ホウエイ先生の名案だそうです。
さて。
その日の学園の一部では冬将軍が一時到来したみたいですが。冬が来たあとはというと
「…………………はあ。やはり性分でないので叱るというのも疲れるものですねー?」
しゅん…としたアクロスを見て、
言いたいことが伝わったと判断したのか、ホウエイ先生の身にまとっていた冷たい空気は一気に霧散していきました。
振り返った先生は、もう始めに見た春のような柔らかい雰囲気です。
「おや?皆さん、なにをそんな格好で座っているんですー?」
皆さんには怒ってないですよー?
まだなんとなく正座していた四人にも、そう首をかしげて言う。
あたたかな春は再び巡ってきたようです。一人のところを除いては、ですけど。
「甘いものが無し…お菓子がみんなたべられない?
あのやっと手に入れてとっておいたケーキとかも…あれは保存魔法で1ヶ月もつか?…開発が終わるまでなぜ大事にとっておいたんだ僕は…………いや塩大福ならたべていいのか?塩と言うくらいだしな?はははは…ハァ。」
なんだかとても必死になって呟くかたがいらっしゃいます。
甘味禁止。アクロスさんにとってはそんなに大変なことなんですね。とミリアムは思った。
しかしそんな往生際の悪い生徒に対して今までも思うところがあったのだろう。
ゆっくりと、よく間延びした話し方をする柔らかい印象のため、学園の生徒達から甘すぎるくらい優しい人物と普段言われているホウエイは、
いつもなら苦笑で済ますところを、今回は教師として目をつぶらずに追及することに決めたらしい。
「アクロスく~ん、塩大福も甘いですからねー?
おやつ自体が、禁止対象ですよ。普通の食事を食べてください?
ただでさえいつも携帯食で済ますのですから君は…。こうなったら食生活もなおしましょう?」
と、クロコが思わず「オカン…?!」と吹き出す世話焼きな性分をだして、アクロスの様子をみて釘をさしつつ、どうしたものかとさらに考えながら、続けて言う。
「アクロスくん一人だと、お仕置きでもちゃんと果たすことが出来なさそうですねぇ?
う~ん……。とはいえ私も毎食ついて目を光らせるわけにもいかないですし。見張るとしたら、せめて1日1食ですかねー?」
とホウエイは、しょげているアクロス・先程まで広げていたお茶タイムの後片付けをしていたエンカ・ルイゼ・ミリアム・クロコに視線を巡らせながら、そういえばと自分の生徒達を見直し。
(そもそもウチのクラスはいつも朝位にしか皆さんにお会いする機会が無かったのも不味かったですかねぇ?アクロス君以外の他の子も、個性的で何かしら問題はあるんですよねー…。)
どうしましょうかね?などと生徒が聞いたら自分も充分に個性的だと言われることを知らずにホウエイは考えた。
それぞれが、朝の挨拶の時間以外は各自の行くべき場所へと個別行動をとるため、集団で馴染みにくく
なにかしら強すぎる個性や能力を持ちながらも個々が奔放すぎるのは、もはや別枠クラスの悪習ともなっていることは、、担任以外の学園関係者にも悩みの種になっていた。
それもありこの機会に改善をはかろうとしたのだ。
「ああ!良いことを思い付きましたよー!」
ポン。と手を合わせてホウエイは生徒達に笑いかける。
「皆さん!今日はもう無理ですけどー…、明日以降のウチのクラスは、お昼と午後のお茶の時間はなるべく特別な用事のあるとき以外、教室に集まってから皆で過ごすことにしましょー!」
そうすればみなさんお互いにもっと親睦を深められますし、人同士の会話やワタシへの相談・質問などもいつでもできますよー!と、得意気に提案した。
題して、『習うより慣れろ』作戦である。
「おーーう!!そぉーれは名案ですねっ先生!
お嬢様が皆さんと仲良くなるためにも、是非そうしましょう!そうしましょったらそうしましょう!?
なんなら皆様のお食事やお茶の用意などは、このクロコとお嬢様が用意いたしますよ!私はもちろんですが、ミリアムお嬢様は料理がとても!すばらしく!得意でありますですよっ♪」
クロコがすかさず先生の手をガシッと握り提案に食い付き、
「お三方も宜しいですよね?!時間にこられなければ私がお迎えにあがりますから!先程みたいな良いものをご用意しますよー?もちろん参加しますよねー?
ねっ先生?このミリアムお嬢様のメイド・クロコにその作戦実行要員役をおまかせくださいっ!」
是非に是非に!
キッラーーんっ♪♪と目を光らせながら
もはやノンストップなメイド。
その言葉の裏では内心
『ひやっほい!来たですよーう!?
これはお嬢様の女子力と魅力アピールして好感度や親密度アップできる大チャーーンス!
もしや運命の神の仕様かもしれないよね、もちろん逃さないですうぅぅ!!
お嬢様の幸せへの切符ゲットゲット♪♪』
と、もちろん企む安定のクロコがいるのである。
まぁそんなやや黒いクロコの心の声が周りにきこえるわけもないので、
エンカとルイゼは問題ないかなと答え、
アクロスは何でもいいと目の前の甘味問題に気を取られて自棄に答え、明日から連日のクラス交流の時間が設けられることに決まったのだった。
「有り難うございます、クロコさん。ではあなたに準備はお願いしても良いですか?
のちほど詳しく相談しましょう。
そしてミリアムさん?遅れてしまいましたが、教室に入ってから、お互いに自己紹介とご挨拶をしますよー?。
まぁ先ずは簡単にだけ。
あなた達の入るクラスの教師になります。ホウエイといいます。」
よろしくおねがいしますね?
と大変ご機嫌に微笑む担任についていきながら、
ミリアムはこれから何年かを過ごすであろう教室に、いよいよ向かうのだった。




