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秘密基地での、ひみつな発明。

「来たかチビ眼鏡。」

「来てやりましたですよ。悪人。」


…朝からいきなりケンカ腰ですみません。

目の前でクロコとアクロスくんが、ただいま眼力合戦中です。


本日は、アクロスくんと、魔道具作成などについて談義する予定だったのですが……。

違うものが始まってしまいましたね?


アクロスさんの研究・実験室は別枠クラスの地下がメインとのことなので、クロコと二人でおじゃましています。

ちなみに今日は…


「おやおや~、喧嘩するほど仲がよいですねぇ。…ほどほどにするんですよ~?」


ホウエイ先生もいっしょです。

なんでも、クロコ印の魔道具の複製が軌道にのったので、そちらは他の機関にまかせて、アクロスくんとホウエイ先生は、二人で元々研究を進めていた『魔石の瞬間大量作成』について今日から再始動するのだそうです。


…私とクロコがお邪魔しても大丈夫なのでしょうか??



「じつはですねー、私とアクロスくんとで魔石の魔力蓄積の許容量を増やすことは上手くいっているのですが…魔力吸収・蓄積のスピードを上げる事がなかなか上手くいかないのですよ~。」


見ていただきたいものがありますので、こちらに来てくださいな。とホウエイ先生に案内され、まだ言い合うクロコとアクロスくんも一緒に、奥の扉を開けて細い通路の階段を降りていきます。


「なんだか秘密基地みたいですね?」


やや薄暗い階段のさきには、また扉がみえます。

こちらはあけるのには(じん)で認証判定も必要のようで、先生が陣を解いてくださいました。


「ええ、まさに秘密の実験室ですねぇ。

ここでの実験については、完成するまでは学園長と別枠クラス外に秘密にしていますから…。」

ですから、ミリアムさん達も、不用意に話してはダメですよー?

秘密にしていただかないと、…おしおきですからね?

人差し指を口にあてながら、扉に手をかけて、ホウエイ先生はニコリと微笑まれてます…。


「「………………はいっ!」」


クロコと返事をすると、はい、良いこですねー。と、扉をゆっくり開けながら、今度はふわりと微笑みました。……絶対に秘密ですね。


ポソポソ

「…もしもし、悪人よ。」

「なんだよチビ眼鏡。」

「ホウエイ先生は、あれですか?二重に人格がおありですか?だいぶオンオフがありますな?ちなみに秘密をもらしたら我々どうなります?」

「…先生は、静かにお怒りになるからな。…とにかく秘密なものは秘密にしろ。本気でお怒りになると…どうなるかはわからないぞ。」


後ろで二人がささやきあってます。ケンカはおわりですか?


「アクロスくんー?」

「はいっ!何でしょうか先生?」

「例の魔石について、お二人に説明してあげてください?」

「解りましたっ。」

シタッ!とアクロスくんは部屋の中に入っていきます。


…ホウエイ先生、振り返らずにお話されてますね?





※※※※※※※※※※


秘密基地のなかに入ると、そこは大きな卵形の部屋になっていました。

壁には沢山の防御・魔防の結界陣。

そして地下とは思えないくらいに白く輝く、数メートル大の巨大な魔石が部屋の中央にあり、さらにその周りに色とりどりの30センチほどの沢山の魔石が台座にかざられていました。


「部屋の中央の魔石が『要石(かなめいし)』と呼んでるものだ。」

魔石には、まださわるなよ?

説明しながらアクロスくんは中央の魔石へ近付き、側にあるいくつかの陣を展開させます。

周りの魔石から中央の魔石へと、多属性の魔力が流れ、吸いとられていくのがわかります。


「周りの魔石は、それぞれの属性の魔力を込めたもので、『要石』が多種の魔力をとりこめるようにしている。

これは『要石』が『高純度の純粋な魔力』も問題なく取り込めるようにするためで、今のところその吸収に問題ないところまで完成しているんだ。」


…さらりと説明していますが、普通の魔石はだいたい多くて2つか3つの属性や魔法を込めるのが精一杯といわれていました。それ以上は魔石が壊れてしまうからなんです。

単属性の魔石の大きさも、周りにある30センチ位が強度の限界といわれてましたね?


「だいぶ改良をした魔石のようですねー?

全属性の吸収と大容量。それでもって、足りないのは吸収スピードでしたっけ?今くらいなら問題ない気がするのですが??」

ふんふん?とクロコが『要石』を見ながらアクロスくんに聞きます。


「今のままだと、すぐに吸収が停滞するんだ…。」

見てみろ、と促されて再び『要石』をみれば、いまは吸収しきれない分の魔力が『要石』のまわりに渦巻いてたまってきていました。


「全属性の吸収と容量拡大は、魔石の(かく)に特殊な陣を(ほどこ)すことで、やっとできるようになったんだ。

ただ、吸収速度まで陣に組み込むと、魔石じたいが壊れてしまってな…事情があって完成を急いでいるんだが…

正直、俺と先生とでは、これ以上の魔石の改良に行き詰まっているんだ…。」


アクロスくんは悔しそうに。

ホウエイ先生は苦笑しながら魔石をみて、さらに私とクロコを見ます。


「そこで、色々と不思議な魔道具を世に出しているおふたりに、『要石』をみていただいて、考えをうかがってみようかとおもいましてねー?」

なにか別の角度からアイディア、ないですかねー?と聞かれました。


…ずいぶんと、無茶ぶりですね先生。

お二人のような研究者が苦労されてつくられたものに、ぱっと出の私達のアイディアなんて助けになりますかね?……難しいです。


「完成された巨大な魔石に、吸収速度をあげさせる方法…ですか。」

ちょっとクロコと考えてみます。


「魔石が成長するようにして、成長時に使う分の魔力で吸収力を上げるのはどうですー?」

「もう試した。成長させることで暴発し易くなったから、ボツだ。」

「暴発予防に成長制限をつけても、ですか?」

「成長制限をかけると、全属性が吸収できなくなって吸収にムラができるようになりましてねー…陣の相性がよくないみたいなんですよー?」


・全属性を吸収できること(高純度の純粋な魔力吸収のため)。

・吸収速度が速いこと。

・吸収したあとも安定性が高いこと。

・吸収容量はできるだけ多くすること、もしくは量産し易い魔石であること。


こちらが『要石(かなめいし)』に求める条件なのだそうです。

これだけの条件を、いそいで、ですか…。


それを聞いてふと、この魔石をお二人が何に使われるのか、私は解った気がしました。


「あの…この魔石を作る理由は、もしかして…?」


「ああ、解ったか?この魔石がなんのために開発されてるか…」

アクロスくんとホウエイ先生は真剣な顔でこちらをみます。


おそらく、予想は合っているのだとおもいます。

15年前を知っている者なら、誰もが望んでいたものですから。

…でも、急ぐ理由がわかりません。


「『要石(かなめいし)』は、『魔力(まりょく)氾濫(はんらん)』に対処するために、開発している。急いでいる理由は…………」


言いにくそうに、アクロスくんは言葉をにごします。

彼をみた先生が、あとをついで教えてくださいました。


「急ぐ理由は、……次回の『魔力の氾濫』が、思うよりも近くに迫っているため、ですよ。

とは言っても、あと数年の猶予はありそうなんですがね?」


それをきいて唖然とする私とクロコに、ホウエイ先生は人差し指をたてて言いました。


これは…一番のひみつですよ?と。

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