでしょうー?
悪夢はこの一言から始まりました。
「いいじゃん!およごうよ!!」
嗚呼、その一言が今となってはにくいです、龍君。
押しに押されたわたしは龍君に水着を一着進呈していただき、何故か泳ぐこととなってしまいました。
「え、ちょ、まっ・・・!」
海辺育ちなのに泳ぎがそこそこできない(嘘です。全然できません)わたしは全身全霊で反対しました。
でもそんなわたしの儚い思いが通じるはずもなく。
めっさフリフリの白いビキニを買っていただきました。
「わ〜〜〜・・・・(絶)」
「可愛いよ!似合う!」
それは、有り得ない。わたし、フリルやレースの服を着ると、みんなに「似合わないよ」って言われるし。
自分でも自覚あるんです。わたしみたいな地味な子がこんな服に合わないことくらい。
胸だってないのに。
「いや、いやです・・・貧乳のわたしを見ないで・・・」
でも龍君は「似合う」って推すんです、わたしを。
水羊羹ちゃんやライスカレーちゃんのほうが絶対ナイスバディなんですよ?わかりますか?このプレッシャー。
しかも、これで外に出て、海に入るんです。わたし、小さい頃から水は苦手なのに。浮き輪持たないで水に入ったことなんて、一回もないんですよ?
結局わたしは水に入りました。空気袋もなしで。
「わ」
水が肌に触れたとたん、水の恐怖が湧き上がります。
「大丈夫?水怖いの?」
しきりに龍君は気にかけてくれますが、あなたが無理に入らせたんですよという思いで心はいっぱい。
―――いえいえ、いけませんこんなことを考えては。
彼だってわたしのことを考えて言ってくれているのです。
わたしだって期待に沿えるようにがんばらなくてはいけません。
と思って少し深いところまで行ってみたけれど、やはり身体が拒絶するんです。
腰まで水がくると、固まって動けなくなってしまったんですよ。
どうしよう。悩んでいると、ふいにさぁっと身体が上昇しました。
「な・・・?」
後ろを見てみれば、龍君がわたしを姫抱きしていました。
「大丈夫?今体固まってたでしょ。初めは浅いところから、僕とゆっくり行こう」
「あ、は、はい・・・」
何故かそこから、わたしの視線は龍君から動かなくなっていました。
彼がこっちを向いて、目があって微笑まれると心臓が跳ね上がったり、近くに来るだけで正体不明の羞恥に顔が火照ったり。
『わたし、どうかしちゃったんでしょうか・・・』
心の中を小さく早い動悸と共に疑問が駆け巡ります。
でも本当に、どうしたんだろう。
ビーチバレーをしたときも、水慣れのために水に沈んでみたときも、龍君を見るたびに動悸が襲ってくるんです。そして天使が持ってきた悪夢は、あのときに起きたんです。
それは、水羊羹ちゃんとカレーライスちゃん(あれ?ライスカレーだっけ?)が帰ってしまって、わたしと龍君だけが取り残されたあとでした。もう日もだんだんと落ちかけてきて、世界が夕焼けの優しい色に包まれてきていた頃でした。
「ね、リンナ。一緒に見たいものがあるんだけど、良いかな?」
「え、はははははい」
極度の緊張状態に陥っていたわたしはすんごいどもりました。
「じゃ、いこう」
わたしは突然手をつかんだ龍君に引っ張られて、崖の岩場を登ることとなってしまったのでした。
「わ」
足を滑らせでもすれば、彼はぎゅっと抱きとめて、動悸がすごいスピードで・・・
「大丈夫?!しっかり!」
いや、このふらついてるのはあなたのせいなんです。
やっと崖の上に登りきって、「こっち」と龍君が誘うので、行きました。
そこでわたしが見たのは・・・
「わぁ・・・・!!」
沈む夕日とクロームオレンジに染まった蒼い海。
岩の陰から見るにはとても神聖すぎて、綺麗過ぎて、素敵過ぎる景色でした。
「ね、素敵でしょ。これを、君と一緒に見たかったんだ」
龍君はわたしの横で囁いてくれている。
そのとき、わたしの心をよぎった強い影は、ひとつの小さな単語でした・・・
―――――スキ―――――
次の日。
龍君に会いたくてまた海辺に行きました。今日は浮き輪を持って。
「おう、珍しいねぇ、鈴ちゃん!!」
松原さんが声をかけてくれます。
「今日は会いたい人がいるんです」
「いいねぇ。青春だ」
「ばかぁ」
ひとしきりの会話を終わらせたわたしは、あの海の家に行きました。
でも・・・
いつもあいていて昨日だけはふさがっていたわたしの特等席は、また空っぽになってしまっていました。
「え」
一瞬にして、頭が真っ白になりました。
と、そのとき。
「――リンナ――」
声がしました。
よく知っている、ちょっと低めのあの人の声が。
風のようにどこかから流れてきたその声は、わたしの頭を駆け巡り、消えてゆきました。
「龍君ッ?!」
叫びました。
「――リンナ――」
「――リンナ――」
「――リンナ――」
よく知っている二つの声も混ざりだしました。
「何処!?何処なのっ・・・?!」
いろんな人が叫びながら走るわたしをじろじろ見ます。
でも今のわたしにはそれは関係のない出来事なのです。
全然気になんてなりませんでした。
ただ、龍君に会いたい一心で。
声がしていたのは、松原さんのいた浜辺。松原さんは船に乗っていて、今張ってあった網を引っ張りあげようとしているところでした。
「まッ、松原さん!!その網、引き上げるのを待ってください!!」
「およ?どうしたんだい?青春の次は漁に目覚めた?」
「違います!その網、岸に寄せてーッ」
まさかとは思いながらも、わたしは必死でした。
だって今も鳴り響いているこの声は、よほどの耳鳴りでなければこの網の中からしていたのですから。
「龍君!いるの!?いるの!?」
網を引き寄せてしきりに揺らします。
何をしているのかと疑問の目で見る松原さんを気にも留めず。
「リンナ――――・・・ここだよ・・・」
「ッ――!!龍君・・・・・ッ」
「ごめんね・・僕実は半漁人なんだよ・・・昨日はどうしてもずっと前から好きだった君にあいたくて、有還と佳麗を連れて人の姿になった・・・でもうっかりと昼寝していたらこんなことに・・・情けないよね・・・」
そんな・・・!
わたしは予想外の告白に驚いたけれど、今は―――ッ。
「ふ、二人は無事なんですか?!」
「うん。有還は無理やり出ようとして背びれが破れたけど。佳麗は人の姿になって陸に上がってたから無事。誰も死んでないよ」
「!!!だ、ダメですって・・!逃げて!ほら、穴を大きくしますから・・!」
「リンナ。今逃げてももうこれから君とは会えないんだよ・・?半漁人の秘密がばれたから」
それを聞いて、張り裂けるような胸の痛みを覚えました。でも滲みくる涙を振り払って、叫びます。
「それでもいいです!いいから、生きてください!逃げて、生きて!また縁があったら会えます!」
「ちょっと待って、リンナ。一つだけ、伝えたいことが――。」
「逃げて――」
「聞いて。僕、リンナのこと――」
「ほら・・・」
「ずっと好きでいるよ!!!」
わたしはびっくりして龍君を見つめました。
その龍君は今、人型になって水の中から首を出しています。
ふっと、わたしは微笑んでみました。
「・・・わたしもです」
そしてどちらからともなく顔を近づけ、口唇の重なる感触を感じました。
こうして、わたしの1日だけの初恋は幕を閉じたのでした。
終
いかがでしたか?
ぐうたらでごめんなさい。
しかも中途半端な終わり方ですね。
もし人気が出たら続編も書こうと思います。