魔王が一番善人とか(笑)
深夜のテンションでかきました。
設定とかあまあまですし、文章力(笑)って感じですがお許しくださいませ…
目を開けたら異世界だった。なんて小説みたことあったけど、いやぁ自分がされたらほんといらつくもんだね。
なんの承諾もなく異世界召喚され、誘拐犯のくせに偉そうに、
「魔王を倒してこなければ、もとの世界には帰さぬ」
ときた。
そりゃいくら温厚な私でも、いらつきも頂点に達するよね。
自分の世界のことは自分達でなんとかしろっての。できないなら滅べ。それが運命だ。
なんて言ってみるけど、いきりたって話にならない。この国の民でも、そもそもこの世界の住人ですらない私がなんで敬意を払わないといけないのか。いやむしろ、私に助けてもらおうとするんなら私に敬意はらえよ。
王様だけは、余裕そうによそおって
「褒美はなにがよい。金銀財宝か、地位か」
とかきいてくるけど、ほんとなんなのこの豚ばかなの?的はずれにもほとがあるでしょ。
「この世界の金も地位も別にいらないから、さっさと返して。望みはそれだけだから」
この世界のいつのまにか使えてたチートてきな力みせつけて、王宮をかるーく破壊しながらいうけど、
「魔王を倒さねば、帰すことはできない」
の一点張り。
こいつらのために働くのは本気でしゃくだけど、さくっと魔王を倒してもとの世界に帰ることにした。
召喚されてから三日後。
王に連れていけと言われた四人のイケメンをつれて、さっそく出発。目指せっ魔王の城へ。
意気揚々と城を出たのはいいが、なかなか魔王城へたどり着かない。ついでに言えば、道中四人のイケメンに口説かれ、至極めんどくさい。
優しげな金髪碧眼の王子様に、クールな青髪の神官サマ、赤髪の熱血さわやか騎士団長、男だけどうらやましくなるほどエキゾチックな色気を持つ銀髪の魔法使い。乙女ゲーかっての。カラフルすぎて、目がチカチカするわ。
こんなやつらがどこからどうみても平凡な私を好きになるとかありえないだろう。それでのぼせあがるほど、おめでたい頭はしていない。明らかに怪しいし、何かあると思うのが普通だろう。
と、思ってたら案の定…魔物との戦いで、私だけ四人と遠く離れていると、油断したのだろう。四人はついにぼろをだした。
「あれだけの魔物をあんなにも簡単に…」
「おそろしいですね…」
「魔王と相討ちになってくれたらいいんだけどな!」
「きもち、わるい…」
上から順に王子、神官、騎士団長、魔法使いね!とりあえず騎士団長、さわやかな笑顔でいうことかこら。てめぇ、あとで覚えとけよ…。
それからも話は続く。
「万が一、あの女が生き残ったらどうする気だ、王子?」
「あぁ、父上からの密命もある。どうにかして、殺さねばならぬな…皆、苦労をかける。すまないな」
「気にしないでください」
「そうだぜっあんな化け物を国に連れてかえるわけにもいかねぇしな!」
「王子…がんばってる…」
「ははっありがとうおまえたち。がんばろうな!」
なんて、おい。青春ドラマか。話してるの、私の暗殺計画だろうが。被害者は私だぞおまえら。
まぁ私が近くにいないからこそここまで勝手なこと言えるんだろうが。
何せ、あの四人が豆粒大にしか見えないほど距離が離れている。でもほら、私チートだから。そんだけ離れててもズーム機能みたいなの使えちゃってさ!表情までくっきりみえるし、声もはっきりと聞こえちゃうんだよね、これが。いやもう、チートまじやべぇな、としか言い様がない。
何はともあれ、あいつらが私を殺す気でいることはよくわかった。なおさら魔王を倒すのが嫌になるが、そうしないと帰れないのだから仕方がない。あいつらしか道しらないし、私ひとりじゃたどり着けないし、知らないフリしてあげることにした。あぁ、私ってなんて優しいんだろう(笑)
はいはい!ついにたどり着きました魔王城!
ここまで長かった…魔物をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、殴って蹴って…うん、長かった。
イケメン四人のわざとらしいくどき(笑)によって生じるストレスは全て魔物にぶつけてた、といっても過言じゃない。いやほんとありがとう、魔物さん。別名サンドバッグ(笑)
城の中にいる魔物もさくさく倒し、最後の扉をバンっと開ける。
「待っておったぞ、勇者よ」
魔王は玉座に腰掛け、偉そうに私たちを見下ろしていた。
黒髪のオールバックに、血のような赤い目、いかにも悪そうな悪人顔…どうしよう、タイプだ。イケメン四人とは比べようもないほど、タイプだ。まさしく月とすっぽん。もちろん、月が魔王で、すっぽんがあの四人な。
「あ、あの…奥さん、いますか」
「い、いや、まだいないが…」
思わず聞いてしまって後悔したが、困惑しきった魔王の様子が可愛いのでよしとする。
殺さないと帰れないとはいえ、殺しちゃうのは勿体ないなぁ。うーん、もうちょっとだけ…。
「あ、あの…」
「なにしてるんです勇者!はやく魔王を倒しなさい!」
私の言葉を遮ったのは神官サマ。許すまじ!いま、私の顔は鬼の形相だろう。その顔のまま、クソ神官を睨み付ける。クソ神官は、顔を青くしながら口をつぐんだ。
よしっ
満足して魔王の方に向き直る。そして、そっと上目遣いに魔王をのぞきみる。…そこ!きもいとかいうな!いまの私は、乙女モード(笑)なのだ。くそぅ、目覚めよ女子力!!!
魔王はそんな私たち勇者一行(笑)をみてクックックッと悪役らしく笑いだした。
あぁん、その笑いかたも素敵ですぅ。
どうしよう、タイプ過ぎて真剣にやばい。
「勇者よ…」
「な、なんですか?」
あーやっぱ、声もいいわぁ。
「人間どもではなく、我ら魔族につかぬか?人の身でその力は生きにくかろう」
「んーとっても魅力てきなお誘いなんだけど、私、元の世界に帰らないといけないんですよねー」
そう、帰るのだ私は。
「だから。殺したくないけど、あなたを殺さなきゃいけないんです。せっかく私の好みそのまま具現化したんじゃね?ってくらいタイプなのに残念なんですけど」
「タ、タイプ…」
照れてるとこもすってっきー!
魔王は咳払いし、今度は不思議そうな顔で聞いてくる。
「もしやお主…きいてはおらぬのか」
「え、なにを?」
「帰ることなど、不可能だ」
「え」
思わず口をポカンとあけてしまう。
「嘘です!耳をかしてはなりません!」
後ろで響いた声に四人の方を振り返ると、四人とも、明らかにあせっていた。
「そ、そうだ!騙されるな!」
「魔王のいうこと…信じる価値、ない」
「勇者、魔王を倒せば、必ずや帰してやる!」
うん、なんともあやしい。 とりあえず、この四人は余計なことをしないように動けないようにしておくことにして、魔王に向き直る。
「魔王様、本当ですか」
「ああ、本当だ。勇者よ、お前の力は元の世界でも使えていたか」
「いいえ、この世界にきてからです」
それを聞いた魔王が少し顔色を変えて玉座から下りてきた。
「すまない、少し触れるぞ」
労るような優しい言葉とともに、そっと私の手を握った。
「そうか、やはりお前は…」
「人とは、なんと残酷なものよ…」
魔王はそこでいったん言葉を切って、沈痛な表情をして、手を離す。
いったいどういうことなのか、
「はっきり、言ってください」
じっと魔王を見つめる。魔王はひとつ息をついて、また話始めた。
「勇者よ」
「はい」
「お前はもう、死んでおる」
は?何を言ってるんだろう。私は生きている。私はいま。こうやって息をしているじゃないか。魔王のいってることがわからない。わかりたく、ない。
「正確に言えば、人としてのお前が、死んでおるのだ」
「人としての…?」
「そうだ、召喚された時点でおまえは殺され、再結成されたのであろう。でなければ、人にその力はありえぬ。人がそれだけの力を持てば必ずや、肉体が滅ぶ」
「そんな……」
「精神の方も、少しはおかしいと思わなかったか?魔物とはいえ、生き物を平気で殺していただろう。おまえの記憶を読んだが、本来のおまえであれば、そんなことはできなかったはずだ」
たしかにそうだ……どうして私は違和感を覚えなかったのだろう。あんな平和な世界で生きてきて、グロいのとか大の苦手な私が、命を奪って、平静を保てるはずないのに。
思わず俯いてしまう私に魔王は続ける。
「もともとこの世界は、来ることはできても、出ることは叶わぬ。おまえがなにをいわれてここに来たのか…おおよそ予想はつくが、この者たちにおまえを元の世界に帰すことなどできぬよ。それどころか、私を殺したあとでおまえのことも殺すつもりだったのではないか?」
「魔王様…ふふ、さすがですね。実際それ話あってたの、聞いちゃいましたから本当ですよ」
ふふっと魔王に笑いかけて、ぱちんと指をならし、四人を動けるようにする。
「声は聞こえてたよね?私、帰れないらしいけど、どういうことなのかな、説明してくれる?」
「ゆ、勇者よ…」
私を殺す計画、ばれてないと思ってたんだろう。
あきらかに動揺している。
「もう一度きこうか、私は、帰れないの?」
「か、帰せる!」
「ふーん、どうやって?」
「そ、それは…」
「具体的な方法、教えてよ」
「……」
「答えられないんだ、やっぱり本当なんだね」
私は…帰れないのか。とどめをさされた気分だ。
落ち込む私に魔王が優しく声をかけてくる。
「勇者よ、おまえ、我のものにならぬか。そ、その、な。正直、一目惚れなのだ」
でかい図体した男が照れながらもじもじしている。他の男がやったのなら、気持ちわるいで終わりなんだけど。むしろぶちのめすけど、魔王のはいい。可愛い。うん、私が許す。でも、我のもの、我のものかぁ……
「いやです」
「そ、そうか、すまぬ。忘れてくれ」
しょぼんと俯く魔王、可愛い。
「魔王様の奥さんにしてくれなきゃ、いやです」
「ゆ、勇者!」
うつむいていた顔がばっとあげられ、うるんだ目を向けられる。私がそれに微笑むと、魔王がこちらに腕を広げて近寄ってきた。
子犬か、子犬なのか。よしよし、めでてやろう。ちこうよれ、なんつって。
「おい!勇者!」
あ、四人のこと忘れてた。
「もうなんなの」
「まぢでなんなの」
「お前らいったいなんなの」
「私と魔王様の愛の1ページ邪魔するとかほんとなんなの」
「何様なの」
一言吐き出すたびに、一歩ずつ近づいていく。
怯えた眼で私を見る四人の男。殺気を出し続けているからか、身動きがとれないらしい。逃げることもしない。できない。
「さよなら、誘拐犯ども」
四人が知覚することもできないほどすばやく首を落とす。そうして四人の首をもって、私は愛しい魔王様へにこりと微笑むのだった。
「魔王様、これ、支度金がわりです。幸せにしてくださいね!」
そして、あれから三年もたたずにこの世界の人間は全て滅びるのだった。滅ぼしたのは、ほとんど私と魔王様なんだけどね!二人の愛の共同作業ってやつなのよ!うふふふふ!
「どうかしたのか?」
「んー幸せだなぁって」
「そうか、我もだ。お前に出会えてよかった」
二人で笑いあう。きっとこんな毎日がずっと続くんだろう。魔王も私も魔力が多すぎて、この世界じゃ不老不死当然だし。命尽きるそのときまで末永くよろしくねっ旦那さま!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!