ヒロインになるらしいです。
「会いたかった!わたしのヒロイン!」
そんな風にいった彼女は、会ったその日から私の大切な存在になった。
明るくて、何故か私に優しく甘くて、契約精霊としては異例な能力を持ち、意外に博識な面もあり、なのに言うことも行動も突拍子もなくて、飽きないのだ。
もともとは果物や食物・小物や鍛治・薬剤の材料や魔石等を扱う、冒険者ギルドと提携した商家としてはやや大きい、でもただの商家だったウチで
彼女は来た次の日から、“スイーツ”“B級グルメ”“美容道具”“基礎家電”“圧縮キャンプセット”創りから始まって、2年で喫茶店や食堂のチェーン店経営やらその権利獲得。魔石を利用したあらたな道具のレシピ著作権等を我が商家が持つまでに成長させてくれた。
急ぎすぎる発展は、まるでそのあとに来る事を知っていたかのようで…
彼女が来て2年後に。商家を切り盛りしていた私の両親がなくなった。
私の両親は、元から患っていた病で長くはないといわれていた。
私を身籠っていたときに夫婦二人で新婚旅行をしてる際に、この世界で数回目になる災害『魔力の氾濫』にあったのだ。
『魔力の氾濫』は、世界にあふれる魔力を魔力操作の神様が押さえきれなくなったときにおこり、1000年から500年くらいでおこる天災だ。
溢れた強すぎる魔力で魔物は強くなりあふれでて、魔力にあてられた生き物は抵抗力を得るか、『魔力病』となり最悪魔物化する。
両親がいたのは 、今回の魔力漏れ地区のすぐそばだった。
最悪の魔物化こそしなかったが身の内の魔力はみだれて限界になり、代わりのように母のお腹のなかの私は魔力と魔力操作の耐性をもったらしい。
全属性の魔法を扱えるのも、その耐性のおかげといえる。
魔力操作の神様は、そのとき世界にあふれた魔力を再操作する事で余力がなく、両親を完全に治療することはできないため、両親に身のうちに溜まる魔力を逃がすアイテムを与え、少しでも延命できるようにして転移でかの地から逃し、私をこの世に生まれるようにしてくれた。
12年も生き延びたのは、災害地にいた者とはおもえないくらいだったし、魔力を身のうちから逃がすアイテムを利用して魔石を造り始めたくらい両親は商魂たくましい商人夫婦で、わたしの憧れでもある。
両親がなくなって、わたしより悲しんだのは彼女だった。
「あの運命の○○神サマめ!いくら予定調和とはいっても実際げんじつとして見ると許せないー!
ヒロインははじめから幸せでもイーじゃんか!オニ!けち!○○神!!」
そう叫んだ彼女の頭に金だらいが沢山落ちたのをみたら、わたしの悲しみもやわらいだけど。
彼女がいてくれてよかった。
私が幸せになるのが運命だという、優しくて、妹のような、わたしにとっての残った家族。クロコ。
商家は両親についてきてくれていた者達と、親族にある程度の権利をもたせて引き継ぎをして
一人娘の私ミリアム・ハーネストは、名をそのままにすることを条件に、功績を称えて保護の意もかねて形ばかりの地方貴族の養女となった。
それから3年。
ミリアムと契約精霊の功績を小国・大国も認めはじめたため、ミリアムはミリアム・ハーネストとして、子爵令嬢となったのだった。
その知識と技術をいかしてほしいと、大国にある過去に大精霊と王が創ったとされる貴族や優秀な人材を育成・教育するための学園研究都市にきてほしいと言われたのが数日前。
大国の王様の希望なため、子爵令嬢になったミリアムは断れない。
「このための爵位だったのよね、たぶん。」
と平民あがりなんですけどー普通の女の子なんですけどー、と、、ミリアムは思う。
不安はいっぱいだけど、きっとこれからの学園生活も楽しめるだろう。だって彼女がいてくれるから。
「これからが本編ですよ!お嬢様!
大丈夫です!予定調和らしいですけど、ぜったいわたしが幸せにしてみせますからねっヒロインを!!?」びしっ!
あいかわらずの不思議発言と謎のきめポーズでもりあがる、わたしの契約精霊は。
ミリアム「だから、いつも思うけどヒロインってなんなの?クロコ?」
やっぱりわけがわからないのだ。