9:私もついていく
俺は閉店作業を終え、宿屋ミャンミャンに戻るとビタ押しさんも一緒にホールから戻ってきた。
「はぁ、もう少し時間があれば絶対光ってたわ」
「はいはい、ソウデスネー」
俺は閉店作業中、もうちょっと打たせてとビタ押しさんに詰め寄られていたのである。
「ちゃんと聞いてるの? それで、私は決めたわ」
「ん、何を?」
「貴方についていく事をよ! ホールに通えなくなるじゃない」
「いや、ホールは」
「どうせ私はもう通う場所もないわけだしね?」
彼女は本来、これからレンジャー学校『ツメロ』に通うはずだったのである。それを俺が無理やり連れてきたのだ、責任を取るというのは筋が通っていた。
「う、わかったよ。そういえば家は大丈夫なのか?」
「何を言ってるのよ、私は手ぶらよ手ぶら。ツメロの寮に住む予定だったから何も無いわ、ちなみに家はあの魔法ギルドがある国だから簡単には帰れないのよ」
俺は考える、この子を送ってもいいがあの国に行くと俺が今度は捕まってしまう可能性があるのである。それだけはどうしても回避せねばならい。
何故ならば毎日スロットと共にありたいからである!
「そうか、わかった。それじゃ俺は朝早いしもう寝るぞ」
そう言い放ち宿屋ミャンミャンのちょっと硬めのベットに寝転がる、と隣にビタ押しさんも隣に寝転がる。
「おやすみメーダ、明日が楽しみね」
俺は同じベットで寝るのかと突っ込みを入れたいところだったが、久々の人肌に気が緩まりそのまま眠りについた。
「起きろー!」
ゆさぶっても全く起きる気配をみせないビタ押しさん、困った。揺さぶっても起きないので俺は必殺技を使う事にする。
「リーチ目キター!」
「えっ、ほんと!?」
「……おはよう?」
「……おはようメーダ」
俺の言葉につられて跳ね起きるビタ押しさん、きっと頭の中ではCOCOランプが神々しく光る瞬間をみようと一気に覚醒したのだろう。
「ところで、この周辺には何か変わった場所ってないのかな?」
「ん、確かここから北の方角に真っ直ぐ進めば勇者様が滞在してたはずね」
「勇者様?」
「そうそう、魔王を討伐し続けている戦闘のエリートよ。何でも今は怪我の治療中とか」
「ふーん」
俺は魔王を討伐し続けている勇者がどんな人物なのか、少しだけ気になってしまう。何せ、俺の居た世界では勇者はカッコいいイメージなのである。子供のころに男の子なら誰もが憧れただろう。俺も勿論、例外にもれず勇者になりたいと声を張っていた頃があったのだ。
「会いに行こうか」
「えっ? かなり遠いわよ」
その問いに対して、俺はボードを見せる。すると納得したように頷き、俺達は宿屋ミャンミャンをチェックアウトし2時間程の移動で次の町へと移動したのだった。
「ここで勇者様は休養中なのか」
「ええ、私はそう聞いてるわ」
そうして、休養しているといわれる宿屋オタノシミに入った。
ビタ押しさんが旅の仲間に加わった!