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唯が葉那からの連絡を受け、その場に向かった時には、葉那は泣くばかりで、ほとんど何もわからなかった。ただ、悠が大変な状況であること、そこに皐月が向かったということだけはわかった。皐月が向かったのなら大丈夫だろうと、唯は葉那の側にいることにする。こんなに葉那を泣かせたと知ったなら、年上のあの人は烈火のごとく怒るだろう。葉那によく似た顔で怒られるのはかなり怖い。美人を怒らせるのは本当に怖かった。
気を失っている悠を負い、皐月は路地を抜ける。
皐月が駆け付けた時、悠は傷だらけで、制服のボタンも飛んだ下着もあらわな状態で、男たちと対峙していた。もちろん、男たちも無傷ではない。悠に劣らず傷だらけだ。骨が折れているかもしれない者もいる。だからだろうか、男たちは皐月の姿を見止めると、すぐに逃げていった。
「那須っ‼︎」
「……阿南君……葉那さんは……無事……?」
「ああ」
「よか……た……」
悠の体がぐらりと傾く。慌てて皐月は受け止めた。緊張の糸が解けたのだろう。皐月は自分の上着を悠にかけると、悠を負って歩き出した。こんな路地に長居は無用だ。悠の体は小柄な見た目以上に軽かった。こんなに小さな体で、よくも頑張ったと思わずにはいられない。それと同時に、あの男たちを一発も殴れなかったことにイライラした。どうして、こんなにイライラするのか、皐月自身よくわからなかったけれども。
「とりあえず、俺の部屋に連れて行くから。涼、救急箱と濡れたタオルを持ってきてくれ。葉那は那須の着替えを頼む。唯は……とりあえず、来るな」
みなが家に帰ってきたのは電話があってからすぐのことだった。葉那は大泣きをしていて、はるは傷だらけで意識がなく、皐月に背負われている。意識のない女の子の部屋に入るのは気が咎めたのだろう。皐月ははるの体重を感じさせない動きで自分の部屋に入っていった。俺は熱いお湯でタオルを濡らすと、救急箱を抱え、皐月を追いかける。葉那も着替えを持って部屋に入ってきた。
はるは皐月のベッドに寝かされていた。皐月の大きな上着ははるの体を隠すようにかけてある。
「さすがに、これ以上は俺たちがやったらまずいから。葉那、頼むな。下にいるから、終わったら声をかけてくれ」
皐月は葉那に声をかけると、俺の腕を引っ張って部屋を出る。
「手当くらい、俺でもできるけど?」
むしろ、泣いている葉那より役に立つと思った。首をかしげる。
「いや、な……その……」
皐月はバツの悪そうな声を上げた。皐月だけしか知らないはるの何かがあるのだろうか。葉那の泣き声は大きくなるばかりだった。




