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俺、異世界で旅スロします  作者: PP
第一章
8/34

8:ビタ押し

 スロ仲間が三人に増えてはや一週間。魔力も順調に増え、台を一台増設できる頃になってきていた。しかし、その一方散策はそう上手くいってなかった。


「むぅ、この方面も人は居ないか。スロ友増やすのは難しいな」


 一人、宿屋ニャンニャンで自問自答をする。ここの周辺は既に探索がほとんど終わった今、増えないスロ友人口に悩んでいるのである。スロットを毎日打ってワイワイ楽しめる、そんなフリーダムな人というのは実際に全然居ないのである。そういう点では、あの青年は毎日ホールに通っていて大丈夫なのかと少しだけ心配になってしまう。


「くそぅ、馬車で移動するには時間がかかるし困ったな」


 俺の移動速度は決して遅くは無い、しかしホールの大魔法を維持しつつ移動に魔力を割く事が難しくなっているのである。


 俺はエウレカヘブンの設定を3と5に打ち変え、ユアジャグを2・4・3と中間設定に変更して睡眠に入るのであった。




 翌朝、俺はいつも通りホールを展開し入場してくる魔王、青年、酒好きさんを迎え入れるが今日はいつもと少し違う事案が発生した。


「のうメーダ、魔メダルを補充したいのだが」


 魔王様はそういうと、貯けていた魔メダルの残枚数をみせつけてくる。残りは1200枚、まだまだ補充する必要がない十分な数が手元に残っているのに何故、と思いつつ俺は承諾する。


「はい、無機物なら何でも変換しますよ」

「では、これで頼む」


 俺は声にならない声を上げる、魔王が差し出してきたソレをみてだ。


「こ、これは……」

「フハハ、驚いたかメーダよ? これは俺が創り上げた空飛ぶ板だ、このエウレカヘブンをみて作ったのだ」


 自信満々にそういう魔王の声を受け入れ、俺はコレを変換せずに既に所持している魔メダルを1000枚程渡す。


「価値が測りかねるので、これくらいになりますが良いでしょうか……」

「うむ、1000枚もあれば持ちメダルとあわせて天井は狙えるからな、フハハハハ」


 最初から天井狙いで良いのかよ、と心の中で突っ込みを入れながら俺は感謝する。


「ちょっと試してきて良いですか?」

「うむ、メーダの感想次第では量産も考えておこう」


 そんなやり取りを終え、俺はホールで打ち始めた三人を置いて外へと出る。出た先は町のはずれにある魔王領の平地である。そこで俺はボードを地面に置き、それに乗る。


「うおっ、すげぇ」


 足は引力魔法の作用か吸いつけられ、そして大地からフワリと浮上する。ボードの下側からはエウレカヘブンの再現なのか、淡い緑色の光が噴き出ている。


「これ、光魔法の応用か。おわ、何つぅ……」


 少し魔力を与えるだけで、このボードは浮き上がりそして驚異的な加速をみせる。ほんの少ししか魔力を消費していないのに、既に都市の入り口付近まで移動をしていたのである。


「これなら、行ける!」


 俺は構わず、そのまま宿屋ニャンニャンに戻りチェックアウトをすませる。向かうは次の町、ウエート国にあるレンジャー育成学校である。俺は前から悩んでいたのだ、時間に縛られず自由な人はどこにいるだろうか。


「そうだ、学生でかつレンジャー志望ならきっと有望なスロッターがいるはずだ」


 俺は顔がニヤケるのも構わず、宿屋を出たら即ボードへ乗り出発する。



 僅か五時間でウエート国に到着し、俺はレンジャー育成学校『ツメロ』へと足を運んだ。


「お前、入学志望者か?」

「あ、いえ俺はただその」

「よーし、丁度試験が始まるからそこで待ってろ」


 俺の言葉も聞かず、受付の男性は椅子から立ち上がる。と、途端に学校の入り口に数十人の入学希望者と思われる人が集まる。


「では貴様等、これから入学試験を行う」


 成り行きで試験を受ける事になったが、無料みたいなので大人しく聞いてみる事とする。


「適正の一つでもあれば、入学を認めよう。適正診断はこの門の先に待ち構える10の扉の内、好きな扉へ入りその部屋を突破する事にある。以上だ、健闘を祈る」


 うおお、と声をあげ走っていく一七名の志願者達。俺も中に入れるなら良いか、という気で扉の前まで近づく。


「何だこりゃ」


 扉の前には看板で地獄の部屋、や瞳の部屋、等書いてる場所が五か所。何も情報がないが、扉の前で既に危ない魔力が放たれている部屋が四か所。そして何の魔力も感じない静かな部屋が一か所ある。


 扉の前で悩んでいる志願者をよそに、俺は看板が無く魔力の感じない部屋へと入る事にする。


 ギィ、と音を立て部屋へ入ると中には何もなく、先に続く扉が一つみえるだけである。何の仕掛けも無いようなので、とりあえず真っ直ぐ進み扉をあけるとあっけなく合格おめでとう、と声をかけられる。


「あの、これは一体……?」

「驚いたかい? この部屋は運も必要だが危険察知能力が高い者が選ぶ部屋だね。君は素質十分にあるよ、改めておめでとう」

「あっ、はい」


 あっけなく合格してしまった、と瞳の部屋を突破してきた志願者が二番手にやって来る。


「ふぅ、あれ私が一番のりじゃなかったの。残念」


 と、俺に向かって手を差し出してくる。


「ん?」

「何よ、私は貴方と話してるつもりよ一番乗り君」


 突っかかるような言い草だが、ここで先ほどの言葉も俺に向けて話していたのだと気づく。


「あ、ああ。悪かった、それにしても瞳の部屋は何があったんだい?」

「ん、視れば良いだけの部屋よ。入る前から書いてあったしね、視えればいけると」


 ペラペラと部屋の仕組みを説明する、超高速で移動する玉が通らない軌道をよみ、そこを突破すれば良いだけの部屋だという事を。


「そっか、君は目が良いんだね」


 無駄に大きな胸を主張しながら胸を張る目の前の子が、もっと褒めてと言い張る。金髪のドリルツインテとか、異世界にもこんな子がいるんだなぁという感想が正直なところだったが口には出さなった。


「ん、動体視力が良いって事は……」


 俺はそこで少し悩み、一つ質問をする事にする。


「失礼、君は何故レンジャーになろうと?」

「ん、レンジャーって日々スリルの連続じゃない。私は冒険者とパーティを組んで、罠を解除したりお宝探したり、そして日々充実した生活をおくるのよ!」

「えいっ」


 一応、質問をしてみたがメンドクサクなり俺は解析転写でユアジャグの知識をあたえる。


「えっ、何この数値の量……それにコレは」


 ブルリと体を震わせ、俺の肩をガシリと掴み迫り寄って来る。


「貴方、これは何処で打てるのかしら? 良ければ私にも教えて下さらないかしら?」

「ん、でも来たら戻れなくなるかもしれないぜ?」

「上等よ、もう打てなきゃどうにかなっちゃいそうよ!」

「はは、良いね! それでこそスロッターだ!」


 俺は彼女の手を取り、ボードに乗せ途中でチェックインした宿屋ミャンミャンへと移動する。ここに展開しているホール支店へと一気に連れ去ったのだ。


「あ、きみぃ……」


 とはおめでとうと言ってくれた試験管らしき人物の声、なのだが最後まで聞く事は無く俺達はあっという間にホール入口まで到着する。


「これが、これがホールなのですね!」

「ああ、あの奥の三台がユアジャグだよ」


 俺が案内すると、魔メダルを300枚プレゼントする。


「おっ、新顔やな。お嬢ちゃん宜しくな、この台は今日はあかん、座るならこっちやで」

「ええ、そうね」


 見事に設定2の台を回避する、ホールデビューにして既に台選びが出来るというのか。


「ふふ、何を驚いているの貴方は? 私はこれでもレンジャーになろうと思っていたのよ」


 そうか、と納得しつつ俺はごゆっくりと言い少し休憩する事にする。



「アンタ、酒は飲めるんか?」

「あら、私はまだ未成年ですので。それにしてもあそこにいる二人は一体」

「やめとき、あんな滅茶苦茶な存在の詮索なんかしないほうが身のためやで。人の事いえんけどな」

「ふふ、でも皆『今は』危険がないって私の直感が言ってます。直感力もレンジャーには必要ですから」

「アハハ、若いっていいわねぇ。お、光ったわ」


 と酒好きさんとレンジャー見習いが楽しそうに交流しつつ、ユアジャグを回し始める。


「えいっ、えいっ、えいっ」


 声に出して打つタイプなのか、毎回ビタ押しをするレンジャー見習い。レンジャー見習いってのは長いな、ビタ押しさんにしとくか。魔力量が普通の人並みしかないビタ押しさんなので、リール速度は平均値。他の超高速回転する三人と比べると見劣りはしてしまうが、リールが回転しきる一周期0.75秒の世界で正確に0.038秒をとらえストップさせている動体視力と反射神経は驚愕に値する。


「あれを毎ゲームするのか、あの台を導入してもいいのかもしれないな」


 俺は一つの新台候補をイメージしつつ、酒好きさん、ビタ押しさん、魔王様、青年の四人が打つ中、設定2のユアジャグに座りそっと数値データ収集の名目でスロットに参戦するのであった。


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