チートスキルは貰えない
気がつくと俺は真っ白い空間にいた。
目の前にはたっぷりと白い髭を蓄えた爺さんが。
「おぬしは今から異世界へと転移されるのじゃ。」
は?
異世界転移?
てことは、チートとか貰えるのかなっ!
「いや、おぬしにチートを与えることはできない。」
俺、今声に出してなかったよな。
「ワシは神だからの。心を読むくらいのことはできるのじゃ。」
「てか、チート貰えないってホント?」
「召喚される理由より、そっちの方が気になるのかい。」
チートがあるかないかは超重要だからなっ!
「チートを与えることができないのは本当じゃ。
おぬしはついでで、召喚されるからの。」
ついで?
なんの?
「おぬしの妹のついでじゃよ。
ちなみにおぬしの妹は、チートを貰っているぞい。」
マジかよっ……。
「妹も異世界に転移するのに、なんでここにいないんだ?」
「本来はここには来ないのじゃよ。召喚したのはワシじゃなくて、シャルテ王国という国じゃからの。」
「じゃあなんで俺は、ここにいるんだ?」
「ついでで召喚されるおぬしが、少し可哀想になったからじゃよ。
チートと呼ばれるようなスキルは与えることはできないが、せめて普通のスキルを与えてやろうと思っての。」
なんて、優しいんだ。
さっき、女神じゃなくて残念って思っちゃってごめんね。
「えっ、おぬしそんなこと思ってたのっ?
与えるスキルの数一つ減らすとするかの。」
ごめんない!
減らさないでっ!
「仕方ないのう。おぬしに与えられるスキルは三つまでじゃ。」
どんなのでもいいの?
「あまり強すぎるスキルではなければ大丈夫じゃ。」
「鑑定スキルってある?」
「そのスキルならあるぞい。」
「じゃあ一つ目はそれで。
後は、敵を感知できるようなスキルとかある?」
「それなら、探知というスキルがあるぞい。」
「二つ目はそれで。
後は、魔法を使えるようなスキルを一つ。」
「それなら、火、水、土、風の属性なら大丈夫じゃ。」
「じゃあ火で。」
「ではスキルをつけるが、本当にこれでよいかの?」
「そのままで頼む。」
「つけ終わったぞい。ステータスと念じるのじゃ。」
ステータス!
名前 黒木光一
種族 人間
レベル1
HP10 /10
MP6 /6
筋力9
防御力8
敏捷8
魔力6
スキル
【鑑定】
【探知】レベル1
【火魔法】レベル1
称号
ついでで召喚された者。
うわっ、称号についでで召喚された者とかついてる……。
「そういや、なんで俺は召喚されるんだ?」
「今更かいっ!
おぬしが転移する世界は魔王が復活し、魔物の活性化が始まっているのじゃ。
復活した魔王は今、力を蓄えている最中で近いうちに人間を滅ぼしにくるのじゃ。
そこで、王国は勇者を召喚して救って貰おうとしたのじゃよ。」
「なんかその王国、凄い人任せだな。
自分たちで戦えよ。」
「うむ、そうじゃな。おぬしには申し訳ないが、王国の召喚をワシには止めることはできないのじゃ。」
「元の世界には戻れないのか?」
「世界間の移動は一方通行じゃからの。
もう戻ることはできぬよ。
では、そろそろ行ってもらうとするかの。」
「スキル、ありがとな。」
再び俺は光につつまれた。
こうして俺は、いや俺達は異世界に拉致られたのである。