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いつもの時間に目覚まし時計がなる。結局、朝まで眠れなかった。俺はそっと、部屋を出る。みんなの朝食を作るのは俺の仕事だ。どんな気分だとしても、仕事は疎かにしてはいけない。
リビングのソファーで皐月が寝ていた。何も掛けずに。6月が近づいたとはいえ、夜は冷えただろう。毛布を持って来ようとはして、ふと、足を止めた。ソファーの足元に葉那のスマホが落ちている。昨夜の光景が脳裏をよぎる。俺は皐月を見れなくなり、台所に逃げ込んだ。
台所には、昨日作り、そして、誰も食べなかった夕食がそのまま残っている。これをそのまま朝食にしようか考え、結局、それは止めることにした。昨夜のはるの状態では、食事を摂ることも難しいかもしれない。それなら、少しでも身体に優しい方がいい。朝食は雑炊にすることにし、夕食の予定だったものは、昼に回すことにする。
雑炊が出来上がる頃、葉那は泣き腫らした目でリビングに現れた。唯もあまり寝られなかった様子でリビングに現われる。皐月もいつの間にか起きている。もちろん、あまり寝れた様子ではない。
「はるは起きれるかな」
俺の言葉にまた葉那は泣きそうな顔になる。皐月がそんな葉那の頭を優しく叩いた。
「飯食ったら、様子を見に行こうか」
俺は目を反らすしかなかった。雑炊の入ったお椀をそれぞれの前に置く。
いつもと違い、言葉数の少ない朝食の時間だった。それが終わると、皐月と葉那ははるのところへ行く。俺も雑炊の入ったお椀を持って、それに続いた。もちろん、はるのことが気になるのだろう。唯も一緒だ。
「……はるちゃん……」
葉那の声にはるは目を開ける。そして、葉那に顔を向け、弱々しく笑った。
「……葉那さん……酷い顔……ですよ……」
その頬は赤い。熱があるのだろう。
「……ごめんね……私……ごめんね……」
葉那はベッドに駆け寄り、また泣き出す。
「……葉那さん……無事でよかった……泣かないで……ください……こう見えても……私……丈夫なんですよ……」
布団から手を出し、葉那の頭を撫でる。
「……はる、食えそうか?」
俺もベッドに近づいた。はるの視線が俺に動く。
「……食べます……」
一瞬の間が空いた後、はるがベッドから起き上がろうとする。痛みがあるのだろう。はるは顔をしかめる。すぐに葉那が手を貸した。そして、背もたれになるように、転がっていたクッションを置く。
「……いただきます……」
はるはレンゲを口に運ぶ。その姿を見て、葉那は少し安心した様子だった。
「……葉那さん……ホットタオルで目を温めてきたらどうです?……私はもう、大丈夫ですから」
「……わかった……ちゃんと、食べてね……」
葉那は渋々部屋を出て行く。葉那が部屋から出ると、はるはレンゲを置いた。
「……ごめんなさい……もう、食べれそうにないです……」
葉那の前では強がっていたのだろう。苦しそうだ。そっと皐月が手を貸し、はるは横になる。そして、皐月は救急箱の中から、熱冷ましシートを出し、はるの額に貼り付けたのだった。
「じゃあ、俺もちょっと寝るから」
「は?」
そう言って皐月はベッドの端に、転がる。
「……私……自分の部屋に帰りますよ……」
「いいから」
何がいいのかわからないが、皐月ははるを抱き枕にし、寝る体制になる。そして、すぐに寝息が聞こえ始めた。
「……私……どうしたらいいです……?」
戸惑うはるに俺たちはかける言葉がなかった。




