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ずっと守りたかった自分だけのお姫様。
でも、彼女の中の自分はちっぽけな存在に過ぎなくて。
そう。例えるなら、シンデレラに出てくるネズミの御者。
ただそこにネズミがいたから、魔法使いはネズミを御者にしたに過ぎない。
ネズミがいなかったら、他のものがなっただろう。
物語にはなくてはならない存在だけれども、他に代用が効く。
そんな悲しい存在。
俺の父親は国際線のパイロットで、母親は同じく国際線のキャビンアテンダント。祖父母は遠方で、だから、俺は幼いころから近所に住む葉那の家によく預けられていた。その頃から、皐月と唯とも一緒だった。俺たち4人の両親は昔からの友人らしい。
その頃は葉那の母親は日本にいて、俺たちは葉那の母親に世話になっていたんだ。
ちなみに、葉那の父親はフォトグラファー。皐月の両親は海外で活躍するピアニストとバイオリニスト。唯の父親は世界的に有名な建築家で、母親も有名なデザイナーだったりする。皐月と唯が海外で生活しなかったのは、二人の両親が帰ってくるのは日本だという考えを持っていたからと、幼い二人が俺たちと離れるのを嫌がったからだという。未だに親たちが集まれば、そのことが話題に上る。
曰く
「悲しかったんだから」
と。
でも、忙しい親たちが集まることなんてほとんどないけれど。
今では、父親が遠方で働くはるも一緒になって、この家に五人で生活している。
正直言って、はるが家に来てくれて本当に助かっている。第一にはるのご飯はおいしい。頭もいいから勉強も捗る。何より、今まで提出のない課題はまったくやらなかった皐月が、どんな課題もやるようになった。本当にはるは天才だ。
葉那は小さい頃、いじめにあっていた。小さい頃から美人で、おとなしくて、本当に物語に出てくるお姫様みたいだった。小さい頃から見目の良かった唯と、人を引き付けるオーラのあった皐月と、それなりにスポーツも勉強もできた俺はみんなから人気があった。そんな人気者だった俺たちといつも一緒だった葉那はやっかみの対象で、また、葉那自身も異性からの人気が高かったことも、いじめの原因だったのかもしれない。葉那がいじめられていたら、すぐに俺がかばったものだからそれに拍車をかける結果となった。だから、葉那には友達と呼べるのが俺たちだけだった。
はるはそんな葉那にできた、初めての同性の友達だった。
はるはけっして美人とは言えないけど、自分を磨いて良く見せる努力している。けして、人を貶めて自分を良く見せようとはしない。そんな人には初めて会った。そして、そんなはるを知った時、はるは俺たちにとっても居心地のいい存在となった。まあ、はるを一番気に入っているのは皐月だけど。




