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しばらくして、ボロボロになったはるの制服を抱えて、葉那が降りてきた。皐月が見せまいとしたはるの姿は、制服がこうだったからか。相変わらず、葉那は泣いている。
「貸してみ」
唯がその制服を受け取る。そして、広げてみた。
「うん。これなら何とかなりそうだから。ちょっと待って」
唯は部屋からソーイングセットを持ってくると、スカートのプリーツを縫いながら整えていく。裁縫は隠れた唯の特技だった。
「これで、洗濯して、乾いたら俺のところに持ってきて。それで、はなちゃんの様子はどう?」
「……さっき、目が覚めて……手当と着替えが終わったら……そのまま……また、寝ちゃった……」
葉那は泣きながらやっとことで、言葉を絞り出す。そして、そんな葉那の前に、コトンと湯気を立てるマグカップが置かれる。
「これでも飲んで落ち着け」
皐月だった。辺りには優しいオレンジの香りが広がる。皐月は俺と唯の前にも同じものを置いた。暖かいオレンジティー。もう、夕食どころではなくなっていた。
「一体、何があったんだよ?」
「……それは……」
葉那の言葉は続かない。泣き声が上がるだけだ。
「……怖い思いをしたんだ。那須は……葉那を巻き添えにしたくなくて、ああなった」
皐月がそんな葉那を代弁するかのように、言葉を選びながら言う。皐月も、それから、唯も詳しいことはわかっていないのだろう。
「……早く寝ろ」
他に言葉がなくて、俺は一気にオレンジティーを飲み、自分の部屋に戻るしかなかった。
喉の渇きを覚え、目が覚めた。水でも飲もうかと、部屋を出る。リビングにはまだ、明かりが付いていた。はるが部屋で寝ている皐月は、行き場所がないのだろう。静かに台所へ向かおうとした時だった。
「………私が……私が逃げなかったら……逃げなかったら……はるちゃんは……怪我しなかった……のに……」
葉那の泣き声が聞こえてくる。俺はそっとリビングを覗いた。
そこには、皐月の胸に顔を埋めて泣く、葉那の姿があった。
皐月の手はポンポンと葉那の背中を叩いている。俺はそのまま目的も忘れ、部屋に戻った。その光景が目に焼き付いて離れない。
「……そっか……」
暗い部屋。俺の呟きが闇に漂う。
「……俺じゃあ、役不足か……」




