赤いメロンの月
静かな
黒い海の底から
海面を割って
激しく
波を起こすもの
あるいは
激情として
あるいは
劣情として
あるいは
痛哭として
静かな
青い海の底へと
海面より至るもの
海をバウンドさせ
落ち着かない
波を起こすもの
あるいは
悲嘆として
あるいは
後悔として
あるいは
嫌悪として
数限りない
波が打ち寄せる
わたしの足元へも
見知らぬ浜辺へも
重たい闇中に
狂気の月下に
無雲の晴れに
止まぬ驟雨に
誰知らぬ場所でも
衆目の前でも
何時しか
波は眠りを誘う
水平線に
浮かぶのは
完熟の赤いメロンの月
手を伸ばせば
夢の中
冷たく甘く
滴り香るだろう