アクロスと魔道具。
ホウエイ先生に「秘密ですよ」といわれましたが、
ことがことなだけに、当然クラス以外の周りの方にいえるわけがありません。
『要石』がいずれ来るべき日に大事なことは確かです。
なので私もクロコももちろん一緒に研究開発のお仲間にいれていただくことになりました。
『魔力の氾濫』については、色々おもうことはありますが…
ひとまず。
『要石』の魔力吸収時間の短縮、考えるのをがんばりますっ!
…とはいえ、そうすぐに思い付くわけもないので、今はアクロスくんが他に研究する魔道具をみせてもらっています。
研究仲間になったこともあり、アクロスさんは先程、この間失礼な態度をとって悪かったとあやまってくださいました。
先日、ホウエイ先生に「あとで謝りなさい」といわれてましたものね?もちろん私は(一応クロコも)謝罪を受け入れましたし、むしろこれから研究仲間として宜しくお願いしますと、挨拶しました。
これからはクラス以外でもアクロスくんとお仲間ですね!
…でもアクロスくん、仲間になっても口調を変える気はないので慣れてくれ、とのことでした。毒舌は性分なので、なおせないそうです。
さて、アクロスくんの研究する魔道具、とは言っても、最近はクロコ印の携帯や、電化製品などを量産するのに忙しくて、彼の本来の研究が進んでいないとのことなので…
「お前の魔道具を解析・量産するぞ。手伝え、そして解説しろチビ眼鏡。」
「どこから目線ですかコラ?」
クロコ印製品の量産をおわらせて、本来の事ができるように協力することになりました。
秘密基地から出て、元の研究室に来ています。
行方不明だった複製機も無事に見つかったので、まだ魔道具が行き渡っていない各地に配るために、他の機関にまかせられない魔道具(家電)の量産と調整をするのだそうです。
ちなみにホウエイ先生は秘密基地で今日は一日、魔石に魔力の補充をするのだそうで、別行動です。
「元々の魔道具も複製機も、創ったのはチビ眼鏡だろう。
だったら本人がせっかくいるんだ、やれ。作りまくれ。とっとと終わらせるぞ。機関に渡せず残っている魔道具は4つだ。
……あとハーネスト、君には別に、あらためて頼みたいことがある。」
アクロスくんはそう言いながら、手のひら位の透明な空の魔石と何かの魔道具をとりだし、みせてきました。横ではクロコの大ブーイングですが、全く気にしていないようですね?
クロコ頑張って!
『テレビ』と『洗濯機』と『冷蔵庫』と『掃除機』。これが世界に広まれば、いつでも皆さん快適に暮らせますからね?
(……………それこそメイドが沢山いらないくらいに。便利ですよね?家電。)
ブースカ文句を言いながらもちゃんと手を動かすのがクロコです。
「こうなったら性能バージョンアップしちゃる!!」と意気込んでますね?
任せておいて大丈夫なようです。
…なので、私はアクロスくんの説明を聞く事に集中します。
「この魔石とそれを使った魔道具が、僕の本来の研究対象になる。
実はこれについては期待した機能についてはほぼ完成で、あとは実際に使えるようにするだけなんだが…。」
まだ未完成の品でしょうか?手渡してこられますが、触っていいのですか?
「こちらは何に使うものなのですか?」
言いながら手にもつ魔石は、まったく魔力を貯めていない小さな『要石』ですね?
はめ込む魔道具は、浄化と…調整の陣が中心にあって、他にも多数の仕組みがくみこまれてそうですね?複雑すぎて直ぐにはわかりませんが。
「これは……『魔力の氾濫』によって『魔力病』にかかった生き物の治療のために使う魔道具で、まだ試作段階だ。
生き物の溢れたり乱れたりした魔力をすいとって、整える魔道具で、中に組み込んで使うものは『要石』の縮小版だな。
それで君に頼みたいのは…」
言葉と視線を迷わせながら、アクロスさんは
「僕のこの魔道具を完成させるために…君の両親が生前に使っていた、『神にもらった道具』、…それをできたら譲ってもらうか、無理ならせめて見せてもらいたいんだ。」
そういうと、深く頭を下げたのでした。
「頼む!…君の両親の形見になる大切な品だとは解っているが、
ホウエイ先生が言う以上は、本当に次の『魔力の氾濫』が近いというのは確かなんだ!だからなるべく早く『魔力病』の対応策を完成させたい!」
よほど思い詰めていたものがあるのか、アクロスくんは必死に訴えてきます。
「君の両親が12年も延命できた神の道具なら、参考にすれば生き物に負荷をかけずに魔力吸収ができるはず…。
このまま『要石』の縮小版をつかった魔道具では、魔力自体の吸収と調整はできても肝心な生き物の本体に負荷がかかりすぎて実装できないんだ…
だから頼む!道具を僕にゆずってくれ!」
アクロスくんの声が、部屋にひびきました。
「よいですよ。お譲りします。」
答えましたが、一瞬わからなかったようです。
「…そうだよな、さすがに…………………って、良いのか?!」
アクロスくんに、びっくりされました。
ええ、もちろんよいですよ?再度答えると、ようやく了承の意志が伝わったようです。
「しかし、頼んだ僕が言うのもなんだが、道具は両親の形見だろう?
……本当に良いのか?」
なんだか、とても気を使ってくださっているようですが、大丈夫ですよ?
むしろ両親が今いたなら、「役に立つならどんどんつかって!何なら量産して売りましょう!」と、複製機が存在する今なら言ったでしょうね…
私の両親は、亡くなるその時まで立派に『商人』として生きました。
商魂たくましくて、なおかつ世の役に立つための商品を提供することに生き甲斐をもっていた二人は、今でも私の自慢であり、憧れです。
私も何故か今では「子爵令嬢」なんて肩書きがついてますが、自分では今でも立派な「商人の娘」だとおもってますからね。
…アクロスくんが遠慮をされるのであれば、「商人」として話をすすめてみましょうか?
「私にとっての『形見』は道具でなく、両親の考え方そのものなんです。
ですから、この道具をアクロスくんにゆずるのはかまいません。
その代わり…」
アクロスくんの目をみてお話します。
「完成した魔道具については、完成協力にハーネストの名前もいれて広めてもらうことを、譲渡の条件にさせていただきますよ?
あ、もちろん魔道具の売買で得る利益も、相談のうえでハーネスト名義で幾分かいれていただきますから。後日、契約を宜しくお願いしますね?」
相談しましょう!
そうつたえると、
ポカーンとしながら話を聞いていた彼は、次第に笑みをうかべました。
「は…………ハハハハッ!
なるほど、たしかに君には遠慮しないて頼んでも大丈夫そうだな…。
正直、研究者としても、僕自信としても、とても助かるよ。」
ため息をついて、安堵の表情をみせます。
「てっきり形見をわたせ、なんていったら、子爵令嬢なんて泣いて拒否されるとばかり思っていた。まさか、『形見』を『商品』として売り込むとはおもわなかったな。
…きみは確かに『商人の娘』だな?ミリアム・ハーネスト。
強くてしぶとい、商人の娘だ…。」
そうわらって、アクロスくんは私の名前をよんでくれます。
それ、誉めてくださってますよね?…ありがとうございます。両親の商人魂をうけついでいますからね?私。
商人は、明るく前向きに物事をとらえて、商売のために突き進んでいくものだと自負しています。
「ふふっ…ええ、私は『商人の娘』ですから、泣いたりせずにご協力しますよ?
それに、たしかに両親はもうおりませんが、わたしには手のかかる妹分のメイドが、いつもそばにいますから。
…………寂しくもなければ、かなしむ暇もないんですよ?」
そうアクロスくんに告げたとき、
キュイイイイーーーンッ!!ズゴゴゴゴッ!!っと、いきなりすごい音が研究室いっぱいに響き渡りました。
何事かと音の方をみると…
「ふおおぉおーーーー?!!」っと声をあげながらクロコが何かから逃げようと、こちらになかば必死に飛んでいますね?飛んでいるはずなのに、何故か空中にとまって浮いてるだけにみえますが…。
「何をやっている、チビ眼鏡!!」
アクロスさんに怒鳴られたクロコですが…
「なぁーんですかぁー??悪人の注文通りに、さっさと!迅速に!今は『掃除機』を量産して一気に調整してるんでしょーがっ!
よりハイパワーにしたら、ちと失敗☆したんですよーーっだ!!」
ふおおぉお~!すーいこまれそーぅっ!負けんぞーっ!
何か一大事かとおもえば、
…叫んでいるだけで元気ですね。むしろ楽しげにしていて大丈夫そうです。
「クロコ?遊んでいないで、真面目にやってくださいね?
家電魔道具の量産が済んだら、こちらの道具も複製機にかけますから、頑張って終わらせてくださいな?」
ふがーっと叫んで?いるクロコに声をかけます。
「うーわぁお嬢様ったら、安定のマイペースっぷり!…キライじゃないですがっ。ちょーっとはメイドをいたわってくださいなーって!
ご両人?見てないで掃除機のスイッチ切ってください!スイッチ!!」
ギャースカわめきながら、本当に元気なうちのメイド(クロコ)です。
「……たしかに、ミリアムの言うとおり、悲しむ暇もなさそうだな。」
僕も昔に囚われずに、頑張るか…
そういって微笑むアクロスくんの笑顔は、初対面から見てきた、どこかニヒルなものとちがい、なんだか柔らかな笑顔でした。
なんだか何かふっきれましたか?
聴くよりも先に、とりあえず私達は騒ぐメイドを静かにさせるために、沢山の掃除機のスイッチを切りに、いきました。
話の中にはたぶん出しませんが、
アクロスも両親や身近な人を『魔力病』で亡くしています。
…乙女ゲームでいうなら「アクロス・ルート」に入ったら語られる話題ですね?
このものがたりは、「単独ルート」にはいらない「総合ルート」の提供でお送りする予定です………。
よていです。




