5:打つ時は素面でお願いします
俺は閉店作業を終え、早速撤去・新台設置をささっと終わらせてしまう。
「魔力も大分消耗したなぁ」
一人になったホールで、俺は一人愚痴る。そして大魔法ホールの展開を終了し、俺は大都市から離れたこの場所に戻って来る。
目指すは大都市の中にある宿屋。俺は魔メダルをお金に変換し、最近は宿屋ニャンニャンに宿泊しているのである。しかし魔力も魔メダルも最近減りつつあるのだ。高設定を入れすぎたか、と思うものの新台入れ替えには無事こぎつけたのである。
しかし俺の目標はあくまで旅スロなのである。色んな場所を回り、色んな人と共にスロットを打つ、更に語る。そんな人生を送るのだ。
俺は宿屋でホールを展開すると、改めて呼び出せる3台を確認する。新台のエウレカヘブンを解放したまではいいが、今の魔力量では新しい台を呼び覚ますことが出来ないのだ。
と、いう訳で翌朝四時。俺は魔王様と青年の魔力の御裾わけもあり、超高速移動にて大都市を抜け移動をしている。現在は森を抜け、山岳地帯に辿り着いたところである。
ここまで来るのに一時間もかかってしまった。と、そうこうしてたら湯気が登る場所を発見する。朝風呂もいいな、と山岳のある一点に露店風呂があると思われる場所へと駆けこむ。
「あー、お邪魔しました」
俺はわざわざ声を出して回れ右をする、露店風呂をみつけたが先客がいたのだ。が、俺の腕を掴まれその人物は話しかけて来る。
「こんな場所に人が来るなんてねー、長生きするもんだわー」
ぐいっと腕を引っ張られ、俺は温泉の中に無理やり引きずりこまれる。
「あぢぃ」
思わず唸る、と目の前には一糸纏わぬ女体がたわわな実を二つほど実らせて仁王立ちしていた。
「えーと、お邪魔します」
掴まれたままの腕は、明らかに異常な握力で振りほどけそうにもないので、ある一点を凝視したまま俺は風呂に素直に浸かる事にする。
「小僧、こんな朝っぱらからこんな場所に来るとは何用か?」
「いえ、ただ温泉がありそうだなーって思って来ただけでして」
「そうかそうか、温泉好きか。これは良い、よし酒を飲もう!」
湯の底でキラキラと輝きを放っている大量の酒瓶から一本を取り出し、俺に勧めて来る女性。しかしこれだけは守らねばならないのだ。
「だ、ダメですよ! 呑んだら今日打てないじゃないですかっっ」
そうなのである、飲酒をしたらホールではスロットは打てないのだ。1日打ち切ってから飲むのが正義なのだ。
「ふむ、討てない? 何か討つ者でもいるのか?」
「あーそれたぶん意味違います、えっと……えいっ」
俺は迷わず解析転写でユアジャグの知識を付与する。途端に、酔いから醒めたのか俺の肩をガッシリと掴んで懇願を始める。
「の、のう。これはもうすぐ打てるのだよな? まさか飲んでたらダメなの、か?」
涙目であまりにも打ちたいオーラを出すので、仕方ないと今日だけアルコール入ってても特別という事で試打を許可したのであった。
「そうじゃな、今後は夜のみにしよう。そうだ小僧、名は何という?」
「メーダと呼んでください」
「そうか。しかし何処で打てるのだユアジャグは?」
女性の質問に答える為に、ホールの大魔法を展開してみせる。
「ここに支店を設置しました。朝9時45分に抽選が開始され、9時55分に抽選で得た紙に番号がでますので、呼ばれたらこのホールへ入場できます」
「ほう、面白いな。そうだ、礼にこの千寿の酒をやろう」
「ありがとうございます」
千寿の酒をくれた女性、もう酒好きさんでいいや。酒好きさんは嬉々として湯の中でユアジャグの出目を想像して、これから打てるだろうという期待にニヤケ顔が止まらないのであった。
「服、着てきてくださいね」
俺はこっそりとチラ見でガン見しつつ酒好きさんにお願いしておくのだった。